AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――


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「道徳再武装運動(MRA=Moral Re-Armament)」については、創始者である米国人牧師フランク・ブックマン(1878年~1961年)及びその有能なスポークスマンであった劇作家でジャーナリストのピーター・ハワード(1908年~1965年)の著作を読むことで大体のことは理解できる。それらによると、共産主義との闘いにおいて“民主主義のためのイデオロギー”を提供するのが「道徳再武装運動(MRA)」であり、目的は二つある。第一は、神(キリスト)を国家生活の主導力として復元すること。第二は真に健全な国民生活を打ち立てることである。
 
第一の目的の達成のために、あらゆる人間関係、所有物、計画を人間以上の意思の支配下に置くこと、すなわち、家庭、仕事、金、時間、精力等について自分の最後の決定権を放棄し、神霊に委ねることが求められる。
第二の目的の実現のためには、個人的にも国家的にも、正直・純潔・無私・愛を「絶対」的なものにすることが重要であり、この「4つの絶対」で心を武装して闘う人たちを増やせば、何ものにも負けない強靱な勢力を社会にもたらすことができるとする。そして、そのために、「道徳再武装運動(MRA)」は、テレビ、映画、演劇、音楽などあらゆるメディアを使って、世界中のすべての人の心と家庭に入り込まねばならず、同時に、政治家にも、一般人にも、人間を改造(チェンジ)する技術の習得が求められるとする。フランク・ブックマンは、その著作「世界を再造する」の中で次のように主張する。
「現在、我々は利己主義に対し史上最大の世界戦争を戦っているのです。全員銃をとれ! (中略) 我々は世界を再造しなければなりません。男も、女も、子どももこのために動員され、すべての家庭はこのための城砦でなければなりません。 (中略) 今こそ、利己主義に制する世界戦争のための戦士を募る好機であります。我々は不断の戦士でなければなりません。」
 
ここでブックマンのいう「利己主義」とは、一般的な意味合いより、むしろ、彼らが「人間性の悪玉(猜疑心、不信感、憎悪)を革命の手段として利用している」として徹底的に敵視した共産主義を指していることに留意する必要がある。それは、MRAが1959年に発行したパンフレット「イデオロギーと共存」の冒頭で「アメリカにとっての選択は、MRAか共産主義かだ」と強調していること、また、1965年5月31日の日本経済新聞に掲載されたMRAの全面広告「新しい学生運動の提唱」の中で共産主義を利己主義と位置付けて批判していることからも明らかである。そして、彼らは、コミュニストや労働運動の活動家の心を改変(チェンジ)し、国家や資本と協調してやっていける従順な人間に仕立て上げ、労働の現場では労使協調路線の名の下の御用組合化、国民生活においては権力への反抗心をスポイルし「融合」という名の超保守化を推し進めた。つまり、MRAは、アメリカを中心とする現体制を改変(チェンジ)させないために、社会的公正や改良を求める人々の心を改変(チェンジ)し、有産階級や支配層にとって危険な芽を早期に摘み取る“防衛装置”として機能したのだ。
 
もう一つ指摘しておかねばならないことがある。それはMRAが教義的に保持している同性愛者に対する差別と偏見に満ちた極めてレイシスティックなアティテュードである。ブックマン曰く「同性愛は罪」であり、「罪は憎み、処理されなければならない」もので、「神のみがそれを癒す力を持っている」。さらに、これはハワードの言葉だが、「いまや同性愛常習者は、厚顔にも自分達の方が、より有能で、知的で、しかも自然であるという説を社会に押し付けるようになった。何百万の人がこれにごまかされている。昨日までは変質者と見られたものも、今日では正常だと思われるに至っているわけだ」。そして、このような“罪”を過小に扱ってはならず、最大限に強調すべきであり、チェンジし、融合し、戦うことが必要と訴える。何と凄まじいヘイトスピーチであることか。
 
この「道徳再武装運動(MRA)」を日本で推進したのが、自民党の岸信介、千葉三郎、福田赳夫、社会党の加藤シヅエ、日銀総裁の渋沢敬三、日本国有鉄道総裁の十河信二、このほか、石川一郎(日産化学工業社長、経団連初代会長)、石坂泰三(東芝社長、第2代経団連会長)、土光敏夫(石川島播磨重工業社長、東芝社長、第4代経団連会長)、本田親男(毎日新聞社長)等の錚々たるセレブの名を挙げることができる。中でも岸信介は1961年にブックマンをノーベル平和賞に推薦した際に「我々が今最も必要としているのは、攻勢に出て、MRAのイデオロギーを我が政府、我が国民の政策にすることである」と諸手を挙げて礼賛し、その反共イデオロギーに深く共鳴していた様子が伺える。
 
さて、前振りにしては話が長くなりすぎた。このままでは本題のフォーク・ソングに辿りつかない。ただ、「道徳再武装運動(MRA)」が、清廉な道徳運動の類ではなく、政治と宗教が密接に融合し、支配層の防衛装置として人々に洗脳を施していたカルト的な運動体であることを理解しておかないと、この後の話の危うさも理解することはできないのだ。

 

MRAが、ブックマンの“教義”を「世界中のすべての人の心と家庭に入り込ませる」ために利用したのが、当時、若者達を魅了していたフォーク・ソングであった。それは、1960年代半ばにバンジョーの明るく軽快な音色と共にやってきた。シングアウト、そして「Up With People」である。(つづく)


参考文献
・世界を再造する(フランク・ND・ブックマン著)
・フランク・ブックマンの秘訣(ピーター・ハワード著)
・人間の改造(ポールキャンベル、ピーター・ハワード著)
・消えゆく島(ピーター・ハワード著)
・「虎(タイガー)」世界をゆく(相馬不二子著)

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