和歌山県 湯の口温泉・ポリバス温泉ほか | 落人の夜話

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城跡紀行家(自称)落人の
お城めぐりとご当地めぐり

赤木城のことを書いてて思い出しました。
紀州は古く万葉集の時代から存在する白浜温泉があるように、実は老舗の温泉国だったりします。

奥熊野、赤木城の近くには湯の口温泉という面白い温泉があってですね。
私、赤木城にのぼったとき同行した温泉マニアの友人(以下、温泉マン)に教えてもらったんです。

ここは何が面白いかというと、まず移動手段。
瀞流荘駅から湯の口温泉駅まで、トロッコ列車が走ってるんです。

 

なんだかちっちゃくてカワイイ造りの列車です。
この列車は昭和53年まで営業していた紀州鉱山が盛んだったころ、労働者たちをのせて走っていたんだそうです。コンパクトなのは坑道に入るためだったんですね。
動力はなんとバッテリー。トンネル内で排気をださないためなんでしょうね。
 

走り出すとすぐトンネルに入るんですが、夏は涼しい~
実際以上に疾走感がありますが、スピードはせいぜい20~30Kmくらいだと思います。
ゴトゴトゆらゆら。
これだけでもなんだか楽しい(´▽`)

 

湯の口温泉駅には10分もしないうちに到着します。
温泉施設も板張りで懐かしいにおい。
入浴後には老人が杖を忘れて帰るくらい元気になる、てことで「杖忘れの湯と言われてるんだとか。

セミの声がこだまする緑のなかで、古い木造施設の温泉につかる。
あー、確かにこれイイ。
城跡ハイクでむくんだ足だけでなく、身体中のいやな疲れが抜けるようです。
湯上りには売店で地元産の牛乳なんか買い、腰に手を当てて飲んだりしてみるとさらに旅情が高まります。


しかし、どの世界でもそうなんでしょうが、マニアと云われる人は定番・鉄板ネタでは満足しないんでしょうね。
温泉マンとは何度か和歌山県へ行きましたが、そのつど見つけてくる温泉がスゴイのです。
たとえば…


ビニールプール温泉です。
場所はどこだったかな…確か熊野川沿いのどこかだったような…

ちゃんとした温泉で、湯量もすごいです。
もともと近くにあった温泉施設が平成23年の台風被害で閉めてしまい、せっかく湧いてる温泉を惜しんだ近所の人がわざわざ管を通してビニールプールを置いたんだそうです。
脱衣スペース(?)には板らしきものも置いてくれている親切設計。
まあ、道路からはちょっと外れた山すそなんで、あまり人けはないもものの、誰が入るねん…
と思ってたら、温泉マンは迷わず脱衣開始してました。
なるほど、これがマニア魂なのですね。私の理解が浅かったです。
(※写真は本人の積極的許可を確認し、修正のうえ掲載しています)



こちらはポリバス温泉
郡司勇さんという温泉マニアの神様的存在の人が紹介したことで、知る人ぞ知る“野湯”だとか。

でもここ、人通りはほとんどない集落のはずれとはいえ、普通に道路脇の雨ざらしですよ。
しかもこのポリバス、狭さと深さと染み付いた色からして、相当の年代モノ。
誰が置いたんだよ、こんなの。いやさすがにこれは…

…入ってました。
片手には温度とphを計る簡易計。
「おお、ここの泉質スゴイ!鮮度の値が…」と体じゅうで喜んでおられるマニアの図です。

ここまでくると私も入ってみたいです。
イヤほんとに手をかけましたよ、ズボンのベルトに。

でも、やっぱりそれ以上の勇気が出ませんでした。城跡の藪を漕いで堀底に落ちる勇気は出ても、この勇気は出ない。
結局、手を浸けてパチャパチャしてみたりしてお茶をにごし、ああ、やっぱり私はただのミーハーな温泉好きであって、マニアの域には達していないのだ…

などと、しょーもない敗北感に打ちひしがれながら、目の前のちょっと信じられない光景を撮影しておりました。

という訳で、ややマニアックな紀州の魅力について、異世界の視点から。
つれづれの備忘までに…



訪れたところ
【湯の口温泉】 三重県熊野市紀和町湯ノ口10
【ビニールプール温泉】 不詳(熊野川沿い?)
【ポリバス温泉】 和歌山県串本町佐部
※湯の口温泉は正確には三重県ですが、旧「紀州」としてここに記載しました。