台湾パインの対日輸出、中国の輸入禁止で8倍超
農家「日本に感謝」
中国から2021年に輸入禁止の措置を受けた台湾産パイナップルの日本向け輸出量が、この2年間で8倍以上に急増したことがわかった。
台湾の貿易業者らは、蔡英文(ツァイインウェン)政権による輸送費への補助により、日本市場での価格競争力が得られた結果と分析している。
台湾側の統計によると、禁輸前の20年に台湾産パイン中国向け輸出は約4万2千トン、日本向けは約2千トンだった。
中国による禁輸を受けた後、21年には中国向けが約4千トンに急減する一方、日本向けは約1万8千トンに急増。22年も中国向けが約400トン、日本向けは約1万7500トンで最大の輸出先になったという。
「日本には、とても感謝している」
台湾南部・高雄市でパイン農家の協同組合を率いる張清泉さん(38)は真剣な表情だ。
対日貿易に関わる台湾の貿易会社は取材に、「台湾産パインを日本に輸出できたのは、補助金でフィリピン産と価格面で勝負できたためだ。貿易はシビアで、輸入側がいつも台湾への温情から買ってくれるわけではない」と話す。
中国は21年以降、台湾産の果物レンブや養殖魚ハタ、コーリャン酒など2千品目超の食品などについて、害虫や新型コロナウイルスの検出などを理由に禁輸とした。台湾では、中国と距離を置く蔡政権への不満から、中国側が政権支持層を揺さぶる狙いだと受け止められている。
一方、中国は今年1月、福建省沖にある台湾の金門県(金門島)から国民党の県長らが訪中したのを受け、即座に同県の主要産業で、公営企業がつくる蒸留酒・コーリャン酒(白酒)について禁輸を解除した。
国民党は台湾の最大野党で、中国との融和を重視する。
中国が近年、輸入を禁じてきた台湾産品は、自国でも生産する農水産品や加工食品が中心だ。
代替調達先の確保が難しい台湾の半導体などは含まれていない。