●「⑬幸せになっていいよ」って、誰も教えてくれなかったから。幸せなお金持ち短編集ーほのか編

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＜ほのかショートストーリー第13話＞

その日、私は
ちょっとモヤモヤしていた。

売上が先月より良かったのに、
なぜか気分が晴れない。

「もっと結果出さないと…」
「周りのあの人の方がすごいし…」

SNSを見るたびに
自分がちっぽけに思えてくる。

そんなとき、たまたま
カフェにいた時生さんを見かけた。

いつものようにラテ片手に、
楽しそうに本を読んでる。
（あの人、悩みとかあるのかな…）

気づいたら声をかけていた。

「最近、ちょっとは成果出てきたんですけど…
なんか堂々と喜べなくて…」

時生さんは、少し驚いたように
私を見て、ゆっくり笑った。

「お、ほのかちゃんにしては珍しいね。
それ、“幸せになる練習”が
足りないだけだよ」

「…練習、ですか？」

「うん。多くの人は“頑張る練習”はしてきた。
でも、“喜ぶ練習”や
“受け取る練習”はしてこなかったんだよね」

たしかに。
思い返せば私はいつも、

「もっと頑張りなさい」って
言われて育ってきたけど、

「もっと受け取っていいよ」とか
「自信を持っていいよ」とは
言われた記憶がない。

「ほのかちゃん、褒められたときに
“そんなことないです”って
反射的に言っちゃわない？」

「…はい。めちゃくちゃ言います」

「それって“謙虚”じゃなくて
“否定”になっちゃってることもあるんだよ」

そう言われてハッとした。

たしかに、感謝やお金を
もらうたびに思ってた。

“申し訳ない”って。

時生さんはラテを見ながら
こう言った。

「喜び上手は、幸せ上手なんだよ」

「え？」

「たとえば、自分に子どもが
2人いたとして──
どっちにも500円渡したとする」

「はい」

「ひとりは『たった500円？』

もうひとりは
『えっ、500円も！？ありがとう！』」

「…そっちにまた渡したくなります（笑）」

「そう。それと同じ。
もらったら、素直に喜ぶ。
それだけで世界が変わるんだよ」

私は、思わず笑ってしまった。

こんな簡単なことなのに、
どうして忘れてたんだろう。

「堂々と幸せになるって決めるとね、
“この人、自信があるな”って
思われるようになる」

「はい」

「そうすると、人が集まってくる。
そして、応援もされる」

「でも、そんなに自信なんて…」

私がつぶやくと、
時生さんはこう言った。

「自信は“つける”もんじゃない。
“決める”ものだよ」

「決める…？」

「うん。“今の自分に80点あげる”って」

「完璧じゃないけど、○をつける。
するとね、“あと20点”が見えてくる。
その20点を目指せば、ほとんど100点さ（笑）」

それから私は、
日常の小さなことに○をつけるようにした。

メッセージを返せたら「ナイス！」

ストーリーを更新したら「よくやった！」

ラテを飲んで幸せを感じたら「それ最高！」

不思議と、それだけで
心の中がふわっと明るくなった。

誰かに見せる笑顔じゃなく、
自分に向けた笑顔が増えた。