大神Blog -39ページ目

故郷

イナバと険悪なムードの神谷です(笑)。

僕も、公式ページに皆さんが寄せてくれているメッセージは、全て読ませて
頂いています。「大神」やスタッフへの応援の言葉は、本当に励みになります!
花坂さん、「神谷ディレクターのスキンヘッドにもキレイな花が咲きますように。」

僕もそう願っています。

さて、今回のテーマは「自然」! 「大神」のメインテーマとも言える話題ですが、
…まぁ、そんなに大それた事を語るつもりもありませんので、気楽にお付き合い下さい。

「大神」は、架空の世界を舞台にした物語ですが、和風の世界観と、和める雰囲気と、
緑豊かな大自然を再現することを何よりも大切にしています。なぜ このような題材を
選んだのか? それは僕が生まれてからの19年間を過ごした、信州での原体験が大きく
影響しているように思います。そこにちょっとクローズアップして、故郷の信州に
まつわる話をご紹介しましょう。

僕は今から34年前、長野県松本市に生まれ、高校を卒業するまでの19年間を、
そこで過ごしました。故郷というものは、誰にとっても特別な存在かも知れませんが、
松本は本当に美しいところです。…と言っても、それに気付いたのは進学して東京に
出てからの事でしたが…。

上京してからの都会の生活は、便利ではありましたが、どうも馴染めず、常に
居心地の悪さを感じていました。特に違和感があったのが、周りの「空気」。
起きている時も、寝ている時も、何か変だ…と言う「空気」が、常に付きまとって
いたのです。もちろん、環境が変わったので、身の回りの様子にも変化があるのは
当然です。しかし、どうにも説明のつかない妙な「空気」感が拭えず、そのためか
心にはいつも緊張感があって、リラックスして眠れる夜は一日もありませんでした。

何が変なのかに気付いたのは、大学での講義中でした。
ポケーと窓の外を眺めていた時、突如その理由に気付いたのです。
「あれ? 山がない…」

松本は、四方を日本アルプスに囲まれており、市内のどこから見渡しても、真っ白な
雪をかぶった三千メートル級の山々が泰然と並んでいます。どうやらこの光景が
僕の脳裏に焼き付いていたようで、大学の講堂から見えた、スカーッと遠くまで
続く街並みが、その違和感の源に気付かせてくれたのでした。

一度気付いてみると、故郷に住んでいた時には当たり前に存在し、気にも留めて
いなかった「空気」のような環境が、都会には全く無い事が分ってきました。

外を歩くと漂ってくる、草木や土の香り。
風に揺れた木の葉が立てるサラサラという音や、鳥のさえずり。
夜になると聞こえてくる虫の鳴き声や、田んぼのカエルの大合唱。
小川にキラキラと反射する、太陽の光。

家の中にいる時も、外を歩いている時も、起きている時も、寝ている時も…
普段の生活の中に溢れていた自然の「空気」が、都会に来た途端、全部無くなって
いました。先に挙げた「山」にしても、信州にいる時には、その形で無意識に方角を
理解していたのが、都会に出てからというもの、アテにするものがなくなって急に
方向オンチになり、都会生活の違和感を加速させていました。
無くなった事にさえ気付かないような、微かな存在。でも、それが心に与える影響は
大きかったようです。僕が気付いていなくても、体はその変化を敏感に感じ取り、
微妙なストレスを抱えていたのです。そして…これらに気付いてから、故郷を
思う気持ちが、一層大きく膨らみました。

しかし…その松本も、暫く離れているうちに開発が進み、次第に様変わりして
いきました。夏はカマキリを捕まえ、秋には稲架がけにした稲の下をくぐって
遊んだ近所の田んぼは、ほとんど何かの建物に変わりました。小川は涸れ、魚や
ホタルの姿も消えてしまいました。秋に家の軒下に干し柿を並べたり、冬に漬物用の
大根や野沢菜を洗う家もほとんど見られなくなりました。

僕は帰郷するたびに、子供の頃に過ごしたそのままの姿が、どんどん掻き消されて
いくのを見せられ、寂しさが募るばかりで、嗚呼 ここが僕の故郷だ…と胸に迫る
気持ちは、ほんの僅かになってしまいました。

