◆藤井聡太七段vsA級&B級1組棋士
◆プロ入り4年度目を迎えてA級在籍棋士との対戦が増え、目下6勝
7敗と負け越していて3年連続8割超えであった勝率が7割台に降下。
初めての厚い壁にブチ当たったように見えた藤井君ですが、10月
に入ってから敗れたのは「第69期王将戦・挑戦者決定リーグ戦」
という厳しい舞台で豊島将之竜王・名人と広瀬章人八段に敗れた
2敗だけの16勝2敗。16勝の中には羽生善治九段、糸谷哲郎八段、
久保利明九段、更には天敵になりそうに見えた斎藤慎太郎七段
(2勝)、菅井竜也新八段という若手トップクラスの強豪が含まれ
ているので調子を取り戻したと言うより分厚い壁を破って一段と
パワーUPしたと考えてよろしいかと思います。
◆以前は劣勢から「神の手」あるいは「AI超え」とか称された妙手
を放って大逆転という「サーカス将棋?」が多くてハラハラさせ
られたものですが、最近は終盤の寄せ合いに入るまで劣勢になる
ことが少なくなり華々しい決め手を発する前に対戦相手が諦めて
投了する将棋が増えて来ました。この辺は微妙な問題で「藤井人
気に翳り」と見る向きも出始めました。確かに対戦者や観戦者が
「アッ!」と驚く場面が激減したことは事実で、私自身も強くな
り過ぎて面白みが薄れたと感じる時もあります。しかし、羽生さ
んのような絶対強者を目指しているでありましょう藤井君として
は序盤、中盤で劣勢になってはトップクラスとの戦いを勝ち抜く
ことは出来ないと考えたのでしょう。互角あるいは僅差の形勢の
中から如何にして勝機を掴み、それを拡大して勝に持って行くか
ということを最優先課題として研鑽に励んでいるものと思われま
す。
◆さて、今日1月31日は「第46期棋王戦戦予選2回戦対今泉健司四段
戦」が行われ、173手で順当勝を収めて連勝を10に伸ばし、今期
の成績も40勝10敗となって勝率を8割に戻しました。先手番を引
いた藤井君はジックリ腰を落として仕掛けのチャンスをうかがい、
満を持して桂馬のタダ捨てから切り込んだものの目算外れがあっ
たようで攻めあぐんで千日手模様に。しかし持ち時間を早めに使
ってしまった藤井君は、千日手になって後手番に回り、対戦相手
の半分以下の残り時間で戦うのは不利と見たのでしょう、千日手
を回避してから形勢を損ねて怪しい雰囲気に。94手目辺りでは残
り時間が19分となり劣勢は変わらず。今泉四段は1時間41分も残し
ていて一昨年のNHK杯の二の舞になるかもしれないという心配が。
あの時は「凡人が天才に勝つ」とか「奇跡」と驚かせてNHKが急
遽今泉四段の特別番組を組むという騒ぎになりました。さて、今
回は97手目で局面打開を狙ったのでしょう、再び桂馬を犠牲にして
攻め掛かれば今泉四段の104手目が悪手であったようでAIの形勢判
断は逆転。しかし、125手で藤井君は時間を使い果たして1分将棋に。
今泉四段はタップリ1時間6分残し。しかし、ジックリ考えると藤井
君にも考えられてしまうので利敵行為になりかねない。藤井君は秒
読みに追われつつも誤ることなく的確に追い詰めて今泉四段は44分
残して投了となり危うい将棋を切り抜けて挑戦者決定トーナメント
進出が見えて来ました。あと2勝。
◆以下、今年度A級とB級1組に在籍している棋士との対戦成績を取り
まとめてみました。今年度は豊島竜王・名人に3連敗と痛い目に遭
ったのが祟ってA級棋士には6勝7敗と負け越していますがB級1組の
棋士には8勝0敗で負けなし。既にA級八段の実力が備わったと見て
良いのではないかと思われます。
現状のタイトル・段位 | タイトル獲得歴 | A級在籍 | 藤井聡太七段からみた勝敗 | |||||
通算 | 連続 | 2017 | 2018 | 2019 | 通算成績 | |||
豊島 将之 | 竜王・名人 | 竜王1・名人1・棋聖1・王位1 | ★3期 | ★3期 | ● | ●●● | 0勝4敗 | |
渡辺 明 | 棋聖・棋王・王将 | 竜王11・王座1・棋王7・王将3・棋聖1 | ☆9期 | 8期 | 〇 | 1勝0敗 | ||
永瀬 拓矢 | 叡王・王座 | 叡王1・王座1 | 0期 | 0期 | ||||
木村 一基 | 王位 | 王位1 | ☆5期 | 4期 | ||||
広瀬 章人 | 八段 | 王位1・竜王1 | ☆6期 | ☆6期 | 〇 | ● | 1勝1敗 | |
羽生 善治 | 九段 | 永世7冠・通算99期 | ☆★27期 | ★27期 | 〇 | 〇 | 2勝0敗 | |
佐藤 天彦 | 九段 | 名人3 | ☆★5期 | ★5期 | 〇 | 1勝0敗 | ||
糸谷 哲郎 | 八段 | ☆2期 | ☆2期 | 〇 | 〇 | 〇 | 3勝0敗 | |
佐藤 康光 | 九段 | 竜王1・名人2・棋王2・王将2・棋聖6 | ☆★23期 | 14期+☆9期 | 〇 | 1勝0敗 | ||
久保 利明 | 九段 | 棋王3・王将4 | ☆13期 | 5期+2期+3期+☆3期 | ● | 〇●●〇 | 2勝3敗 | |
三浦 弘行 | 九段 | 棋聖1 | ☆18期 | 14期+☆4期 | ●〇 | 1勝1敗 | ||
稲葉 陽 | 八段 | ☆4期 | ☆4期 | ● | 〇 | 1勝1敗 | ||
深浦 康市 | 九段 | 王位3 | 10期 | 7期 | ● | 〇 | 1勝1敗 | |
阿久津 主税 | 八段 | 2期 | 〇 | 1勝0敗 | ||||
斎藤 慎太郎 | 七段 | 王座1 | 0期 | 0期 | ●● | 〇〇 | 2勝2敗 | |
行方 尚史 | 九段 | 6期 | 5期 | 〇 | 〇 | 2勝0敗 | ||
屋敷 伸之 | 九段 | 棋聖3 | 6期 | 3期+3期 | 〇 | 1勝0敗 | ||
山崎 隆之 | 八段 | 0期 | 0期 | ● | 0勝1敗 | |||
郷田 真隆 | 九段 | 王位1・棋聖2・棋王1・王将2 | 13期 | 11期 | ||||
菅井 竜也 | 八段 | 王位1 | 今季初昇級 | ● | ● | 〇〇 | 2勝2敗 | |
松尾 歩 | 八段 | 0期 | 0期 | 〇 | 1勝0敗 | |||
畠山 鎮 | 八段 | 0期 | 0期 | 〇 | 〇 | 〇 | 3勝0敗 | |
千田 翔太 | 七段 | 0期 | 0期 | 〇 | 〇 | 2勝0敗 | ||
7勝4敗 | 7勝5敗 | 14勝7敗 | 28勝16敗 |
(注)★は名人在位を含むA級在籍期間
☆は今年度を含むA級在籍期間