このたびご紹介したいのは、山岸厚夫さんの漆器のお重箱です。

 

こちらのお重箱、どこで出会ったと思いますか?

実はアメリカのコネチカット州にあった日本人が個人経営していた選び抜かれたものしか置いていない和食器やさんで売っていたのです。そこで買いました。

コネチカット州というと、ニューヨーク州の隣の州です。

もちろん、一般的な家庭もたくさん住んでいますが、ニューヨークが近いこともあり、ブッシュ大統領や、ヒラリークリントンさんのおうちがあるなど、なかなかの富裕層も住んでいる州と言えます。

高級住宅地域には豪邸がたくさんあります。

そういう地域では、メイドさんや乳母がいるのが当たり前なのです。

 

アメリカというと、大きなショッピングモールを連想しますが・・・。

しかし、アメリカには、ちょっとおしゃれな街には、日本でいう旧軽井沢のように、小さな店がたくさん軒を連ねている高級商店街もあるんです。

そういう高級商店街には駐車場に高級車がとまり、緑豊富な田舎風な風景にもかかわらずティファニーやバカラのお店があってもおかしくない。

車の販売店だって、ロールスロイスの販売店がさりげなくあったりする。

私なんか「なにこれ!やけにロールスロイスのまねしちゃって!」なんてはやしていたら、本当に本物のロールスロイスのお店だったのです!無知とは怖いものですね・・・💦

ウイリアムソノマという、キッチン用品好きには人気な、高級キッチン用品やさんなどもあったりします。そこへ行きたいがために場違いな私もちょこちょこと出かけていました。

 

さて、まるでアントワネットのプチトリアノンのような田園風景の一等地の高級な商店街に、日本人店主の和食器やさんが、おしゃれに存在していました。

それだけ、日本の文化が格式高い存在として認められているということでしょう。

ちなみに、その地域はあまり日本人が住んでいない地域でしたから、どちらかというとアメリカ人を相手にしたお店として存在していたのです。

 

話はお重にもどして、蓋をあけてみましょう。

上の段と下の段があるのです。

 

こちらのお重はそのお店で買いました。

 

そのころ、娘が誕生して、娘の誕生記念の品をさがしていた私は「これで将来娘の運動会のお弁当を作る!」と考えて、こちらを購入したのです。

 

ちなみに、それよりずっと前に生まれた息子の誕生記念品には、オルゴール時計を買いました。オルゴールといっても録音された機械音ですが、それは今でも、時間になるとオルゴールの音がして時をしらせてくれています。

 

なぜアメリカに日本人の経営する和食器やさんがあったのでしょうか?

日本料理屋はあるにはありますが、さすがにここまでの高級な器を使っているお店は少ないです。

そのお店では磁器も多少はありましたけど、主に陶器、漆器、和布が販売されていました。

アメリカでは磁器はありますが、陶器は少ないですし、漆器、和布はなかなか見かけません。

お店のあった場所はアメリカのお金持ちの住む地域で、緑にかこまれた大豪邸が並ぶ地区で、こういったものは、むこうの人からしたら日本的な魅力を感じるインテリアのひとつとして珍重され、お値段が高くても欲しい方がいらしたのかもしれません。

残念ながら、そのお店はもう無くなってしまいましたが・・・。

 

さて、お重に話をもどしましょう。

こちらのお重は山岸厚夫さんの作品です。

山岸厚夫さんのうるしは、指紋のあとなどが残るようなタイプではなく、扱いが楽です。

以前、合鹿椀でご紹介したことがある作家さんです。(私の合鹿椀は山岸厚夫さんの工房の作品です。)ちなみに、この合鹿椀も我が家にある2つはアメリカのこのお店で買い、その後、日本でもオンラインで買い足しました。

 

では、お重をみてみましょう。

 

かなり大きめの2段重です。およそ27センチ角です。高さは13センチくらい。

おせち料理には大きすぎる大きさかもしれません。

それにおせちには少なくとも3段は必要かもしれません。

でも、このお重で、息子の運動会、娘の運動会には、たんまりと4人分のお弁当を作って風呂敷で包んで持っていったものです。

4人分のおにぎり、から揚げやエビフライ、天むすに、たこさんウインナー・・・。作っても作っても余裕があって、他にも、もっといろいろと作って、盛りつけたものです。

 

失礼して裏返してみましょう。

↑いちばん下の重の底の中央には山と書いてあるのが見えますでしょうか?

アップにすると、こんなかんじ。山岸厚夫さんの山だと思います。

 

そして、もう1段上の段の底は平らだとうまく安定しませんので、まわりに溝があります。

 

一度、引っ越しのときに、引っ越し業者の方に、ルクルーゼと同じ段ボール箱に入れられてしまったことがあります。

そのときは、さすがに蓋の一部がへこんでしまったのです。

引っ越し会社に相談したところ、「修理してもらってください。」とのこと。

山岸厚夫さんのお店に問い合わせしたところ、修理を快く応じて下さり、なんと、どこがキズだったのか全くわからないほどになって戻ってきました。

漆器を持って何かあっても修理できるというのは心強いことです。

 

子供たちの運動会に、もう親が行かない歳になってしまい、このお重は運動会に行けなくなってしまったのですが、栗おこわやお赤飯。ひな祭りのちらし寿司のときに、今でも活躍しています。

お食い初めのとき、まぐろのにぎり寿司ばかりをつくって、この中にたくさん入れたこともあったっけ。蓋をすれば乾かないので、便利でした。

娘が生まれたときに買ってから、何回晴れの舞台をふんだことでしょう。

もとは取れたと思うほど、家族の思い出によりそってくれたお重です。

 

このお重と同じものはパソコンでは見つからなかったのですが、もう少し小さいサイズのお重を扱っているお店を見つけましたので、こちらにのせますね。

 

 

山岸厚夫さんとその作品の特徴についての説明はこちら・・・。

 

 

越前漆塗り専門店 錦壽  (山岸厚夫さんの工房のオンラインショップです。)