大分に行ってきました。〜その7〜 | 大沼優記の"ぬまぶくろぐ"

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大沼優記のブログ。沼袋に関する情報を発信する地域密着型ブログ、ではありませんのであしからず。

昨日に引き続き、この記事の登場人物〜Twitterアカウントのリンクを添えて〜(コース料理風に言ってます)


昨日の流れを経て、お芝居が始まる前の段階で疲労困憊になり果て思考が現実逃避に走った頃、舞台上には既にゴブさんが出ていた。

お芝居の始まりは、ゴブさんがセンターに立ち、両サイドに信親隊と十河隊が座って三角形のフォーメーションとなる。

(しまった、もう始まっとるやないかい…!)

慌てて舞台上に出ると、クライマックスの始まりから鳴り響いていたBGMはフェードアウトして、無音の中でお芝居が始まる……筈だった。

筈だったのだが、顔を上げてみるとふなっちさんが、いなかった。

………。

ただただ流れる静寂。

(ふなっちさん…!いずこへ…!?)

と不安になり始めた頃、信親ではなくふなっちさんの声が、スピーカーに乗って会場に響いた。

「い、行きます!行きますっ!」

登場口が他の方々で塞がれて舞台に出られなかったふなっちさんが声を出したのだ。

(ふなっちさん、マイク!マイクぅぅ!!マイクのスイッチ入っとりますぅっ…!!)

無音の中に響き渡る坂上二郎ばりのシュールな一声と同時に、信親隊が姿を現した。

(何はともあれ、あとは稽古通りにやれば…)

顔を上げると、僕だけが異様に遠くに座っていた。

稽古中にこんなことがあったのだ。

「舞台が何十メートルもあって広いから、ここ(稽古場)では狭いけど、本番は広く場所を使おう。」

この、"広く"の感覚のズレが、大き過ぎた。

僕とゴブさんの間だけで10メートル近く離れている。

(え…どうしよ…この場所で一度座っちゃったけど、どうしよ…隊の方には「座ったらそのまましばらく座っていてください」って伝えてあるし…どうしよ…もう一度移動したら、隊の方々はついてきてくれるかな…)

チラリと後ろを振り返る。

十河隊の方と目が合った。

(あの…遠いですよね…どうしましょう…)

喋ったらマイクに声が乗ってしまうので、目力だけで何とか伝えようとする。

十河隊の方は、キョトンとしていた。

(やむを得ぬ…!この微妙なフォーメーションで続けるしかあるまい…!)

覚悟を決めてセリフを喋ろうと立ち上がると、何かがふくらはぎの辺りをペチペチしていた。

暫くお芝居を続けるものの、何かがずっとペチペチしている。

ふと見てみると、マイクの本体が甲冑から落ちて足元にぶら下がった。

(マイク!マイクぅぅ!!)

セリフを喋りながらマイクをまさぐり甲冑の中に収めようとするも、慌てるがあまりなかなか収まらない。

勢いに任せて収めた瞬間、マイクの電源が切れてしまった。

セリフを喋っても地声しか聞こえない。

まだお芝居は前半にも関わらずこの広大過ぎるステージでマイク無しでは到底カバーし切れない。

もう一度マイクを取り出す。

その間もふなっちさんと僕の2人芝居が行われているのだけど、僕の目はもうマイクしか入らず、マイクの電源がどこにあるのかを探すので精一杯だ。

(ふなっちさん、ごめんなさい)

マイクの電源を探し当てて自分の声が復旧したのを確認し、チラリとふなっちさんを見ると、男前の表情でこちらを見ているふなっちさんの足元に、マイクの本体がぶら下がっていた。

(あぁ、ふなっちさん!マイク!マイクぅぅ!!)

2人のみの場面なので、当然ながら台詞以外の言葉は喋れないので、目力のみで伝えたいのだが、やはり当然伝わらない。

後ろから拓郎さんがふなっちさんのマイクを甲冑に収めようとするも、上手くいかない。

自分の目の小ささを呪っている間に2人の場面が終わり、ゴブさんが「申し上げます!」というセリフと共に舞台奥から入ってきてしまった。

ここからは3人で台詞のやり取りをするのだが、後ろを振り返ると、そこには甲冑を身に纏った人が数十人ズラッと並んでいた。

(え…ゴブさん、どれよ…。どれが…ゴブさんよ…)

甲冑を着た来賓の方々や鉄砲隊の方々も兜をかぶって舞台上にいる為、必死に顔を見てみるものの誰が誰だか全く判別が付かない。

東京での稽古場では3人だけなので、あまりにも想定外だった。

(いや…全く分からない…!え…ゴブさん、どれよ!?えぇい…とりあえず舞台奥に向かって台詞を言えば、この中のどこかにゴブさんはいるだろう)

全力で舞台奥に向かって叫んだら、自分のすぐ隣で誰かがタタタタっと動く気配がした。

それが、ゴブさんだった。

全力で恥ずかしかった。

最後のふなっちさんの大立ち回りでは、ふなっちさんの足元に垂れていたマイクがジャイアントスイングの如く吹っ飛び、ついでに兜の前立ても吹っ飛び、あろうことか槍もポキっと折れ、僕たちの大野川合戦まつりは終わった。

お芝居の直後に打ち上がった花火を、どこか少し切なげに見上げた。


いろいろあり過ぎましたけど、ショーマストゴーオンの精神でやり切りましたし、お芝居は全身全霊で務めました。

長きに渡った大分のお話もこれでおしまい。

打ち上げにて。

「またこの地に戻ってきたいな」と強く念じ、東京に帰ってきました。

こちらの動画にお芝居が映っています。(大体20:45〜が僕たちのお芝居パートです)



バタバタの中やり切った我々のお芝居がもし気になりましたら、どうぞご覧ください。