グリコ・森永事件については大半の方がご存知のことと思います。

この事件があった場所、

特に京都・滋賀・京阪神に住んでいた人々にとっては

すぐそばにその犯人達がいたかもしれないという恐怖は

その当時いつもありました。


塩田武士著  罪の声

事件当時脅迫に使われたテープの子どもの声。

・・これは、自分の声だ。

と帯に書かれて、

なるほど、グリコ・森永事件をモチーフにした小説なのかと読み始めたのですが・・

モチーフどころか、事件そのものではないのか?

出てくる地名や道路など土地勘がある関西の人間にとっては

ものすごいリアルなものとして迫って来るのです。

  「どくいり  きけん  たべたら  死ぬで」

関西弁の脅迫状・・他の地域の人にはどう映ったのだろうかと思います。

関西弁はその頃ようやくテレビでもお馴染みになって来て

今日の一方言というよりどちらかというと

その当時お笑いのセンスのある言葉として受け入れられていたように思います。

なので、この脅迫状も危険なのに危険を感じさせないような

なにか警察を揶揄する方にシフトしたような感じでもあったのかもしれません。

私自身は社会に出たばかりで、もちろん子どももいなかったし、

周りにも小さい子どもはいなかったので

青酸毒の入ったお菓子と言われても

現実味がなかったのは事実。

ただテレビの報道を見てた、

あるいはスーパーの棚からターゲットとなったメーカーのお菓子が消えていたのも事実。

そして事件となった舞台の沿線に住んでいたのも事実で

きっとあの沿線に住んでいた人々の記憶にはあの事件は深く刷り込まれているのだと思います。

未解決ならなおさら・・

その未解決事件に深く入り込み

事実はこうだったのかも、

子どもの声が使われている以上、

巻き込まれている家族が居たに違いない、

その子どもはどうなったんだ?という思いが強く伝わってくる、

ノンフィクションのようなフィクション。

脅迫された会社名は違う名前にはなっているのですが、

違う名前になっていても、あの事件のあの小屋の映像は

今でも脳裏に焼き付いています。

そう、あの声の子ども、誰だったのか

この物語はその子どもの生き様を

家族の生き様を

たしかに想像であるかもしれませんが

浮き彫りにしそして

私の前に重い重い文鎮のようにこの本は

ドンと存在しています。


映画化されるそうです。

俳優さんには相当な力量が要ると思います。