「柱の傷はおととしの、五月五日の背比べ‥‥」
そんな歌を知っている人も、だいぶ少なくなったんでしょうね。
この歌の通り、僕の子供の頃、僕の背丈を記した傷が兄や姉と一緒に
家の柱に毎年3本ずつ増えていったものです。
そしてその傷は、今も京都の実家に残っています。
50年近く経った今も、です。
僕の中に在る「家」という存在は昔から、
そんな風に、家族が育んできた時間をそのまま、
色あせることなく残していってくれる大切な場所なんです。
だけど今、そんな「家」がどれくらいあるんでしょう。
僕らは、そんな存在でい続けられるような「家」を創り出せているだろうか?
何より、そんな「柱」が見えている家を、近頃創っていない気がします。
なんだか寂しいよなあ…と思っていたところで、
この家に出会い、販売から改修と携わらせて頂きました。
青葉区荏田北にある築35年の和風の家。
駐車場はなく、まっすぐな階段を上がっていった先にある家。
真壁の和室が間続きで繋がる、昔ながらの家を、
その柱を、その長押を、その床柱を残したまま、今風にアレンジしました。
この日は、2ヶ月続いた改修工事が終わり、自分好みに生まれ変わった家のお引渡し。
1歳半になるお子さんは、その全てが興味津々。
引戸も、雪見障子も、床の間も。
この子には全てが「楽しい何か」なんです。
夜になると欄間を通して暖かい灯りが幻想的なシルエットを見せてくれたり
ご主人が選んだランプが書斎をお気に入りの書斎を照らしてくれたり
大好きなお酒を並べて置けるニッチを壁に付けたり…
玄関から続く廊下でさえも、ほんわかとした落ち着きを感じさせてくれます。
今はカウンターキッチンが主流の台所は昔「お勝手」と呼ばれていました。
昔のキッチン(御勝手)は、そう、こんなにも明るかったんです。
ちなみに、今も使う「勝手口」という場所は、この「お勝手(台所)」にあるから
そう呼ばれているんですよ。
この風景、そのままです。
こんな風に、昔のよさはそのままにして、今の暮らしのカタチとコラボレーションさせてみました。
この子が大きくなって、この場所を巣立ってくその日まで
毎年、一本ずつ増えていく柱の傷を、いつの日か懐かしく触れるその日まで
この家が、この家族の時間を育んでいってくれたらいいなあ…と思いながら
お引渡しさせて頂きました。
この家に続く長い階段も、夜になると美しいアプローチになります。
一日働いた後に帰って来るその場所は、
やっぱり居心地のいい、あったかい場所であってほしい。
この家は、そんな場所になってくれたと思います。
by Santa
この現場の改修工事風景を最初っからお引渡し迄見たい方はこちら☟
https://www.oishii-ouchi.com/reports/index/77
時系列で現場レポートになっています。
「居心地のいい家に暮らしていますか?」
そんな問いかけをさせて頂きながら本を書いてみました☟
ご興味あれば、手に取ってみて下さい。