令和六年三月喜多流自主公演
『西王母』
気合と底力の感じられる謡に驚く。
「あれが昔の喜多(流)の謡なんだよ。」と、終演後に面打ちの岩崎師が教えてくれた。
シテの谷大作氏(77)はこの舞台で能のシテをお仕舞にするらしいとも。
ならば謡をもっとお聞きしたいと思った。
『雲林院』
佐々木多門氏の「業平」は想像以上のもので、全ての動きに【能】を観る想いがした。
後シテの業平は、[伊勢物語の秘事]を伝えているという曲だが
[伊勢物語の秘事]とは、古今伝授に有るものなのだろうと何時も想像している。
「謡曲大観」(佐成謙太郎)『雲林院』の【出典】に
〽 弘徽殿の細殿に人目を深く忍び・・
といっているのは、源氏物語花宴の巻、光源氏と朧月夜内侍との恋物語を取り入れた物であり・・
等と書かれているが、
知識だけついても実際の舞台はなかなかそう見えない。
今回の佐々木多門氏の舞台で、初めて「花宴」の光源氏と朧月夜の忍び合いが
(源氏物語の世界では)【夜遊の舞楽】なのだと感じられた。
特に後シテの面「中将」は素晴らしく、内なる光に輝いて観えた。
前・後共、岩崎久人師のお作であると伺い、更に幸せな気持ちに成る。