今でも、何だか浦島太郎というか…僕の知ってる松本がなくなってしまったようで、
とても寂しく感じます。しかし、そうは言っても、まぶたの裏に思い返せばいつも
心に安らぎを与えてくれる、そんな故郷を持てた事は非常に幸せだと思います。

「大自然を舞台にしたゲームを作ろう!」と思い立ったのも、こんな経験が
あったからだと思います。ストレス漬けの社会生活の影響もあったかも?(笑)
…ともかく、人工的なものではなく、あるがままの自然の世界を、ゲームの中で
描いてみたくなったのです。

草木や土の香りまでそのまま伝える事は出来ませんが、自然が僕たちに与えてくれる、
計り知れないエネルギーのほんの一部でも、「大神」で表現出来たらと思っています。

う~ん、熱い思いを表現しようとしたのですが、まとまりのない文章になって
しまいました。スイマセン!!

pic26
写真:大神サウンドチーム!
手前がBGM、奥がSE(サウンドエフェクト)のスタッフ。
サウンド面の評判も上々で、仕事もノリにノッています。

春待ちの樹

ども。
稲葉です。

『春待ちの樹』ですが、当初の想定を遙かに超えるスピードで成長しております。
これも皆さんの期待値として嬉しく受けとめています。
でも、本当にもの凄い育ち方で…『樹』というよりも『竹』のような速度ですよね。
だって、当初は『植え替えする』なんて思っていなかったんですから…

皆さんが書いてくれてるコメントは、大神の制作スタッフみなが一覧で
見れるようになってます。
みんな、くじけそうになる心の支えとしてコメントを見ていたりしてる
ようです。
そんなたくさんのコメントの中から、一部をご紹介してみたいと思います。


Loki さん:5本目♪ ひと月たっちゃったわけですね
                       お花の増えるペースも速くなってる気が・・・」
MIKE-D さん:二本目~。ここ最近の花の増え方尋常じゃないっすね!!」
den子 さん:凄い勢いで樹が育っていきますね!
                     春までには、もっともっと増えるんだろなぁ★★」

 いやあ、マジでこっちがビックリですよ。
 こうなったら、どこまで樹が増えてゆくのか、僕も楽しみに見守って
 いきたいと思ってます。

レスリー さん:稲葉さん、神谷さん、忙しいのに毎日ブログを
                 更新してくれて感謝です。本当に楽しみにしています。」
キース さん:プログ最高です(笑)熱い作品はHOTな関係から生まれるのですね!
しゃおたお さん:ブログすごく面白いです。
                     険悪なムードになってきたのが気になりますが。」

 ブログへの応援コメントは他にもたくさんあって…みなさん読んでくれてるんだなあ、
 と嬉しく思っております。しかし!別に険悪なムードにはなってませんよ(笑)
 お互いのシャレの範囲ですので、ご心配なく。

如月ゆうな(ついに6本目) さん:前々回書こうとした事は、
    "あと何本育てれば発売されるかな~?"です^^ コピペで打っております;;」

 6本も育てるとは、凄いですよね。他に何人か『6本目!』という方がいました。
 ちなみに、僕はまだ2本目です。(「イナバ」という名前では植えてませんよ~)

草葉 さん:多少難易度高くても頑張るけど、
     やっぱり「楽しさ」でぐいぐい引っ張ってってほしい。がんばってください!」

 そこは、大丈夫です。楽しいゲームになってますので、安心して待ってて下さい!

姉 さん:昨日彼氏と別れました… でも大神の発売が楽しみなので元気を出します」

 このコメント、あまりの生々しさで輝いてました。
 大神で、癒される!…はずですよ。大丈夫っす。うんうん…

まちゃ さん:言っていただければ、体験版の梱包作業をお手伝い致します!…
                         すみません、早く遊びたいだけです(笑)」

 そのお気持ち、嬉しいです。
 本当に梱包作業は大変なことになりそうです。神谷のブログにもありましたが、
 余裕人員のない零細企業ですから、皆(主に新人スタッフ達!)で頑張ることに
 なっております。

御倉板拳 さん:どんな時も、このサイトに来ると優しい気持ちになれる・・・ 
                     天照大御神は偉大です。信者になりそう(笑)」

