ども、一山越えた岡田達也です。
確定申告を済ませた。
*
普通にお勤めの方にはピンとこないだろうけど、舞台俳優なんてバリバリの個人事業主だから、当然、確定申告の必要があるし、すべてを自分で行うしかない。
もちろん、お金が有り余っていれば税理士さんを雇えばいいのだが、僕が大ブレークしてお金が有り余るのは20年後の予定なので、今のところ自分の手でやっている。
これがおそろしく面倒な作業で
しかも大きな声では言えないが……
提出しているものが正しいのかどうか未だに自信がない。
いやいや
けっして脱税しているわけではないぞ!
簡単に言うと。
確定申告というのは
1年間の所得を計算して
そこから必要経費を差っ引いて収入を割り出し
納税額を確定し
あらかじめ源泉徴収という形で払っている税金を
(つまり税金の前払いですね)
収めすぎてる場合は還付金という形で返してもらう
……ってこと。
そ~ら、もう、私たちのような舞台俳優の腕の見せ所である。
この還付金を“どこまで取り戻せるか?”が我々の暮らしを左右すると言っても過言ではない。
たぶん、今、この日記を読んでくれているご同業が大きく頷いているはずだ。
だから、我々はキチッと領収書を1年分、取っておく。
ただし。
ここで大きな問題が浮上してくる。
“どこまでが必要経費なの?”ということ。
これだ。
これが大問題なのだ。
“俳優にとっての必要経費ってなんだ?”
とにかく明確な線引がしにくいのが実情だ。
例えば。
芝居を観に行く。
「それは自分の趣味で観るのか?」
それとも
「自分の演技の参考のために観るのか?」
ほらね?
何が言いたいかわかるでしょ?
解釈の仕方で、必要経費になったりならなかったりするのだ。
例えば。
とある先輩に言われたことがある。
「俳優なんて生きていること自体が商売みたいなもんだから、俺は家賃も全額必要経費にしている」
ある先輩は言う。
「家賃は3割までは必要経費として計上できるそうだ」
ある先輩はこう言った。
「家賃は5割まで計上できるぞ」
もう、みんな言ってることがバラッバラだ。
誰を信じれば良いのか、何を信じれば良いのかわからない。
15年ほど前。
僕は悩んでいた。
「はて?自分の提出している書類は正しいのか?」
「いつの日か脱税の疑いがかけられるのではないのか?」
(冷静に考えれば、脱税するほどの収入がないんだからそんなに悩む必要は無いのだが……)
ここは先手必勝。
そう考えた僕は税務署の窓口に行って正直に尋ねた。
「私、舞台俳優なんですけど。どこまでが必要経費なのかの線引がよくわからなくて。教えていただけますか?」
お姉さんはちょっぴり困った顔をした。
そりゃそうだろう。
舞台俳優が何者かもわからないだろうし。
そんな輩の必要経費なんて、お姉さんにもわかるわけがない。
同業者のみなさん
これは実話だ。
僕が実際に、税務署の人に言われた言葉なので参考にしていただきたい。
お姉さんは数秒困った顔をしたあと、こう言った。
「あなたが「これがないと芝居ができない」と思われるものは、すべて必要経費です」
そのあまりにグレーな回答に僕はしばらく言葉を失った。
が、せっかくここまで来たのだし、いくつかの具体的な質問をぶつけてみた。
しかし……
「あなたが「これがないと芝居ができない」と思われるものは、すべて必要経費です」
お姉さんは同じ言葉を繰り返すだけだった。
それまで以上に、僕の中での線引は曖昧なものになってしまった。
もう正解のラインがどこにも見えない。
*
確定申告は僕にとって重労働だ。
毎年毎年、頭も、心も、とっても疲れる。
まだ確定申告を済ませていない同業者のみなさん、がんばってください。
(……ひょっとして、混乱を招いただけじゃないか?)
では、また。