みちのくの母のいのちを一目見ん
一目見んとただにいそげる

学生時代に習った
斎藤茂吉さんの一編の短歌。

まさに現実のこととして
体感しつつ。

どこか、ドラマの中の出来事のような。

 

遠く遠く。
 
故郷は、ただただ、遠く。
 
焦るあまり切符の券売機を押す手が震え
購入したい路線の切符が買えず。
 
乗り込んだ東海道新幹線。
車窓の景色は何一つ目に入らず。
 
東京駅で乗り換え。東北新幹線へ乗り継ぎ。
 
もう少しもう少し。
 
あと2時間。
 
不意に鳴る電話。
 
旦那さんから。
「・・・亡くなったって」
「わかった」
 
あと2時間。
間に合わなかった。
 
最寄り駅に迎えに来てくれた弟。
 
なにも話せない。
 
寒いはずの東北の夜の寒さも感じない。
 
母は病院のベットのうえで待ってくれていました。
霊安室にいたのでは、遠方から駆け付ける娘さんが
ショックを受けるだろうという、病院側の配慮だったと
後で聞きました。
 
笑っていました。
とても穏やかな顔で母は眠っていました。
 
医師、看護師さんに送られ病院をあとにしました。
 
自宅に到着。
いとこたちが、近所の人が待っていてくれました。
 
布団をひき寝かされた母。
 
「ようやく帰ってこられたね」
誰もが口にしました。
 
1年半の闘病生活。
 
帰りたかった自宅へ母は帰ってこれたのです。
 
・・・あれから数日。
 
まだ、どこか、本当のことではないような気がします。
 
それでも母が帰ってきた家はとても暖かかった。