 そういう気持ちになってもらえるのを目指して作っていますので、嬉しいです。
 ちなみに、サイト全体の雰囲気にはHP制作担当者の性格がかなり反映されてる
 かもしれません。癒し系スタッフ(通称:マーくん♂)です。

天 さん:そろそろ本格的に寒くなってきましたが、
           スタッフの方々、お身体には気を付けて頑張って下さいね!」

 お察しの通り、風邪を引くスタッフが増えてきてます。
 ただでさえ長丁場の開発で体が弱ってますからねー。

レイレイ弐 さん:「筆しらべ」最初ヘボくさかったんですが
                     今ではキレイな丸が描けるようになりましたv

 そう。そういうもんです。慣れれば自由自在に筆が動かせます
 しかも、慣れるまでそんなに時間はいりません。
 (神谷が描く『円』は凄いですよ。ホントの真円を描くんです…)
 
ムラサキ さん:体験版にバグ発見!!台詞に脱字がぁ!!!!」

 えー。是非お知らせ下さい。こちらまで(webmaster@cloverstudio.co.jp)

もの さん:今度は赤い花週間。花もそれぞれ咲き方に違いがあって
                  成長を見るのが楽しみ。好きだなあこういうところ」

 クソ忙しいデザインチームに無理言って描いてもらった甲斐がありました。
 時間無いのに、こういう所はウチのスタッフ面白く作るんですよねー。

ぷにゃも(カイム) さん:「大神」の講演ですか聞きたいです~!
                    神木村ライフの更新お待ち申しております。」
マキ さん:5本目!神木村ライフの更新が先なのは
                     残念ですが韓国出張頑張ってください!」

 …す、すいません。『神木村ライフ』頑張って書きます!
 今日これから書きます!

kaiyose さん:ゲームを買ったときにまっさらな知識でいたいけど
           体験版が来る今、ガマンできる気がしない!うわー楽しみ」

 これ、難しいとこですよね。なるべく楽しみはとっておきたいけど、気になる…
 気持ちはわかります。実はこちら側としてもあんまり情報は出したくないのですが、
 そうも言ってられないので、ボチボチと出しております。
 でもまあ、ご安心下さい。
 今出てる情報(体験版も含めて)は、『大神』世界のほんのサワリにしか
 すぎません。その先に溢れる世界を存分に楽しむために、
 ちょこっと知っておいても損はしませんよ!

こぶ さん:ミカン爺のナマ足にちょこっとドキドキします。
                              ということで、5本目です~。

 ずいぶんマニアックなツボをお持ちのようで…
 これ読んだときちょっと笑っちゃいました。

hiro2 さん:完成楽しみにしています!
           神道に興味が湧いてきて、マイ神棚買っちゃいました(笑)」

 興味を持ってもらえるのは良いことです。
 神棚に、アマテラスの絵を印刷して飾っておいて下さい!

吏庵 さん:2本目です。是非サントラ出して下さい!!
                         お願いします!音楽綺麗なので。」

 音楽…良いですよね。
 ゲームでもトレーラーでも、この世界を作る大きな力になっています。
 サントラは、出したいですねー。

 本当は全部にコメント返してゆきたいのですが、一部だけになってしまいゴメンなさい。
 ちなみに照れくさいのでご紹介はしませんが、自分宛へのコメントもちゃんと読んでます。
 励みにしてます!

 pic25
 さて、今日は久しぶりに写真を。
 とある会食で鍋を食べてるときに、思わず目に入った卓上ガスボンベ。
 ネーミングセンスが絶妙!このセンスの悪さに思わず笑っちゃいました。
 では、また!

KGC2005・講演

ども。
稲葉です。

いま、韓国のKGC2005会場でこのブログ書いてます。
火曜日からこのブログ、「難易度リレー日記」みたいになってますね。
まるで神谷と文通してるような状態なので、ちょっと妙な感じです(笑)

水曜日に僕がアップした原稿は、書いた後に読み返す時間が全く無く…
要点だけを書いた上に誤字なんかもあったりして、かなり見苦しい原稿でした。
実は、その日の深夜にチョコチョコと書き直したりしてたので、
もっかい読んでもらえたりすると嬉しいです。
まあ、内容は全く同じなのですが。

