LAでよく見る木、植物と言えば、皆が口を揃えてパームトゥリーと言うだろう 。
サンセット時には細長く伸びて並んだパームトゥリーがシルエットになって...。
15年ほど前、LAでよく仕事してた頃、オフの日は夕方からホテルの屋上のジャグジーに入りながらその光景を見るのが楽しみだったよ。<なにいイキってんねん、かっこよすぎるやろ。>

パームトゥリーは一本幹が長く伸びてて、
先に葉っぱが丸く重なってるのは皆も知っているだろう。
"palm"とはそもそも手のひらのこと。その通り、葉っぱの形状が手のひら、そして、先端が指のように細くなってる。

前回書いたように、もう何度もLAを訪れているけど、何度目からだろうか、パームトゥリーにはもう一種類あることに気がついたんだ。いや、正確にはあれがパームトゥリーと言うかは疑問、むしろ異なるのだろう。でもそんなことどうだっていいんだ。
僕の中では2種類のパームトゥリーなんだ。
ジャカランダという、薄紫色の花をつける木もあるけど、
LAのシンボルと言えば、やはりあいつらだろう。

数えたことはないけど、背の高い、あのパームトゥリーの方が断然多いと思う。
でも、あるところに行くと、もうひとつの方がやたら綺麗に並び、あまっさえ、イルミネーションまで幹にかざられてたりする。

それはどこか。

高級ホテルのエントランスや、整然とした図書館などの脇なんかにあるんだ。

いつの日にか、僕は本来のパームトゥリーを僕は蔑み、
もうひとつの方を、「いい方」、などと呼んでいた。
今では前者を、「カニ」、と呼んでしまっている。
手のひらにも似ているが、カニにも似ているからだ。
訪れてる先々で、チェックをし、一喜一憂してる僕がいる。

「なんや、カニやないか、まだまだやな。」「お、いい方やな。よしよし。」

去年夏、ツアーメンバーに思い切って聞いてみたことがある。

どちらが好きかと…。

キーボードの赤石はどっちだっていい、と抜かしやがり、ドラムのイデヤに至っては僕の意に反してカニが好きだと断言しやがった。
サウンドの大道は仲裁しようとしてたか。ベースの泉は後ろのシートで昼寝していやがった…。

そもそもこんな下らない質問に対して、耳を傾けてくれるメンバーは相当愛があるとは思うが、それでも僕は、「いい方」がいかに素晴らしいか、車を運転しながら、延々と力説していた。

僕の仮説はこうだ。

その昔、「カニ」を並べて植樹したが、あまりにも背が高くなり過ぎて手入れも出来なくなり、放置されるようになった。

ヨーロッパ系アメリカ人は相変わらずセレブ志向で、手入れもしやすい、南国情緒もある
「いい方」を体裁を繕う場所に植えたのではないか。

考えてみれば、それに乗っかる僕も僕だ。
ある種危険な思想を持ち合わせてるように思われるかもしれない。

LAに行けば行くほど、アジア人は低く見られてるのかなぁ、なんて思うところもあり、
少しはリッチな気分になってみたい遊びなんだけどなぁ。

君はどっちが好き?


「いい方」
$織川ヒロタカ 《STAY GOLD》-「いい方」

「カニ」
$織川ヒロタカ 《STAY GOLD》-「カニ」