167.手術記録 | 脂肪肉腫との戦い

脂肪肉腫との戦い

2015年8月14日に腹腔内の巨大脂肪肉腫の摘出手術を受けました。
その後、2016年9月、2017年11月、2019年9月、2020年9月、2021年6月、2021年10月、再発手術を受けました。
私にとってまさに戦いです。
これまでの経過を綴っています。

主治医から手術記録をいただきましたのど、いつもように紹介します。
今回は、イラスト入りで非常に分かりやすいです。
今回の手術は過去3回のどの手術よりも難易度が高く、特に後述の(2)の腫瘍はあまりに深く極めて危険な部位にあり(大動脈と下大静脈の間)、ここまでやる医師はほとんどいないのではないか、との説明が術前ありました。
この説明から主治医の頭の中には、手術のシミュレーションが完全に出来上がっていることが分かりました。
その難易度に反比例して記述は簡潔ですが、術者の正確なメス捌きがひしひしと伝わって来ます。
予後こうして安定しているのも、正確なオペの賜物であると思うと、術者に対する感謝の念に堪えません。
本当にありがとうございました。
(なお、引退された寺岡先生は体調不良につき今回は参加できないとのお話も術前にありました。)

《移植外科 手術記録》
手術日時:2019年9月20日9時53分~14時56分(5時間03分) 
診断名:後腹膜脂肪肉腫再発
術式:再発脂肪肉腫摘出術
麻酔:AOS+remifentanyl
麻酔医:曽我Dr. 石和Dr.
術者:矢嶋淳 大野烈士 白井博之 清水陽平 山本智輝
【手術所見】
(1)
上下腹部正中切開で腹腔内に到達。前腹壁にS条結腸の癒着軽度。大網の癒着がそれなりに。前回の横切開創への腸間の癒着が強く、視野確保のため前回創に準じて横切開も追加した。腸間同士は高度の癒着。可及的に剥離。S条結腸に異型の強い脂肪垂を認め再発脂肪肉腫と考えられたのでまず摘出した。


(2)
回盲部から上行結腸にかけて壁側腹膜と漿膜の間を切開しfusion fasciaの下層に入り、頭部に向かって腸間膜を受動し、IVC(下大静脈)とAorta(大動脈)前面を露出。右腎動脈の高さでIVC(下大静脈)とAorta(大動脈)の間に4cmほどの黄白色の腫瘍があり摘出した。


(3)
そのやや頭側でAorta(大動脈)左側に接し、起始部近くの空腸壁にめり込んでいる3cm大の腫瘍を可及的に摘出した。空腸壁の漿膜の欠損があり、4-0PDSⅡにてknot sutureし修復した。


(4)
さらにその背側で胃大弯に接する比較的やわらかい5cm大の黄色腫瘍があり胃壁ぎりぎりのところで摘出した。


(5)
術前CT画像には膵頭部の前面に2cm程度の腫瘍が疑われた。実際には腫瘍とは判断できない結節(しこり)が膵頭部にめり込むように存在し、核出(無傷で腫瘍を剥がすこと)は出血や膵液漏のリスクが極めて高く困難であり、体尾部切除後で頭部ごと摘出すると膵全摘となり侵襲が著しく高くなるため経過観察する方針とした。


(6)
創部の止血を確認後、温生食5000ccで洗浄。空腸壁修復部とダグラス窩に19Fr,JVACを留置。セプラフィルムを腸管前面に2枚しいた。
筋層を#1 vicryl knot suture,
皮下は3-1vicryl running suture.staplerにて閉創し手術を終了した。


以上