FOTHERINGAY 2 | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

FOTHERINGAY 2 「<マティ・グローヴズ>をこれ以上歌うのなら死んだ方がマシ」と言って、フェアポート・コンヴェンションを脱退したサンディ・デニーにとって、トラッドは決して絶対的な存在ではなく、あくまでも己の表現手段の一つにすぎなかったのだ、と思う。

 

そのサンディが、恋人であり、後に夫となるトレヴァー・ルーカスと結成したフォザリンゲイは、1970年夏に大傑作アルバム「FOTHERINGAY」を発表するも、同年暮れには早くも解散。このあたりのストーリーは、英国フォーク・ロックファンなら誰もが知っていることだろうから、あえてぼくが辿り直すこともなかろう。ぼくが書きたいのは、今秋、38年ぶりに“発掘”された彼らの幻のセカンド・アルバムのことだ。

 

このアルバムが実に良いのだ。しかも聴くたびに良くなってくるのだから嬉しくなる。かつては苦手だったトレヴァー・ルーカスの一本調子で朴訥としたヴォーカルも、今ではすっかり耳に馴染んで滋味深く聴くことができるようになった。これもまた、今回の大きな収穫かも。

 

ファーストが奇跡的な名盤なものだから、それに「勝るとも劣らぬ」と書けば誇張しすぎになってしまうかもしれない。しかし、「魅惑的な」とか「ほれぼれする」という表現を使っても嘘にはならないだろう。このアルバムを少なくとも百回は繰り返し聴いたぼくが言うのだから間違いない。英国の少女が夢見た亜米利加の風景は、やはりどこか湿っぽい土埃が吹いていて、そこが堪らなく愛おしいのだ。