抗HIV薬を手に入れる苦闘と、カナダの偽薬業界
東京で20代の頃にHIVに感染して、薬を飲み続けてもう10年が経ちます。昔の抗HIV薬は副作用が激しくて、ある日起きたら身体中の液体が全部ベッドに出てきてたみたいな怖い話も聞いたことがあるけれど、僕の摂取している薬は副作用もなければ毎朝一錠飲むだけで、サプリ感覚で毎日飲んでます。HIVウイルスの数値はUndetectable (検知不可) レベルを維持しているので、たとえコンドームなしで100万回セックスしたとしても相手にHIVが感染することはありません。自分の体調も見た目も特にHIVネガティブの人と変わりはなく、3カ月に一回医師に会って血液検査をしたり、毎日薬を飲むこと以外は大した生活の違いはありません。しかし、常に気を付けなければいけないのが、薬の値段です。抗HIV薬はGilead という製薬会社が製造していて独占状態みたいなことになっているのですが、薬の原価がとにかく高いです。日本は健康保険だけでなく自立支援というHIV薬を負担してくれる制度があったりするので自己負担は高くないのですが、それでも政府には大きな負担がかかります。アメリカではどうでしょう?国民皆保険や自立支援などはないのですが、ADAPという政府のHIV+支援プログラムがあります。またGilead社がAdvanced Programというプログラムをやっているので、病院を通して申請して通れば自己負担金額は非常に少なくなります。民間の保険もありますが、薬代が高すぎてあまり役に立ちません。たとえばですが、僕が夫の勤務先を通して加入した民間の健康保険では薬の原価が月3,500ドル程度なのに対して、500ドルしか負担してくれません。月3000ドルが自己負担です。民間の健康保険は、営利なので当然、薬代を負担しすぎると損をしてしまいますね。たまに風邪ひいたときに必要な薬代とかであれば全く問題ないのですが、毎月3500ドルとかになると役に立ちません。さて、2023年の確定申告が最近終わり、我が家の去年の収入額が確定しました。アメリカのIT企業に私が一昨年転職したせいで、年収が2倍近く増えました。世帯収入高い。いや、正確にいうとニューヨークシティでは別に割と普通の収入額なのですが(世帯年収2000万円とかが普通です)、アメリカのFederalレベルだと普通に高収入です。NYCとモンタナ州のド田舎を同じレベルで見ている基準なので、当然といえば当然ですね。ここで大問題が発生しました。ADAP, Advanced Programなど、すべてのHIVプログラムには収入による制限があり、世帯収入が高すぎて加入できません。これは本当に困りました。今まで12ドル程度しか払っていなかった毎月の薬代が、月に3000ドルになってしまいます。いくらアメリカ全体で言って高収入といっても、ワンベッドルームの家賃が$4000が普通のNYCでは特に高収入でもないですし、流石に月3000ドルも払ったら1年以内に貯金が尽きて破産してしまいます。来月の薬までは確保してあるので、来来月の薬から$3000になるのですが、いまだにどうしたら良いのかわかっていません。医者、薬剤師、ソーシャルワーカー、プログラムの担当者全員に聞いて回りましたが、誰も解決策を持っていません。HIV関係のNPOも、高収入世帯は想定していないようで対象にならないようです。一つ夫が思いついたのが、カナダから輸入するというもの。カナダはアメリカと違ってヘルスケア制度がしっかりしているのもああって、薬はアメリカより安いことが多いです。調べてみると、月$1,372と、$3000よりはまだマシな金額が出てきました。Pocketpills Online Pharmacy: Free Prescription Delivery Across CanadaPocketpills is Canada's best online pharmacy that allows you to conveniently order online, refill, or consult with an online pharmacist and offers free shipping and low prices.www.pocketpills.comしかし!いろいろ見てみると、なぜかとっても安く買えるところや、存在しないはずのジェネリックの薬が売られています。しかもそれらのオンライン薬局のレビューは高評価。ここが落とし穴で、カナダからの薬の輸入は要注意です。カナダ連邦政府のサイトを読むと、カナダには40,000件以上の偽のオンライン薬局が存在し、96%のカナダのオンライン薬局はフェイクか、信頼できないソースから薬をまわしていると書いてあります。論文などを読んでも同じようなことが書かれています。私が読んだ論文には、フェンタニルなどの他のドラッグが混ざっている例や、飲んで死亡したケースすらあると書かれていました。この偽薬業界、年40億ドル以上の巨大市場らしく、薬の高いアメリカ人がカナダから薬を買おうとして騙されたケースがものすごい数あるようです(先ほどあげたPocketpills はカナダ政府公認の薬局リストにもあるので信頼できます)。さて、それでもまだ月に$1,372します。カナダの医者にオンラインで会って処方箋を出してもらうのに無保険で$50はするので、合わせると1400ドル程度でしょうか。いやこれは辛い。もっと安く手に入れる方法を探すと、オーストラリアの方が安いようで、それでも月に$940程度のようです。まだマシ、でも辛い。カナダに住んでいて国の保険に入っていれば無料と書いてあって、カナダに移住できるかしら、って本気で考えてしまいます。ジェネリックのHIV薬は20年以上前の薬で質が良くないので医師が危ないやめろと言うし、どうしたもんか...良い解決策ある人はぜひ教えてください。\ 面白いと感じた方は、ぜひ人気ブログランキングにポチっとお願いします(^^) /人気ブログランキング\ ブログ村ランキングもポチっとお願いします(^^) /にほんブログ村はてなブログにエントリー