卒業式
が行われたのは3月19日。雪が降ったあの日のことだ。
その6日後にあったのが修了式。式後に学校長から退職教員の紹介があり、1・2年生たちに向けて話をした。
「ボクも今月で卒業するんだ。キミたちにも英語の授業をやってきたから、全員の顔と名前がわかるぞ。えーと、その最前列のキミ、名前は何だっけ?」とボケてみせると、気を利かせた生徒たちはクスクスと笑ってくれた。![]()
「これからの学校を頼んだよ。ありがとう」と告げたのが最後の言葉になった。
翌日の春休み初日。午前中、女子バレーボール部の2年生に廊下で声をかけられた。![]()
「先生って、人生を楽しんでますよね。どうしてそんなに楽しめるんですか?」
「きっと人間運がいいからだろうね。いい人に巡り会える運を持っているらしい。だから、キミのような生徒に会えるんだなァ」
「ハハハ。4月からどうするんですか?」
「高校を作るよ。ウルトラ学院っていうんだ。ほら、先生、ウルトラ中学校の副校長だろ。今度、高等部を作るんだよ。キミも4月から3年生、受験生だね」
“ウルトラ中学校”は、「受動態」の文法導入で使うため、ボクが勝手に考えた架空の中学校。3週間かけてボクが製作したウルトラ中学校の”ジオラマ”があることを、彼女は知っていた。![]()
「その学校、試験なしで入れますか?」と、彼女は真顔で質問してきた。
「入れる、入れる。キミなら推薦で入れてあげるよ。特待生で入学金もなしでいい」
「うわあ、行く行く! 絶対に入学させてくださいよ‼」
こんなふうに無邪気でオトボケで、楽しい言葉のキャッチボールができる生徒たちがいる学校だった。![]()
退職3日目にして、もう学校が恋しくて仕方がない自分がいる。![]()
“ウルトラ中学校”については、
別の機会に詳しくご紹介します
