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【解説記事】カゼインフリーはゴールではない?分子栄養学が目指す「本当の健康」とは

 

「健康のためにカゼインフリー(牛乳・乳製品を避けること)を実践しましょう」

最近、特に分子栄養学や健康系の分野で、このような情報が発信されている機会が増えました。

 

アトピーやアレルギー、原因不明の不調を改善するために、カゼインやグルテン(小麦)を除去する方法が、まるで「当然の第一歩」のように語られることもあります。

 

確かに、カゼインフリーを実践して体調が劇的に改善する人がいるのは事実です。

 

しかし、ここで立ち止まって考えてみたいことがあります。 

 

「グルテンやカゼインを“悪者”として、一生避け続けること」

 

が、本当に私たちの目指すゴールなのでしょうか?

 

この記事では、分子栄養学の本来の目的に立ち返り、「なぜカゼインフリーが推奨されるのか」そして「その先に何を目指すべきなのか」を詳しく解説します。


 

なぜカゼインは「悪者」にされるのか?

 

カゼインフリーが推奨される背景には、主に「消化の難しさ」と「炎症」という2つのキーワードがあります。

 

① 牛乳カゼインの「消化のされにくさ」

牛乳には、「カゼイン」というタンパク質が含まれています。このカゼインは牛乳のタンパク質約80%を占める、水に溶けないタンパク質です。
 
このガゼインの中でも、牛乳にはαS1-カゼインが主に含まれており、胃酸などの酸性環境になると硬く、大きく、強固な塊(凝固物)になります。
 
この「硬い塊」を分解するには、十分な胃酸と消化酵素(ペプシンなど)が必要です。牛乳アレルギーの原因は、この消化しにくいαS1-カゼインが主な原因とされ、αs1、αs2、 β、 κ - カゼインなど種類があるうちの中で、最も強いアレルゲン活性を持っています。
 

② 未消化カゼインと「リーキーガット」

では、もしストレスや栄養不足で胃酸の分泌が弱っていたり、消化能力が落ちていたりするとどうなるでしょうか?

 

通常、十分な消化能力がある人なら、肉やカゼインなどのタンパク質を食べてもアミノ酸やペプチドなど分子の細かい状態に分解することができます。

 

これら分子の細かいアミノ酸の状態であれば、吸収されてもアレルギー反応や炎症は起こりません。

 

ですが、消化能力が落ちている場合には、カゼインは十分に分解されないまま腸に送られてしまいます。この未消化の大きなタンパク質の断片が悪玉菌などの餌となってアンモニアなどの有害物質を生成し、これらが腸の粘膜を刺激して腸壁にダメージを与えます。

 

その結果、腸のバリア機能が壊れて隙間ができてしまう「リーキーガット(腸管壁浸漏症候群)」を引き起こす一因となってしまうのです。

 

隙間ができた腸からは、未消化のカゼインやカゼインの分解物(カソモルフィン)、その他の異物(細菌、毒素)が体内に侵入してしまいます。

 

③ 免疫の暴走と「慢性炎症」

これら「異物」が体内に侵入すると、私たちの免疫システムは「敵が来た!」と判断し、これを攻撃するために炎症を起こします。

 

これが、アトピー性皮膚炎、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、さらには原因不明の倦怠感や「モヤモヤする不調」の引き金になると考えられています。

 

また、カゼインから生じるペプチドであるカソモルフィンという物質は、リーキーガット症候群などで血管に漏れると血液に乗って脳内へ運ばれ、ヘロインやモルヒネといった麻薬が反応する鎮静受容体に同じように反応すると言われています。

 

すると、脳全体を穏やかにするGABAといったホルモンの働きを抑制し、脳の興奮につながるドーパミンといったホルモンの過剰分泌を促すことが分かっています。

 

これが、「カゼイン(未消化)が身体に悪い」と言われるメカニズムです。

 

牛乳有害説の根拠は信頼出来るか?

