ども、汲み取れるようになりたい岡田達也です。

 

 

 

 

 

今、叔母(多鶴子さん)の家に居候している。

 

 * *

 

一昨日

稽古を終え、最寄りの駅まで帰ってきたら雨が降っていた。

 

ありゃりゃ

稽古場を出たときは全く降っていなかったのに

電車で45分ほど移動したらこれだよ

しかもけっこう強めに降ってるぞ

 

叔母の家まで駅から徒歩で15分以上あるしな……

 

僕は駅前のコンビニに飛び込み、ビニール傘を買った。

 

 *

 

「ただいま」

 

「達也! 降られたかえ?」

 

「うん、まぁ」

 

「タオル用意してあるで。拭きんさい」

 

「いや、でも、ビニール傘買ったから大丈夫」

 

「い~や、あんたが気づかない部分が濡れとるかもしれん! 拭きんさい!」

 

「(……気づかない部分ってどこだよ?)」

 

「ほらな、私の言ったとおりだったろ!」

 

「?」

 

「私が「夜は雨だ」って言っただろ!」

 

「おいおいおいおい」

 

「なに?」

 

「ちがうちがうちがうちがう」

 

「なにが?」

 

「私じゃないでしょ! 朝、ニュースで気象予報士さんが「夜になって降り出すかも」って言ってたんだよね?」

 

「い~や、声に出さんかったかもしれんけど、心の中では言っとった!」

 

「なんて?」

 

「「今夜は雨よ。折り畳み傘を持っていきなさい」って」

 

「……」

 

「なによ?」

 

「……それを読み取れっていうのか? 俺、エスパーじゃないし」

 

「達也、私はこの家の気象予報士だで。私の言うことを信じてれば大丈夫」

 

「だから、信じるならおばちゃんじゃなくて、気象予報士を信じるし。それに、「私の言うことを信じろ」と言うならせめて口に出してくれよ」

 

「以心伝心って言葉を知ってるか?」

 

「知ってるよ! 知ってるけどーー」

 

「あんたと私はよく似てる」

 

「それは認める! でもな、いくら似てるからって声に出してない「折り畳み傘を持っていけ」を読み取るのは不可能だ!」

 

「何日か前に言ったが!」

 

「なにを?」

 

「「私の折り畳み傘はお守りになるから毎日持ってなさい」って!」

 

「……は?」

 

「「私の傘を持ってると、不思議と曇りの日でも降らないわよ」って!」

 

「……おばちゃん」

 

「なに?」

 

「……一言も言ってないよ」

 

「あれ? そうだったかいな?」

 

「うん」

 

「達也」

 

「ん?」

 

「あんたはもう少し人の気持ちを汲み取れる人間にならないけんわ」

 

「……」

 

 *

 

あと3日でこの生活も終わります。

 

 

 

 

 

では、また。