裸のニューヨーク

ユー・ドント・ノウ・ニューヨーク・ザ・ウェイ・アイ・ドゥ...これは私のアンビバレントでパーソナルなニューヨーク・ストーリー。


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ワシントンDCのユニオン駅を出ると、寒風が吹き抜ける夜の閑散とした通りのベンチに、若いアジア系の男性が2人、肩をすくめ、パンツのポケットに手を入れて腰掛けてけていた。

「ジャパニーズ?」

つい声をかけてみた。旅空でアジア系の人に「ジャパニーズ?」と聞くと日本人ならにっこりするが、中国人や韓国人だとあまりいい顔をしない。だからジャパニーズ?となるべく聞かないようにしているのだが、渋谷にぴったりはまりそうなヒップホップ系の男の子なのでおそらく日本人だろうと思ったのだ。

なぜか英語でイエスと答えたジュン君とケイスケ君はR&B歌手を目指している21才の若者で、3ヶ月間ブルックリンに滞在中で、そこから通称チャイナバスでやって来たと言った。帰りのバスまで時間があるという。ではどこかに飲みに行きましょうという話になった。こういう時、日本人同士は話が早い。

ハリントンホテルという安ホテルにチェックインした後、見知らぬ街を3人でうろうろした。日曜日の午後9時近くではクラブも閉まっていて、近場のパブに入った。ここで問題が発生した。彼らはぎりぎり飲酒の出来る年齢だが、いかにも若い。ちょっと見には17才ぐらいに見える。ケイスケ君がパスポートを持っていなかったのでバーから顔が見えないように後ろ向きに座らせ、ジュン君のパスポートだけを見せて、もう1人も同じ年齢よだと厳しそうな
顔つきのバーメイドに言ったのだが、やはりビールも出してくれなかった。
しかも飲み物を外に持ち出す事もできない。この厳しさにはびっくりした。居酒屋で中学生にも酒を出す日本がゆるすぎなのかもしれない。


日本食に飢えているというので、では2日後の12月15日が私のNY滞在最後の日だからブルックリンのアパートでそうめんを作ってあげる、残ったお味噌や熱海から持ってきた梅干、海苔、色々あるからそれをあげると言ったら喜んで、当日7時に来るという約束をして別れた。電話帳をホテルに置いて来たのを悔やんだが、当日必ず来てくれると確信してワシントンDCに2日滞在し、フィラデルフィアに寄って15日にNYに向かった。

ところが帰りの電車の中で、大好きなケヴィン・スペイシーがその日8時からタイムワーナーセンターのローズシアター(註)に出るという情報を雑誌で見つけた。そうなると彼らとの約束が守れなくなる。私はどうしたものかと頭を悩ました。彼らに電話をしようにも電話がない。日本ではおそらく携帯を使いまくっている2人も、海外の携帯電話のレンタル料は高いから持っていない。幸い私は川畑さんという方がやっている会社から電話料のみという携帯を借りて1カ月間15ドルほどで済んで大助かりだったが。

この日の私は大忙しだった。ローズシアターまで行ってチケットを買い、NY滞在最後の日の雑用を済ましていったんブルックリンまで戻り、海苔その他の食品をまとめて黒いビニール袋に入れ、彼らにメモを書き、7時まで待った。この時点で彼らがやって来るのか来ないのか、私の中では来るが70%、来ないが30%。若い男性2人が中年の私との約束を守って寒い中、地下鉄代を往復4ドルも使ってやって来てくれるのかどうか、100%の確信は揺らいでいた。

が、来てくれた場合に備えて食品だけは渡してあげたい。問題は、私の滞在先がアパートではなくCO-OPなので不審者には厳しい。でたらめに住人のベルを鳴らしても開けてくれないだろう。彼らは英語が不自由そうだったから、状況説明もままならないだろう。すると食品はドアの中には入れておけない。
かといって外だと住民に捨てられてしまう可能性がある。悩んだ末、玄関の脇の植え込みの中に置いておきます、とメモを残し、マンハッタンに急いだ。

ショーは楽しくて最後の夜になってようやく少しは旅の質が上がったと喜んだ。そして11時過ぎ、家に戻るとビニール袋がなかったので、念の為地下室のゴミ箱を調べても捨てられていなかったのでああ良かった、来てピックアップしてくれたんだなあと安心して帰国した。

ところが、帰国して、さっそくジュン君からもらったメールアドレスにメールをしたら戻ってくる。少しずつアドレスを変えてもダメ。そう考えたくはなかったが、ないアドレスを教えたのかなあと考え始め、ビニール袋もやはり住民に捨てられてしまったのだと考えざるを得なかった。大した物ではないけれど味噌にしても高い長崎の麦味噌で、海苔 もまるまる一パックあったし、翌日荷物をピックアップに来てくれた川畑さんにあげれば喜んだかな、とふと考えたりした。

帰国して時差も取れた頃、一通のメールが届いた。それにはこうあった。

「メール遅れちゃってごめんなさい!あの、ニューヨークであったジュンとケイスケです!日本食本当にありがとうございます!あのとき、多分ちょうど行き違いみたいな感じになったみたいです!すみませんでした!ご無事に日本に着きましたか??体、気をつけて下さいね!日本食本当にありがとうございました!」

もらったメールアドレスにはちょっと抜けた部分があっただけだった。

(註)「フレデリック・P・ローズ・ホール」タイム・ワーナー・センターに完成したジャズ専門ホール。10月18日にオープンしたばかりだった。


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