『先生らしくならないで下さいネ。』


これは前回の話の続きです。
 ☆第一話『「今時,コンビニの兄ちゃんでもそんな格好してない」とはよく言った。』の記事参照  
 ☆第二話『ボクが髪を切ればいいんか,じゃあすぐに切る。~あの副会長再び~』の記事参照
 
 
 教育講演会当日。朝,新しい髪型を見に,次々に全校の子どもたちが6年教室を覗きにやってくる。話題性抜群だ。そばにいた男の子に「おぃ,入場料取れ!」と・・・・,冗談にもキレがない。
 
 そしてお家の人との連絡ノートでもある「家・自由ノート」が届く。

先生へ
思い詰めないでくださいね。先生はこの小学校の一人の先生ですよ。子どもたちの大事な先生ですよ。オギノ先生はどこにもいません。今オギと呼ばれてこの小学校にいること忘れないでください。
そして,慕っている子どもたちがいること。そして。それをわかっている先生方や保護者がいること。そして,他の学校に行っても同じです。変わりません。みんな同じ人です。私もつらいこといっぱいありました。でも,まわりに支えてもらえたからこそ,今があります。今も悩みはあります。人に言える悩み,言えない悩み。こわいこともあります。勇気がいるときもあります。逃げたこともあります。でも,逃げても前へ向かっていく逃げ方があることを知りました。逃げたように思ったのに,違うかったと思うんですよ。あとになって・・・。自然の流れも必要。流されてもいいと思えば,流されている自分を感じ,これでもいいなぁ~って感じたり。
私もえらそうなことは言えない人間です。これからもいろいろなことがあるでょう。まだまだこれから。自分に正直になりたいですよね。自分の思いだけは,自分らしくもっていたいですよね。自分を見つめ直す機会を持たせてもらいました。私自身も,こちらこそありがとうございます。子どもたちのことよろしく!です。オギらしく!です。

 このタイミングで届いたから,なんだか嬉しいのと申し訳ないのと。きっと,今日ボクが見れるように,昨日早速書いてくれたのでしょう。本当に頭が下がる思いです。自分はちっぽけだなって思えます。でも,正直イライラが消えるわけではないのです。
 
ボクはこんな風に返事を書きました。

~さんへ
うれしいです。いろいろあったので,心を落ち着かせてもらいました。このノートがあってよかつたなぁとしみじみ思いました。タハハ。
まぁこういうボクなので,今までも他の学校で,何もなかったわけじゃないケド,役員会でっていうのは,初ですね。驚きです。ちょっと他では考えられない事態なので,怒りというより,まずあ然としています。
 こんな時でも,笑顔で教室でいかないといけないのは,正直辛い,でも,子どもたちに罪はないし,ボクの勝手な都合なので笑顔でいないとと思って,いるのです。ボクは短気で負けず嫌いなので,こうなるととことん戦ってみたいというか,許せんって今までは思って,余計に物事を荒げていました。若かったから。,今はその瞬間はすごくむかつくけど,少したつと〝かわいそうに・・・〟とその人を思っています。人それぞ れですから。人の目は気にしたくないんです。子どもの目は気になるけど。
  ただ,〝来年は学校変わろうかな~〟とか考えます。大きい学校だと,これだけ一人の意見がクローズアップされないし・・・ 。でも,どうであれ〝いつも笑顔で元気です〟ではいられます。ボクにはわかってくれる,nice my friendsも,今までの保護者も,何より教え子達がいるから・・・。まぁ一人ではないので。
正直言えば,この一年間のPTAのことはやっぱり憂鬱だし,あらゆることは,キャンセルしていこうかなとも考えています。ボク はまだまだ弱いので,ちゃんと向き合えないんですね。でも,ぐちぐち考える暇があったら,なんか楽しい授業ができないか,そのことを考えます ~さん,本当にありがとうございました。すごく嬉しかったし,助けられました。これからもよろしくお願いします。

そして,午後からの教育講演会。保護者達の目が,ボクの髪を見て凍り付きます。小さい学校ですから,理事会の話は知れ渡っている事でしょう。そんな中,仲のいい二人の保護者がボクのそばに来て「うちらはオギギの味方したんやで~」と教えてくれました。有り難いことです。でも,素直になれないボクは「こんな学校はじめてやで」と毒づいてました。本当に仕方のないヤツです。

 次の日,また別の人から家・自由ノートが届きました。
 
先生へ
 お久しぶりです。修学旅行や昨日の教育講演会とお疲れ様でした。
ところで,話変わりますが,昨日元気ないなぁ?何かあったのかな?って思ってたら,ある人から「役員会の時に・・・・」ということを,少し聞いたのでそのことで元気がなかったのかな?って・・・。
私の意見としてなんですが,おかしいんじゃないんですか?髪型や格好なんて人にとやかく言われる事もないし,まして役員会という所で言うなんて!私がその場にいたら,絶対に意見してます。い
つでも言えますよ!!
その人はいったい何を見てるんだろう?子どもたちを見てみろ!!って言いたいです。昨日でも,6年生全員がみんなうれしそうに先生にまとわりついて,体育館をでていったじゃないですか?あんなに慕われる先生っていないですよ。
先生,私をはじめPTAの人たちも,みんな先生を応援していますよ!!先生らしくいて下さい。そのままで!!先生らしくならないで下さいネ。みんな人一倍努力している先生を知っているので!!バカな意見なんて,早く忘れて元気をだして欲しいです。
かなりひこんでると思いますが・・・・ほっとけばいいんですよ。楽しい事考えて忘れましょう。早く元の先生に・・みんな味方ですよ。
〝いつも笑顔で元気です〟私も心がけています!!

 ちょっぴり泣けました。嬉しくて嬉しくて。気持ちが伝わってきます。本当にみんながみんな分かってなんてくれない。でも,わかってくれる人がどこかにいること,一人じゃないこと。そんなことが嬉しいんです。心の波がすっーと落ち着きました。
 そして,ある授業中。思い出したかのように優ちゃんが,本当に何気なく「オギッチ,パパがな〝がんばれよ!〟って」と言いました。なんか心があたたかいです。

 子どもたちは《結晶》で,岩塩の劈開面に感動し,感嘆の声をあげます。そして,塩の結晶のお絵かきを喜び勇んで何度もやっています。何も変わらない光景が目の前に広がっています。ボクが楽しくて好きで,求めていたモノが目の前に確実にあります。落ち込んで,イライラしても,それでも踏ん張れるのは,わかってくれる保護者もnice my friendsも,そうだけど。やっぱり子どもたち。それはすなわち授業。仮説実験授業があれば,ボクは笑顔でいられるのです。ざまあみろ!!                                    
ということで,
『いつも笑顔で元気です。☆』

注:人物の名前は仮名です。