女子大のキャンパスにスコップやバケツを持った子供たちの姿がちらほら-。先月末、同志社女子大学京田辺キャンパス(京都府京田辺市)の一角に、教育や研究の実践の場として「砂場」が完成した。「犬や猫のフンが不衛生」「洋服が汚れるから」と敬遠する向きもある砂場。だが、研究者は「砂場遊びには子供たちのさまざまな発達の可能性が秘められている」と指摘している。(岸本佳子)

 ◆大好きな場所

 砂場は縦3メートル、横6メートル。地元で採取された上質の砂を使っている。同大学現代社会学部現代こども学科の学生と子供たちが触れ合うなど、授業で活用したり、地域の子育て支援の場にもなればという。

 4月上旬、学生とボランティアを通じて交流のある4組の親子が集まった。子供たちは砂場に到着すると、遊具を手にして砂をすくったり、砂山に登ったり、転がってみたり。3歳の息子を連れてきた母親(39)は「子供は砂遊びが大好きです。ここは砂の質がとてもいいですね」と喜ぶ。

 『〈砂場〉と子ども』(東洋館出版社)などの著書がある同学科の笠間浩幸教授は「砂場は子供の発達に大きな役割を果たしているのです」と話す。

 笠間教授は平成16年から京都市内の保育園で、砂遊びする子供たちの様子を観察している。ビデオや写真に収めた内容を分析したところ、発達段階に応じて遊びの内容が意味のある変化を遂げていることが分かった。

 1歳児の特徴は「砂で遊ばない砂遊び」。両手にスコップなどおもちゃを持ち、道具の操作そのものを楽しんでいる。徐々に「砂をすくう」動作などを学習し、早い子供では2歳後半ぐらいからトンネルや山を作るなど、手で砂の感触を楽しみながら遊ぶようになる。言葉が増えるとともに、砂場の中で「ごっこ遊び」も盛んになる。4、5歳になると、基地を作ったり、電車や車を走らせたりするなど、砂場全体を一つの舞台ととらえるような遊び方もできるようになる。

 ◆秘める発達の可能性

 「砂場で山を作ったりくずしたりしながら科学に触れることもあれば、ごっこ遊びなどを通してコミュニケーションの力や社会性もはぐくまれる。砂場遊びはさまざまな発達の可能性を秘めていると思います」

 笠間教授によると、日本で砂場が普及するようになったのは明治時代後半から大正時代で、幼稚園を中心に広がっていった。当時、教育関係者の間では教師主導の堅苦しい教育にかわり、子供の自発的な意欲や子供の持つ力を引き出すような教育のあり方が重視される傾向にあり、「砂場が、その考え方とぴったり重なったのではないか」という。

 「汚い」というイメージから砂場遊びを敬遠する家庭もある。笠間教授は「汚いと思っているのは大人です。子供の世界をぜひ、見直してほしい」と話している。

 ■19年度は前回調査比2000基減

 国土交通省が3年ごとに行っている「都市公園における遊具の安全管理に関する調査」によると、平成19年度に全国の公園にある砂場は6万1466基。踏み板式ぶらんこ、すべり台についで多く、やはり公園の人気者だ。ただ、10年度から16年度にかけては増加傾向にあったが、19年度は前回調査より約2000基減少。笠間教授は「公園のリニューアルの際になくなるところもあるようだ」と話す。

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