【2月の読書】 町工場巡礼の旅 | 2代目設計屋・仕事っぷり

2代目設計屋・仕事っぷり

金型設計屋の2代目の日々、思うこと・気になること

町工場巡礼の旅 (中公文庫)/小関 智弘
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ここのところ毎週日曜日は2日酔いです。。。

まぁ、それはともかく、
著者の小関さんは元旋盤工にして、作家。
そんな小関さんが、退職前の10年間に訪れた全国の町工場のルポ。
旋盤工という現場にいた方ならではの現場目線。

そこには、普段、人の目に触れることない、
ものすごい技術と多くの苦悩であふれています。


■ 目次
町工場巡礼の旅
(中国の町工場で、発想豊かなものづくり ほか)
大田区界隈・町工場・旋盤工
(町工場―絆が支える“一品料理”、旋盤工 ほか)
日本人の技
(職人の工夫と誇り、人びとの心を沸かすからくり人形 ほか)
旋盤工・作家の周辺
(ペンだこのない書き手、なぜか“美”の字 ほか)


■ 抜書き
技術は簡単に真似できても、技能は真似られない。
真似て育ってゆくものではあるが、
技能は人の手や知恵を通してしか育たないので、時間がかかる。

ドイツではマイスターの資格を得るためには、
自分の技を人に伝える能力があるかどうか問われると聞く。
日本の町工場の職人と呼ばれる人たちにも、
今それが問われている。


近所の職人さんたちの力を借りて作ったその機械は、
組み立てて最初のテストでピタリとミクロンの精度がでた。

百分の三ガタがあったら、百分の五や六になるのは
あっという間ですよ。

耐久性を考えないで、安く作ることが優先されています。
それは怖いことですよ。


同じものを大量に、しかも安く作るための技術を
バカにしてはいけない。

そこには高度な技術や技能がひそんでいないわけがない。
多くの人が当たり前に使っているものこそ、
実はすごい技術が詰まっていたりする。

廃業した町工場の中には、仲間うちから
「いい仕事をしていたのに、もったいないねぇ」
と惜しまれるような工場もたくさんあった。
いい仕事は必ずしも儲けにつながらなかった、
いやむしろ、いい仕事をしようとすればするほど、
儲からなくなった。
しかし、いい仕事をしなければ仕事は来ない。
これはすごく厳しい現実だと思う。

モノを作って暮らす人たちが軽んじられている。
私はこれまで数人の「現代の名工」からお話を伺った。
みなさん名誉なことですとはおっしゃるが、
あれは名誉だけのものだ。

現実問題。まったく収入には影響がない。
名工になったからといって、高い賃金が取れるわけではない。

ただ古いものを守るだけではない。
古いものが、その時代には先端をゆく新しいモノで
あったことを思えば
それは当然だろう。

技術というのはその時代に必要なものとして生まれる文化です。
今、私たちが持っている技術をものさしにして
高低をうんぬんしたら、
何も学ぶことはできない
伝統に固執するのもよくないが、新しいものに頼りすぎるのもよくない。
それぞれの、いい面をうまい具合に生かすことが必要。


■ まとめ
この本で取り上げられている工場は
どこの町にも一軒はあるであろう、
ごく一般的ないわゆる中小・零細企業です。

しかしながら、その技術力はものすごい。

しかし、しかし、
それが正当に評価されているか、
世間的に認知されているかというと、
まだまだ。。。


この手の、日本のものづくりの
技術や企業をルポ形式で書かれた本は色々ありますが、
本書の最大の特徴は、完全に現場視点で書かれているところ。

著者の小関さんが元々現場で旋盤をやっていた方ですから、
その現場のすごさ、雰囲気、つらさ。。。
よ~く伝わってきます。
また、取材相手も、そういう現場を知っている人だからこそ、
色々話をする気になるのかもしれません。


大学の先生などが書くような、
理論的な統計とかそういったものは一切ありません。
(もちろん、それはそれですごく必要なものですが)
そこにあるのは、理論よりも想い。。。

今の世の中、精神論は軽んじられるのかもしれませんが、
モノづくりにおいて、最後にモノをいうのは
気持ちではないかと思った次第です。


製造業の方はもちろんですが、
それ以外の方にも是非読んでいただきたい1冊です。

強い想いで、いいモノづくりを!!


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重い想いが必要です。。。
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