世界の潮流は電気自動車にあらず | 尾張エクセルの「日々精進ブログ」

尾張エクセルの「日々精進ブログ」

木曽の清流に映え、心触れ合う躍動都市;愛知県一宮市に活動拠点を置く、尾張エクセルです。保守政権を応援しつつ、経済・社会・軍事防衛まで、地域や国内、海外の気になる出来事や話題を、独断と偏見溢れる一味違った目線でブログ提供します。

小生も正会員である公益財団法人「国基研:国家基本問題研究所」の「今週の直言」に
去る1月10日に国基研理事で産業遺産国民会議専務理事の加藤康子氏が以下の論文を
掲載されたので、一部加筆の上で、今回のブログにて紹介する。


1月3日に、ニューヨーク証券取引所が開くと、米「ブルームバーグ」は「中共の電気
自動車(EV)メーカー;BYD株の投資家による空売り」を報じた。米国の大手EV
メーカーの「テスラ」も、新車の納入が始まったピックアップトラック;「サイバート
ラック」の評判が悪く、株価が重たい。

2024年、欧米メディアは、「EV需要の減速と、ハイブリッド(HEV)ブームの
到来」を予測している。米国市場でEV需要の陰りは顕著である。GMやフォードは、
収益性への懸念を背景に巨額のEV計画から手を引いて、内燃機関を持つ車への投資を
増やしている。
理由は単純で「EVを造っても売れない」からである。

米国では、内燃機関を持つ車が90%以上を占め、EVのシェアは僅か5.6%である。

<米欧で減速するEV需要>

今年は米国大統領選挙の年で、「EVか、内燃機関を持つ車か」が選挙の争点の一つに
なっている。バイデン政権は、北米産の電池やEVを 税制で支援している。対するトラ
ンプ前大統領は「ハイブリッドがいいと思う。当然ガソリン車も必要だ。大統領になっ
たらどんな自動車も買えるようにする」と言い、「自動車の国産化は国の安全保障上、
一番重要な問題である」と熱弁を振るう。トランプ氏は「職がなくなるかもしれない」
という自動車部品工場労働者の多くの琴線に触れたのである。

EV需要の減退は米国にとどまらない。ドイツ政府は前倒しでEV補助金の停止を発表、
工場では期間労働者の一時解雇が始まっている由。中共のBYDも、ハイブリッド車や
プラグインハイブリッド車(PHEV)に触手を伸ばしている。

<重要な国内産業支援の視点>

こうしたニュースは、EVシフトを煽ってきた日本のメディアにはタブーとされる話題
であり、なかなか取り上げられない。日本政府も、国際社会からは周回遅れで2023
年度の補正予算にEVを増やすためのみに多額の補助金を投入している。
だが、重要な

議論が抜けている。「時代の潮流を決めるのは、政治ではなくユーザーだ」
ということだ。日本でEV市場は現在、全体の2%弱なのである。EV市場は、補助金に
よって作られた官製市場なのだ。環境保護という「正義」の名の下に、ユーザーは不便
を強いられるのである。

もう一つ抜けているのは、トランプ氏の指摘した「自国の産業をいかに守るか」という
視点である。日本の自動車産業は、世界で販売される新車の3割を生産する国際競争力
の高い唯一の産業である。

帝国データバンクがまとめた「EV普及の影響/参入企業の実態調査」(2023年)
によると、自動車関連企業のうち EVの普及が業績にマイナスの影響があると答えた

のは全体の49.2%だった。

ガソリン車からEVに切り替わることで、国内部品メーカーの就業者約300万人の

うち30万人の雇用が失われるともいわれている。政府は、EV普及を支援する前に、

この数字を深刻に受け止めるべきである。