国会議員の収入が高いことの批判についての国会議員の反論は、今も昔も変わらず 「選挙に金が掛かる」の一言に尽きます。
ではどれ位かかるのか調べてみました。
が・・・・・・ これが思った以上に厄介で、ネット上には様々な情報が提供されていますが表現が一定でなく、どの項目にどれ位の費用が掛かるのかを金額で示すには無理があるように思えます。
選挙区の大きさによっても、また候補者によってもその金額が大きく異なっているからです(当然ですね)。
なのでネットで見つけた複数の国会議員の 「選挙運動に関する収支報告書」の中から、東京オリンピックの聖火リレーで 「島根県知事に注意する」 と言って世論の批判を受けた、竹下亘衆議院議員の収支報告書(平成29年度島根県小選挙区)を下記に参考としてアップします.。
人件費 111万円
(事務作業、選挙カーの運転、ポスター貼りなど)
選挙事務所費 38万円
集合会場費 0円
通信費 22万円
交通費 0円
印刷費(選挙はがき、ポスターなど) 121万円
広告費 124万円
文具費 10万円
食糧費(お弁当、お茶、お菓子など) 15万円
休泊費(宿泊費) 42万円
雑費 90万円
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総計 576万円(千円以下切捨て)
上記金額に下記の供託金を足したものが選挙費用となります。
供託金
(立候補するために一時的に預けるお金ですが、得票数が足りないと没収されます)
衆議院小選挙区、参議院選挙区 300万円
衆議院比例代表、参議院比例代表 600万円
竹下氏の500万円台は衆議院小選挙区としては平均的な金額のように思えます。
上は1000万円以上もあります。
選挙費用が高いのは参議院比例代表で、2000万円以上、3000万円以上も見受けられます。
国会議員の皆さんは口をそろえて選挙に金が掛かり、歳費や手当などでは到底やっていけないと言っている割には「意外と少ない」 という印象ですね。
それには 「法定選挙費用」が大いに関係しているとのことです。
法定選挙費用
(選挙で使えるお金の上限が定められていて、それを超えると当選したとしても無効になってしまいます)
この法定選挙費用は衆議院小選挙区の場合、有権者一人当たり15円に、総有権者数を掛けて、それに1910万円を足して算出します。
2019年度のNHK調査によると、衆議院小選挙区で有権者数が最も多いのは 「神奈川15区」の55万5625人で、最も少ないのが 「鳥取1区」の27万9143人です。
したがって、
衆議院小選挙区で最小の「鳥取1区」の法定選挙費用は、 2328万円
最多の「神奈川15区」の法定選挙費用は、 2743万円
また、
参議院選挙区で最小の「福井選挙区」の法定費用は、 2858万円
最多の「宮城選挙区」の法定費用は、 3833万円
参議院比例代表 (全選挙区一律) の法定費用は、 5200万円
となり、衆参の選挙区ごとに使える選挙費用の上限が違っているので、候補者はこの範囲内で選挙運動をすることになります。
それにしても先程の竹下亘衆議院議員の使ったお金 (576万円)は少ないですね。
(因みに、この年の島根県2区の法定選挙費用は、 2364万円でした)
実際は、国会議員の皆さんが言うほどには「選挙にお金は掛からず」 国民の批判をかわす口実に使っているのでしょうか?
・・・この話は後で考えるとして・・・ 先に進めます。
ここまでは候補者自身の懐から賄われるお金ですが(あれっ??候補者自身のお金??
これも他人のお金か・・)、選挙活動には公費負担の制度もあります。
公費負担の項目と使用限度額
選挙運動用自動車の使用費
①ハイヤー 774000円
②自動車の借り入れ(レンタカー) 189600円
燃料費 90720円
運転手の雇用 150000円
選挙運動費用通常はがきの作成費 269850円
選挙運動用ビラの作成費 476000円
選挙運動用ポスターの作成費 1147584円
選挙事務所の立て札及び看板の作成費 164742円
選挙運動用自動車等に取り付ける立て札及び看板の作成費 207968円
個人演説会場の立て札及び看板の作成費 198625円
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計 (①ハイヤーの場合) 323万8769円
計 (②レンタカーの場合) 289万5089円
お疲れのところ再度ご登場で誠に恐縮ながら、先ほどの竹下亘氏の選挙運動の収支報告書に併記されている 「公費負担」相当額を見てみると以下の様になります。
選挙運動用通常葉書の作成 17万1500円
ビラの作成 27万3000円
ポスターの作成 75万6000円
選挙事務所の立札及び看板の類の作成 16万4742円
選挙運動用自動車等の立札及び看板の類の作成 4万8600円
個人演説会の立札及び看板の類の作成 14万0400円
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計 155万4242円
こちらには 「選挙運動用自動車の使用費」の項目が見当たりませんが、総務省や他の都道府県が公開している全ての候補者の収支報告書も全く同じフォームになっていています。
(理由は分かりません)
「選挙運動用自動車の使用費」を除いた公費負担の限度額は 246万4769円 となりますので、100万円ほど税金を使い切っておられないのは、褒めたものなのでしょうか??
随分と数字が並び長くなってしまいましたが、以上が衆議院小選挙区で使われた選挙費用の一つの実例(竹下亘氏)です。
冒頭のほうでも触れましたが、国会議員の皆さんが選挙管理委員会に提出されている 「選挙運動に関する収支報告書」に記されている衆議院小選挙区における選挙費用の中心は、 500万円~1000万円辺りかと思われます。
参議院比例代表のそれは、 1000万円~2000万円・3000万円辺りかと思われます。
この数字を見ると衆議院小選挙区に関しては「選挙に金が掛かって」、歳費等と、もろもろの手当てで、かすめ得た4000万円を超える収入に、さらに政党交付金を乗っけても、やっていけないとするのは詭弁であると判明しました。
参議院の比例代表については、衆議院小選挙区の2倍以上の選挙費用が掛かっているように思えますが、こちらもやっていけないという程の数字ではありません。
よって何れにおいても 「選挙に金が掛かって、4・5千万円~7・8千万円ではやっていけないとする国会議員の言い分は却下します。
ただし現職でない新人が国政選挙に立候補するには、政党からの資金援助がない限り
「やっていられない」となるでしょうね。