樋口一葉の小説デビュー作「闇桜」(やみざくら)のオーディオブックが発売・配信となりました![]()
明治25(1892)年3月、半井桃水(なからい・とうすい)主宰の同人誌「武蔵野」に掲載された「闇桜」、樋口一葉はこの作品で初めて文壇に登場します。和歌的色彩で描かれた、あまりにも切なすぎる儚い悲恋の物語です。
〈あらすじ〉
梅の木と井戸を共に分かち、隣り合う両家。園田家には一人息子の良之助(りょうのすけ)、中村家には一人娘のお千代(ちよ)がおり、二人は兄妹のように仲睦まじくしていた。良之助と連れ立って出かけた摩利支天(まりしてん)の縁日で同級生にふいに声をかけられたお千代は、良之助への恋心を自覚する。打ち明ける勇気を持てないまま恋の苦しみにさいなまれ、お千代はついに病に臥すようになる。良之助がお千代の心を知ったときにはすでに遅く、お千代の命は軒端の桜とともにはかなく散るのだった。
一葉が20歳のときの作品です。
「あまりにも切なすぎる」と書きましたが、本当にそうとしか言いようがなく、こんな哀しい物語が一葉の最初の小説なのかと、なんともいえない思いを抱きながら、作品に向き合いました。
文章としては和歌的色彩が強いのが特徴です。
・・・願ふはあし田鶴(たづ)の齢(よはひ)ながかれとにや千代となづけし親心にぞ見ゆらんものよ。
とありますが、主人公の名前である「千代」を出すにあたって、
「見え渡る浜の真砂や芦田鶴(あしたづ)の千代を数ふる数となるらむ」の歌をふまえてこのような表現になっています。一事が万事こんな感じで、枕詞や縁語の修飾語がこれでもかというほど並んでいます。
なので、原文を読みすすめるのはなかなか難しいというのが正直なところ。もとより文語で書かれていますし、改行やかぎかっこはなく(出版社によっては読みやすくするために句読点、かぎかっこを施しているものもあります)、文字が延々と連なっているのが一葉作品だといっても過言ではありません。
しかし、声に出してみると、おもしろいほどに言葉が立ち上がってきます。
和歌の修辞はしらべがよく、美しい響きをもっています。お千代と良之助の会話は、実に生き生きと描かれていて、仲睦まじい様子がまぶしく、同級生が妬み半分に声をかけてしまうのもちょっとうなずける、という感じなのです。ああでも、その心ない一言がもとで千代の命がはかなく散ってしまうなんて・・・
ちょうどダウンロード版とオーディブルのサンプルが別の箇所になっており、冒頭の和歌的修辞や、二人が摩利支天に行き、同級生に声をかけられる会話の部分などが聞けますので、よかったら聞いてみてください。
樋口一葉「闇桜」→ 朗読サンプル(冒頭部分)
販売・配信はこちら
→ でじじ 「闇桜」ダウンロード版 (サンプルは冒頭部分が2分ほど)
→ Amazonオーディブル「闇桜」 (サンプルは摩利支天の場面が5分)
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今年は樋口一葉生誕150年、東京新聞にこんな記事も出ていました。
東京新聞→樋口一葉生誕150年
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