さて。
昨日はKGC2005に参加して講演を行ったのですが、
今回は日記っぽく、昨日の行動を振り返ってみたいと思います。

 5:30 起床。
      前日に出張準備を全くしてなかったので、すごくあわてる。
      バタバタと準備を済ませる。まあ1泊だし。

 6:30 自宅を出る…直前にパスポートを持ってないことに気づく。あぶねー。
      どうも韓国のような近場に行くときには緊張感が欠けてしまう。
      東京出張のような気分になっていたので、危ないとこだった。

 7:00 高速バスにて関西国際空港へ。なんでこんなクソ不便なところに
      空港を作るんだろうか?関空に行くときには毎回毒づく。
      大阪府の行政感覚は凡人には計り知れない。
      まあ、成田空港に行くよりはるかにマシなんだけれども…

 8:30 空港着。フライトは9:30の予定。
      出国に結構手間取り、飛行機に乗ったのはギリギリの時間だった。

11:30 ソウル空港着。こっちも混んでる!入国審査の人がトロいのか、
      並んでるオバチャンがわけのわからんことを言ってるのか、
      全く入国審査が進まない。自分の後ろを振り返ると大行列!
      ドーム会場でのコンサート入場待ちみたいになっている。

13:00 結局、入国に1時間以上かかってしまう。
      もう時間もあまり無いので、会場近くでお昼ゴハンを食べながら
      打ち合わせをすることに。

14:00 ランチタイム。プルコギを食べに行く。
      コチュジャンに漬け込まれた豚肉が次々と焼かれていく。
      お腹が破れるくらい食べる。
      美味しい。美味しいんだけど、このすぐ後に講演なんだよね…
      しかも全員がニンニクくさくなっている。
      …いいのかな?
      …ホントに講演するんだよね?
      そんなことを考えてしまう。
      血液が胃に集中しているため、全く頭が回転しない。
      講演の細部が思いつかず、ちょっと焦る。

15:00 会場へ移動。そのまま打ち合わせとリハーサル…のはずが、
      前の講演が押していて何も出来ない。
      かなりイヤな予感。
      まあ、どんなイベント関係でもスムーズに行った試しは無い。

15:40 講演開始時間を10分過ぎて、やっと会場へ。
      リハーサルも何もかもすっとばして開始しようとするスタッフを制止し、
      映像と音響の確認をリクエスト。聴衆はもう入っているが、やむをえない。
      しかし、驚くことに音響の準備は全くなされていなかった。
      連絡ミスなのか現場スタッフの甘さなのか…
      DVD再生をPCで行うのはまあ良いとしても、音声については全く
      意識が無いようだ。
      しかも、スタッフの表情に焦りの色は全くない。何も出来ていないのに。


      このときの僕の表情は明らかに怒っていたと思う。

      当たり前だ。このとき僕は
      「この机を蹴り倒して帰ろうか…」
      という衝動を残り少ない理性で必死に抑えていたのだから。
      
      しかし、今回の旅をコーディネートしてくれた人や、
      わざわざ聞きに来てくれた人々の顔を見て、ギリギリで思いとどまる。
      笑顔を作ろう。

      こういう時の切り替えは、我ながら早い。
      講演モードに切り替えて、スタートする。

      今回の講演は、いままでに作られた「大神」の映像を振り返りながら
      ゲーム制作の過程について話をするというテーマにした。
      使用する映像は内部のプレゼンテーション用に制作されたものや、
      企画初期段階のものもあり、全てを外部に見せたのは今回が始めてだと思う。

      講演は同時通訳で行われる。
      同時通訳の場合、タイムラグと翻訳のニュアンスを探るために
      ごく前半に笑いを取れるような話を2・3回挟み込む。
      聴衆の笑い声のタイミングと、その大きさで通訳の精度がある程度わかるので、
      その後のしゃべり方やペース配分をつかむことができる。

      今回はラグなしに反応を得たので、精度の高さに安心。
      あとはがんばって喋るだけ。

      喋りながら、「大神」制作最初期のことやクローバースタジオ設立発表に
      向けての思いなどが蘇ってくる。
      講演の基本的な流れは「CEDEC2004」「GDC2004」の時と同じだが、
      対象を「大神」に絞っているのが大きな違い。
      ひとつのタイトルを立ち上げて、明かりが見えるまでどうやって
      進むのかということを、かなり細部にいたるまで話す。

