【古くて新しい蘭字の世界 ~輸出茶ラベル:清水港編~】 | 世界お茶まつり SNS広報チームのブログ

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こういったラベルを見たことがありますか
デザイン的にとても目をひきますよね
 
 
(画像提供 フェルケール博物館)

これは明治・大正時代に欧米に輸出されたお茶のラベル(輸出茶ラベル)で、
蘭字とも呼ばれています。
現存するものは少ないのですが、お茶の歴史デザイン史の観点でも注目を浴びています。

普段なかなか目にする機会が少ない蘭字ですが、
清水のフェルケール博物館で見ることができます

 

なぜ清水かというと・・・
静岡のお茶は江戸時代に生産が活発になり、全国に売り出されるようになっていました。

幕末(安政6年・1859)横浜港が開港船されると、茶は輸出され、
明治時代には生糸と並び輸出品の花形に。

当初は横浜港から輸出されていたため、
清水の商人たちは横浜に拠点を作って静岡茶の輸出にあたっていましたが、
有志たちで清水港を外国貿易に使用できる港(開港場)にする請願が始まり、
明治32年(1899)に開港場に指定されました。

実際に清水港からお茶の直輸出船が始まったのは明治39年(1906)
こうして静岡で茶の輸出の機運がさらに高まり、
ここからたくさんのお茶が世界に輸出されていくようになったのです。

 

展示されている蘭字ラベルの数々。
現代の私たちが見ても興味をひくデザインばかりですね
蘭字の「蘭」は中国語で西洋、「字」はラベルの意味だそうです。

エキゾチックさや、いかにも日本らしさを印象づけるデザインが多く見られます。
銘柄(ブランド名)、外国商館の名前、「特選品」などの売り文句が英語で記載されています。

同じ時期の欧米では、19世紀中ごろの万国博覧会をきっかけにジャポニズムブーム日本が広がり、
マイセンマイセンなどの磁器の窯元が日本風の絵付けをするなど、
日本風のデザインは大変人気だったそうです。


 
(画像提供 フェルケール博物館)

これらのラベルは木版多色刷り
制作には江戸時代からの印刷技術やシステム、
デザイン力を培っていた浮世絵職人絵筆が携わっていました。

品質・銘柄・商館名などの情報が分かるようにする目的や、
港の作業員が積荷を一目で判断できるようにするためなど、
貿易を行う外国商館がラベルを必要としたそうです。

茶輸出の中心地が静岡に移ると、新茶小松菜の時期の直前には全国の浮世絵職人がやってきて、
蘭字制作工場は大変にぎわったそう。

 

こちらは輸出用茶箱
木箱の内側をブリキなどの薄い金属板で覆って湿気対策をし、
外側は中国製の竹を編んだアンペラというむしろで包んだそうです。

蘭字には輸出元の名称等が入り取引内容が分かってしまうため、
日本国内ではさらに紙やアンペラで包むなどして隠され
一般人の目に触れることはほとんどなかったとか。

逆に欧米では積荷として降ろされる際にラベルは見えるようにされており、
また茶箱は大型なので、多くの人の目に留まり
折からのジャポニズムブームにのって人気が出たそうです

 

このようにアンペラに直接描かれているように見えるのは、
トレーシングペーパーのような薄い紙に描いて貼り、上からニスを塗った手法。

全体として、絵柄がメインのラベルは主に初期、
文字情報の多いものは後期のデザインに顕著だそうです。

フェルケール博物館の学芸員さんに伺ったところ、
第一次世界大戦(大正3~大正7年・1914~1918)でヨーロッパとの貿易ができなくなり、
続いて第二次世界大戦(昭和14~昭和20年・1939~1945)でアメリカとの貿易が途絶え、
茶の輸出が減少するとともに蘭字ラベルも使われなくなっていったそうです。

またその頃には近代的な印刷技術が始まっていたことも関係しているのでは、とのこと。


蘭字は、ほんの30~40年間に花開いて時代を駆け抜けたデザイン文化だったのですね




●特別展のお知らせ●

特別展「明治の海外輸出と港」

平成25年2月26日(火)~4月7日(日)
お茶の海外輸出に使われた茶箱のレッテル(蘭字)など明治初期のお茶輸出の状況と、
横浜港の生糸のレッテルや開港後の華やかな様子を紹介します。

午前9時30分~午後4時30分 (2月26日は10時30分開館)
月曜日休館

記念講演会① 『静岡のお茶と港』
 講師:中村羊一郎氏(静岡産業大学 特任教授)
平成25年2月26日(火) 11:00~12:00
定員50名(要申込み)
参加費無料(館内を見学する場合は入館料が必要です)

記念講演会② 『横浜港と生糸貿易』 講師:西川武臣氏(横浜開港資料館 副館長)
平成25年3月9日(土) 13:30~15:00
定員50名(要申込み)
参加費無料(館内を見学する場合は入館料が必要です)
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特別展ではフェルケール博物館所蔵の蘭字のほか、
外部からお借りしてきた蘭字も多数展示される予定です。
蘭字が集まる機会は貴重ですので、このチャンスにぜひ足をお運びください


フェルケール博物館は新東名からもアクセス可能、
近隣では清水のお茶久能の石垣いちごいちごも楽しめます!
→清水のお茶や石垣いちごなどのご紹介記事はこちら!



次は蘭字ラベル茶生産家とのかかわりをご紹介します。




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フェルケール博物館
http://www.suzuyo.co.jp/suzuyo/verkehr/index.html
静岡市清水区港町2-8-11
電話 054-352-8060
開館時間 9:30~16:30
休館日 月曜(但し祝祭日・振替休日の場合は開館)
入館料 大人400円・中高生300円・小学生200円
 ※毎週土曜日は小中学生無料
JR清水駅または静鉄新清水駅より、 静鉄バス「フェルケール博物館」下車 駐車場無料駐車場あり(大型バス不可)
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【記事作成 広報田渕】