■隣人トラブルの際の対応
【管理会社は「何もしなくていい」のか?その責任の範囲】
・一般に、入居者同士の騒音トラブルが発生したとき、管理会社(あるいは大家)は「対応を怠ってよい」わけではありません。管理委託を受けているなら、所有者に代わって物件を適切に管理・維持する義務を負います。
法律上、賃貸借契約には “目的物(部屋)を使用収益させる義務” が定められており(民法第601条)、これは「入居者が通常の生活をできる状態を保つ責任」を含むと解釈されることがあります。つまり、騒音クレームを把握していながら何もしないと、目的物の使用収益義務違反とみなされ得ます。
ただし、「管理会社=あなたの代理人として必ず個別交渉をしてくれる義務がある」わけではありません。多くの法律解説では、入居者と管理会社の間で「管理会社があなたのために動く契約」がない場合、管理会社を直接責任追及するのは難しい、という見方が示されています。
また、契約書に「当事者間で紛争を解決する」といった条項があるケースがあります。これは、大家・管理会社が介入する前に入居者同士で解決すべき趣旨を定めたものですが、条項があっても大家/管理会社による適切な対応義務が完全になくなるわけではありません。
【管理会社が“張り紙”はしているが、個別対応をしてくれない理由】
・張り紙(注意喚起文)は、マンション全体に注意を促すための一般的な初期手段として合法・一般的に行われます。
個別に特定できない、また証拠が不十分という理由で、個別に住人に直接注意を行うのを躊躇する管理会社もあります。
管理会社が動かない・動きにくい背景には、そもそも自社が「あなた個人のために動く契約」を入居者と交わしていないという事情もあります(すなわち、管理会社は“所有者・大家の代行者”という立場で動くものであって、入居者からの要求を直接の責任義務とする契約を結んでいないことが多い)
したがって、「張り紙はしても個別対応をしない」という現象は、実際に多く報告されています。
【あなたがとるべきステップ:対応の流れ】
以下のような順序で対応を進めるのが実務的です。
①証拠を集める
➡録音・録画・日時記録(いつ・何時に・どのような音か)を詳細に残す。隣室も同様に聞いてもらうなど証人を得る。
②管理会社・大家に再度申し入れ(書面で)
➡客観的証拠を添えて通知。「これらの証拠があります。改善されないなら契約解除なども検討せざるを得ない」と。内容証明郵便を使うのも有効。
③行政・相談窓口に相談
➡各市区町村の騒音苦情相談、公害等調整委員会、生活環境課など。警察相談(「生活騒音」での相談)も可能。
④第三者を交えた調停・ADR・裁判
➡改善が見られない場合は、調停を通じて解決を図る。訴訟を起こす場合、騒音が“受忍限度”を超えていると認められれば、不法行為責任(民法709条)で加害者・大家に損害賠償責任を問える可能性がある。
⑤契約解除・立ち退き請求
➡契約書に「騒音禁止」など明記されていれば、改善しない入居者に対して契約解除を求めることが可能となる場合も。
■youtube動画の台本
会話台本(セミナー風)
賃貸契約に関する初心者向けセミナー。
【登場人物】
やまだ:素朴な疑問を持った女の子(参加者)。不動産業界はまだ慣れていない。
講 師:不動産屋で働くベテラン社員。現場経験が豊富。
---
<後編:それでも解決しない時は?>
やまだ
でも、先生、それでも何も変わらなかったら…どうしたらいいんですか?
講師
その場合は、次のステップです。
市区町村の“生活環境課”や“公害苦情相談”に相談できます。警察でも“生活騒音相談”として受け付けています。
やまだ
警察に!?そんなことまでできるんですか?
講師
もちろん。
ただし刑事事件ではなく、あくまで“苦情レベルの調整”です。それでも第三者が入ることで改善するケースは多いですよ。
やまだ
それでもダメなら…?
講師
最終的には、調停や訴訟の手段もあります。
騒音が“受忍限度”を超えていると認められれば、加害者や大家に損害賠償請求ができる場合もあります。
やまだ
そんな深刻になる前に、静かに暮らせるようにしたいなぁ…
講師
まさにそこです。
早めに記録を残して、感情的にならずに“事実で伝える”。それが一番早い解決の道です。
やまだ
なるほど…“静かな暮らしは証拠から”ですね!
講師
うまいこと言いましたね。
その通りです!
以上