■退去時の掃除について
【掃除は「マナー」だが義務ではない】
民法上「退去時に掃除をしなければならない」という法律的なルールはなく、家具や荷物を出すだけで退去可能なケースもあります。
ただし、次に住む人や大家に配慮するうえでは「マナー」としてある程度は掃除しておくことが推奨されています。
【クリーニング費用は誰の負担?】
国土交通省のガイドラインによれば、通常の使用による経年劣化(自然な汚れや傷み)は貸主(大家)の負担である一方、借主の故意・過失による汚損(例:カビ、油汚れなど)は借主が修繕すべきとされています。
原則として、ハウスクリーニング費用も大家負担ですが、「クリーニング費用を借主が負担する」という特約が契約書に明記され、借主が合意していれば有効とされます。
契約時にクリーニング費を先払いしていた場合でも、汚損と判断され後から請求されるようなトラブルもあるため、請求内容や相場をしっかり確認することが大切です。
【掃除すべき場所はここ!最低限の目安一覧】
以下の箇所は、経年劣化とは区別されやすく、借主負担とされる可能性が高い部分のため、退去前に掃除しておくと安心です
中でも、浴室のカビ、トイレの汚れ、キッチンの油汚れなどは「汚損」と判断されやすいため、特に重点的に掃除しておくとよいでしょう。
・共通:床(掃除機+拭き掃除)、壁・天井のホコリ取り
・キッチン:油汚れ、シンクの水垢、換気扇・収納内部など
・浴室:カビ、水垢、排水溝の髪除去など
・トイレ:便器の黄ばみ・黒ずみ、床・壁の拭き掃除など
・洗面所:ボウルの水垢、鏡の汚れ、排水溝清掃など
・その他:窓・サッシ・網戸、ベランダ、照明器具、ドアノブ・スイッチなどのホコリや手垢
■まとめ
掃除は義務ではないが、マナーとしてしておくとトラブル回避や敷金返還につながる。
契約書の特約次第で、クリーニング費を借主が負担するケースもあるので、契約書などで事前確認が必須。
費用相場は、1Kで15,000~30,000円、3LDKで40,000~60,000円が目安。
また、汚損と判断されないためにも、浴室カビ、トイレ汚れ、キッチン油汚れは原状回復の対象になりやすいので、普段の清掃も含めて気を付けておいた方が良い。
■youtube動画の台本
賃貸契約に関する初心者向けセミナー。
【登場人物】
やまだ:素朴な疑問を持った女の子(参加者)。不動産業界はまだ慣れていない。
講 師:不動産屋で働くベテラン社員。現場経験が豊富。
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やまだ
あの…、引っ越すときって、自分の荷物さえ全部出しちゃえば、掃除ってしなくてもいいんですか?
どうせ室内清掃代とか取られてますよね?
講師
実は、法律で『退去時に必ず掃除しなければいけない』という決まりはないんです。
でも、何もせずに出ていくと、後でトラブルになる可能性があります。
やまだ
えっ、じゃあしないとダメってことですか?
講師
“義務”ではなく“マナー”です。
ただ、契約書に『ハウスクリーニング費用は借主負担』と書かれていて、あなたがサインしていれば、その費用は必ず払う必要があります。
ワンルームだと1万5千~3万円くらい、3エLDKだと4~6万円ぐらいが相場です。
やまだ
うわ…けっこう高い…。
でも、それ払うなら掃除しなくても同じですよね?
講師
それが落とし穴です。
ハウスクリーニング代はあくまで“通常の清掃”分。
あなたが放置したカビや油汚れ、ひどい水垢なんかは“汚損”として追加費用を請求される可能性があります。
やまだ
追加!?
それは困る…。じゃあ、どこを掃除すればいいんですか?
講師
最低限はこれです。
・床の掃除機&拭き掃除
・キッチンの油汚れとシンクの水垢、換気扇の中
・浴室のカビや排水溝の髪
・トイレの黒ずみ・黄ばみ
・窓・サッシ・網戸のホコリ取り
この辺は『経年劣化』じゃなく『あなたの使用による汚れ』と判断されやすい場所です。
やまだ
なるほど…全部やると結構大変そう。
でも敷金が多く戻ってくるなら頑張る価値ありですね。
講師
そうです。
特に浴室のカビとキッチンの油は、放置すると高額請求につながります。契約書の特約も必ず確認しましょう。
やまだ
ありがとうございます!
じゃあ私、引っ越す前に“プロっぽく”掃除してみます!
講師
いい心がけですね。
最後は“きれいに使わせてもらった感謝”で終わると、気持ちよく退去できますよ。
以上