ニノ Side

 

 

潤くんが翔さんと一緒に出かけたことで二人の距離がギュッと縮まるかと思ったのに、見てると案外それほどでもない。

潤くんの緊張は少しはほぐれてきたようで、翔さんを前にしても以前みたいに固まってしまうことはなく、恥ずかしそうに少しだけ笑う顔はそれはそれで可愛いんだけど、もうちょっと翔さんの存在に慣れて欲しいなと思う。

 

翔さんも相変わらず潤くんに優しいけど、俺の予想としてはもっとグイグイ押してくるかと思ったらそうでもない。

なんとなく、翔さんは潤くんに近寄るのをためらっているようにも思えた。

 

 

「...俺が口を出すことでもないんだろうけどなー。」

 

 

でも潤くんの事はほっとけないから。

 

子供の頃から繊細で傷つきやすかった潤くんは、しゃべれなくなったことでより一層誰かと近づくことを怖がるようになった。

でも潤くんは翔さんの事が好きでもっと近づきたいと思っているし、翔さんだってそうなんだから。

そして翔さんは、きっと潤くんをもっと明るいところに引っ張り出してくれるはずだ。

 

 

 

コーヒーを飲んでる翔さんに、

 

「またどこか、潤くんを連れ出してくれない?」

 

って聞いてみた。

 

 

「そうだね。」

 

翔さんはふふ、って笑ったけど、なんかあんまり乗って来ない。

 

 

「...ごめん、翔さんも忙しいよね。」

「あ、いやいや、そんなことないよ。」

 

ちょっと慌てたように、翔さんはそう言うと、頭をポリポリと掻いてあのさ、って話し始めた。

 

 

「...潤って別に俺のこと好きとかそういうのじゃないんじゃないの?ニノの勘違いなんじゃない?」

 

「え!何で?!」

 

「...俺といて楽しそうにはしてたけど、なんか結局疲れさせたみたいだったし。」

 

「潤くんすごく楽しかったって言ってたよ?」

 

「うん。まあLINEでも楽しかったとは言ってたんだけどね。」

 

翔さんはちょっと寂しそうに笑った。

 

「...潤にしてみれば別に俺と仲良くなる必要もなかったんじゃない?今まで通り二宮がそばにいてやれば。」

 

「翔さん、」

 

 

 なんだかとてももどかしい。翔さんも、潤くんも。

 

そして2人は知らない俺の気持ちも。

 

 

俺だって、ずっと潤くんの心配して、ずっとそばにいたんだ。なんとか潤くんの力になりたくて。俺が潤くんを変えてあげたくて、

それは俺にとっては、殆ど恋に近い感情だった。

 

でも俺じゃダメだったんだ。

 

 

「ねえ翔さん。俺は潤くんの家族と一緒だよ。決して傷つかない安全地帯なんだ。

だけど潤くんは自分から新しい居場所を見つけに行かなきゃいけないんだよ。傷つくかもしれなくても、潤くんが自分でそこにいたいっていう場所を。

すぐには変われないよ。今までだってすごく長い時間がかかってるんだ。

 

...でも翔さんが、潤くんのこと、そこまで思ってるわけじゃないんだったら、俺から無理にお願いするわけにはいかないんだよね。2人の気持ちがまずあっての話だから。」

 

 

そう言うと、ちょっと考え込んでいた翔さんが顔を上げた。

 

 

「......ありがと、二宮。俺、ちょっと自信なくしてて。ちゃんと俺が潤に聞けばいいんだよね、俺の事が好きなのかどうか。二宮に聞くんじゃなくて。

だから俺から先に、潤にちゃんと告るよ。」

 

「翔さん。」

 

「ごめん、ちょっと弱気になってた。せっかくお前が間に入って考えてくれてるのに。」

 

 

翔さんがそう言ってくれたから、俺はよかった、ってホッとしたと同時に、ちょっとだけ寂しい気持ちになった。

何だろ、娘を嫁に出す親の気持ちか?これ。

 

 

 

「潤くんの事、ちゃんと好きなんだよね?」

 

念を押すようにそう言うと、翔さんは、なんでお前に告白しなきゃなんねーんだよ、って笑ってた。