毎勤統計の不正調査については、政府、とくに厚労省に看過できない大きな問題があり、ガバナンスの抜本的な改善が必要なこと、日本の統計システムが弱体化しておりこれを転換していく必要があることは論をまちませんが、他方で政府や国会が何もやってこなかったという議論には違和感があります。
今から3年前、自民党行革本部で統計改革・EBPM推進PTを立ち上げ提言を出しました。このメンバーのおひとりだった山本幸三先生がその夏に行革担当大臣になられ、政府に行政改革推進本部を立ち上げ、統計委員会の権能強化を含む統計法改正が2018年に国会で成立しました。厚労省が2004年より続けていた不正調査を“白状”したのも、強化された統計委員会の下で厳しく追及されたのがきっかけです。
更なる統計改革が必要だとしても、これまでの改革のどこが有効でどこが足らざる部分であったのか丁寧に議論が尽くされることを望みます。
そのうえで、今回の統計行政の問題点は①現場における統計マインドの希薄さ、②統計行政のガバナンス欠如、③政策立案における統計利活用の不足にあるように思います。
①については、抽出調査に切り替えた際に当然復元せねばならないのに、その当たり前の作業が現場で行われていませんでした(もちろん復元したとしても総務大臣の許可なしには統計法違反になりますが)。統計部署の担当者ですら、復元の必要性を理解していなかったことは問題の根深さを物語っています。
②については、外部の監督機能です。この点、統計委員会の権能強化や各省の統計幹事の設置で既に一定の手当てはしてあります。ただ、統計委員会には専門家が集まっていますが、省内の統計幹事は充て職であることも否めません。また、統計を改善していくためには、政府外のチェック機能、すなわち学者やエコノミストなどの外部統計ユーザーからの指摘を反映しなければなりませんが、統計関係の公表物は非常に難解で専門家でも理解しづらいと指摘されています。
③が最も重要で、政策立案部署と統計作成部署との間で断絶があることです。EBPM(証拠に基づく政策立案)を前提としていれば、全ての行政職員が統計に関心を持ち不備があれば、発覚の都度訂正されていなければなりませんが、それが行われていなかったということはEBPMでなかったことの裏返しでもあります。
上記3点に共通する課題は人材育成です。上も下も足りないということです。様々な所で指摘されているように、行革の中で人の生死に直接関わらない統計部署の人員が帳尻合わせで削られてきたのは事実です。そのためには、統計の専門家を一定数雇う、それもただ雇うだけでなく統計の専門家として育つよう、ローテーションを行いキャリアアップのシステムを設けるべきです。
その際に、今のご時世で右肩上がりにリソースを増やすわけにはいかないので、日本の分散型統計システムを統計庁の発足などの集権型に改めるのも一案だと思います。ただし、分散型は分散型なりにメリットはあって、現実には所管官庁だからこそ業界の統計データを集計しやすいこともあります。統計部署が集約され政策立案部署から切り離されれば、先に指摘したEBPMの普及定着が更に遅くなる恐れがあります。
いずれにせよ、大隈重信翁が今より100年以上前に訴えた「統計は国政の基本」との認識に立って、雨降って地固まるよう、丁寧かつ意味ある改革を進めていく必要があります。今週中に自民党行革本部統計WGでも議論を始めます。