      しょせん、今回のお話はひとつのケースにしかすぎない。
      「教えてあげてる、というような偉そうなつもりは全く無い」
      と講演の中でも話したが、サンプルケースを聞く機会として捉えてもらえれば
      良いし、このような機会は今後ももっと活用したいと思う。
      いろんなケーススタディがあれば、後に続く人が頑張りやすくなるかも
      しれないから、と思っている。

17:00 講演終了。写真のリクエストが続き、なかなか開放されない。
      写真で笑顔を作るのはものすごーく苦手。というか無理。
      どんな写真でも、かなり仏頂面で写ってしまう。写真そのものも嫌いだし。

18:00 業界人やゲストが参加するレセプションパーティに参加。
      立食を想像していたが、まるで披露宴のようなキッチリしたスタイルでビックリ。
      韓国のパーティではこれがスタンダードだと聞かされる。
      アメリカスタイルのパーティに慣らされすぎたかな?

21:00 パーティ退席。今回コーディネートしてくれた方々が
      さらに席を設けてくれるというので、移動。
      ホテルにチェックインしてから、改めて別の店に飲みにいく。
      韓国・日本・中国の人が集まった場での公用語は英語になる。
      見渡せば全員アジア人なのに、みなで英語を使ってコミュニケーション
      してる光景というのも変な感じだ。

 0:00 解散。ホテルに戻ってベッドに倒れこむ。
      なんだか慌しかったなあ…

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 いろんな人と触れ合えるのは、やっぱり良いことですよね。
 今回は、講演のために訪韓したわけですが、それだけでは終わらずに
 いろんな所でいろんなビジネスをしている人たちや、すげー面白そうなことを考えて、
 その実現に向けて頑張ってる人たちに会えたことがすごく収穫でしたね。
 出不精になってはいかん…と改めて思いましたよ。
 海外出張は、止める人も多いのです。
 講演を行ったりすると、やっかみも激しい。
 まあ、気にせず頑張ります!
 
 もうすぐ帰途に着くために、空港に向かいます。
 では、また来週!


難易度設定

えー、指を詰めたら、リアルな極道キャラになってしまうので、
それだけはなんとしても避けたいスキンヘッド神谷です。

難易度設定についてですが…イナバの言う通り、これは非常にホットな話題です(笑)。
作り手側の視点だと、話の進め方も、謎の解き方も、敵の倒し方も、すべて知り尽くして
いますから、「遊びやすく、親切設計のゲームにするぞ!」と意気込んでみても、実際
初めてプレーに臨む人がどんなふうに迷ったり悩んだりするのかを想像し、それに対して
どういう対処を施すのが一番親切か、その答えを出すのは非常に難しいものです。

特に戦闘と違って、謎解きのヒントとなると… 情報が与えられ過ぎたら、考える
楽しみがなくなる。情報が少な過ぎたら、分からない。そしてピンと来るか来ないかにも、
少なからず個人差もある…。こればかりはテクニックが絡む問題ではないので、どこを
基準にすればよいか、そのサジ加減が悩みどころなのです。でも、そこが自然な手応えに
調整されていれば、それこそプレーの快感度は跳ね上がるんですよね。

「名作」と呼ばれる作品の多くは、そんな見事な調整がなされているのですから、
「大神」もそれらを見習って、クリアした後に心地よい爽快感が残るような作品に
しようと、知恵を絞っています。

…という矢先の、昨日の出来事。クローバーでローカライズを担当しているマエダに
「大神」の最新ロムをプレーしてもらっているのですが… さっそく「ハマリポイント」
が発覚しました。彼女はあまりゲーム慣れしていないので、「大神」では、その意見が
非常に参考になります。そう言えば「ビューティフルジョー」の時にも、ある女性社員に
「ドアの開け方が分からない」と言われ、
そんなモン、パンチすれば開くだろーがよ!!
血管がピクピクしたのですが、「大神」ではそうも行きません…
(結局「ジョー」の時もドアに触れたら自動で開くよう修正しました)。

というワケで、マエダがハマった場所を聞き取り調査し、対応策を検討。…対応策と
言っても、人がハマったからと言って、じゃあ答えを教えます…では、ゲームの
クオリティを著しくおとしめます。前にイナバも書いた通り、
「クリアする気持ちになってもらえるように作る」ところに我々の仕事がありますから、
プレーする側の楽しみを奪わないよう、ヒントの出し方を考えて見ました。
今回のケースでは、マエダのハマリのお陰で、我々製作者側が充分なヒントを
出したつもりでいて、実はプレーヤーにとっては不親切になっていた部分が
浮き彫りになり、対処を入れることによって快適さがアップしたと思います。

ネット上で「大神」への意見を探ってみると、「ゆったりした気持ちでプレーしたい」
と思っている方が多いようですが、その辺は、僕らも同じ気持ちです。「大神」の
ジャンル名「ネイチャーアドベンチャー」に“アクション”という言葉を使わなかった
のも、その気持ちの表れ。これまでの作品では「アクションはこうだ!!」という
強引な調整をして来ましたが、今回は「楽しさってのはこうだ!」というメッセージを、
調整に込めたいと思っています。

テストプレーしてもらうのは嬉しいのですが、最初にプレーした時の印象というのは、
そのテストプレーヤー一人につき、たったの一回だけ。だから初回プレーの意見は、
非常に貴重です。でもイナバをはじめ、こうして多くの初心プレーヤーが
意見を提供してくれるので、これらを参考に、絶妙な調整を実現してみせます!

pic24
写真:カメラを向けたら、サンダルからパンプスに履き替えたマエダ。
その後ろには女帝が… これからも協力ヨロシクです。

挑戦状?

ども。
稲葉です。

昨日は社内でブログ見れなかったんで、会社出た後に携帯使って読んでました。
前半部分を読み終わったところで、会社に戻って神谷を呼び出そうかと思いましたよ。

ブログの場を借りてプロデューサーに
     ケンカ売ってるのか?と思いましたから(笑)

…まあ、後半部分に差し掛かったところで「単なる前フリ」だったとわかったのですが、
どうも難易度の話に対しては過敏に反応してしまいます。


「大神」の難易度については、開発最初期の段階から話題に上っていたテーマで、

「多分に主観的な感覚の話である」せいで、なかなか結論の出ない話でもあります。


この辺りが非常に難しいところで、自分を1ユーザーの立場として論じることに

全く意味がなく、互いに「ディレクターとして」「プロデューサーとして」の矜持を賭けた

感覚のぶつけ合いになるのです。


僕自身、このゲームをプロデュースするにあたって「大神」が

”コントローラーを握る手が緊張の汗で
びっしょりになるようなオールドアクションのスタイル”や
”熟練のテクニックを使わなければ先に進めないようなゲーム”
になってしまうことに対してすごい危機感をもっており、その危機感からか…

神谷に対しては、しつこいくらいに難易度の話をしてきました。

これについては、神谷の「大神」に対する考えと凄くズレているわけではないのですが、
さっきも書いたとおり…「多分に主観的な話」なのです。

神谷にしてみれば

「何回も何回も同じ事言いやがってうるせーなー。
               やるっつってんだろーが!」


的な思いもあったかもしれません。

でも、「癒し」「美しい情景」という要素に惹かれて「大神」を購入した人達が、

この美しい世界を楽しむ以前に「ゲーム的なハードルの高さ」に負けて挫折してしまう…

という事態だけは絶対に避けたいのです。

まあ、僕が作ってるわけではないので…

「難易度を含むゲームパッケージの最終仕上がり」

については、ディレクターの手に委ねられることではあります。

だからこそ、何度も何度もディレクターを筆頭にチームに話をしてきました。


とはいえ、アクションゲーム職人として今まで生きてきたクローバーのスタッフ達ですので
なかなか自分自身の感覚を調整してゆくのは難しい部分があります。

あたりまえの話なのですが、作ってる方はどんどんゲームに慣れてしまうわけです。

何が簡単で何が難しいのか?

という、「感覚のニュートラルポジション」を保ちつづけるのは結構タイヘンなのです。
なので、気が抜けません。

現在でも、「難易度」については僕と神谷の間ではホットなテーマです。
たぶん…最後の最後の最後まで熱々のホットなままでしょう。


まあ、いいんです。
「僕だって、作ろうと思えばほのぼの和み系のゲームだって作れる!!(ハズ) 」
と本人も言ってることですし。

…今度約束を破ったら指詰めてもらいますから。


ね?