ですが、このカソモルフィンの悪影響説は、試験管内や動物実験での事実であり、実際の人の食事や人体においてこのカソモルフィンが脳に悪影響を引き起こしているという明確な根拠やデータはありません。

 

例えば、自閉症スペクトラム症と脳の神経伝達物質のGABAには関連性があると言われ、自閉症スペクトラム症ではGABAの働きに異常が見られることが示唆されています。

 

カゼインを摂取すると、GABAの働きなどを抑制する「カソモルフィン」が体内に侵入し、悪影響を及ぼすと考えられていました。

 

しかし、実際に自閉症スペクトラム症の子供にグルテンフリー・カゼインフリーを行った研究では、食事介入に起因する統計的に有意な行動結果の証拠をもたらす研究はほとんどなかったとされています。*1

 

それもそのはずで、たとえ血流に入ったとしても、脳に影響を与えるほどの量が血液脳関門を通過できるのかについては、非常に疑問視されています。

 

現時点では、「食事として摂取したカゼイン由来のカソモルフィンが体内でその作用を発揮する」というプロセスに、科学的に未解明または否定的な部分が多いということです。

 

 


 

2. 「避ける」のは目的ではなく「手段」

 

上記のメカニズムを知ると、「カゼインは体に悪いから、今すぐやめよう!」と思ってしまいますよね。

 

そして実際に、カゼインの摂取をやめると、体内に侵入する「異物」が減り、免疫の攻撃(炎症)が収まるため、体調が良くなるケースや体験談が多くあります。

 

しかし、ここで見失ってはいけない重要な視点があります。

 

それは、

 

カゼインフリーは「火事を消す」ための一時的な手段(対症療法)に過ぎない

 

ということです。

  • 問題:家が火事になっている(=体内で炎症が起きている)

  • 手段:燃えやすいもの(=カゼイン)を家から取り除く

  • 結果:火の勢いが弱まる(=症状が改善する)

カゼインやグルテンを避ければ、炎症の原因となる物質が減るので症状は一時的に良くなったと感じます。

 

ですが、これで一安心、ではありません。 なぜなら、「火事が起きた根本原因」、つまり「なぜグルテンやカゼインを十分に消化できなくなったのか?」という問題が解決していないからです。


 

3. 分子栄養学の「本当の目的」

 

分子栄養学は、個々の細胞や分子レベルで体のアンバランスを読み解き、それを栄養素で適正化するアプローチです。

 

分子栄養学の目的は、「体に合わないものを一生避け続けること」ではなく、「なぜ合わなくなったのか」という根本原因(分子の乱れ)を整え、本来の健康な状態を取り戻すことです。

 

カゼインの例で言えば、目指すべきゴールは以下のようになります。

カゼインを悪者にして避け続けるのではなく、カゼインをきちんと消化・吸収できる「強い消化器官」を取り戻すこと。

(※ただし、IgE抗体が関わる即時型の「牛乳アレルギー」は免疫の記憶の問題であり、話は別です)

 

また、カソモルフィンについては、カソモルフィンが問題なのではなく、ごく一部の「消化能力や腸管バリア機能に極端な問題を抱えた人」にとっては、ひょっとしたら問題になるかもしれない、という可能性がゼロではない、という程度の話であると考えるのが妥当です。


 

4. 「避け続ける」から「立て直す」へ

 

では、カゼインを適切に処理できる体を取り戻すために、分子栄養学ではどのような点に着目するのでしょうか?

 

① 消化能力(胃酸・消化酵素)の立て直し

カゼインを分解する「消化力」そのものを強化します。 タンパク質を分解する胃酸や消化酵素は、栄養素から作られています。

  • 胃酸の材料:タンパク質、亜鉛、ビタミンB群など

慢性的なストレス(胃酸分泌を抑制)や、これらの栄養素の不足が、「消化できない体」を作ってしまいます。

 

これらを整えるため、栄養の補給以外にも、運動や睡眠など生活習慣の改善も同時に行う事が必要です。

 

② 腸粘膜バリア(リーキーガット)の修復

すでに炎症でダメージを受けた腸壁を修復することが優先です。 腸の粘膜細胞はターンオーバーが非常に早いですが、その分、大量の栄養素を必要とします。

  • 腸粘膜の修復材料:グルタミン(アミノ酸)、亜鉛、ビタミンA、ビタミンDなど

 

③ 感染症・ホルモン異常などその他の状態も同時にアプローチ

消化能力が低下する原因は、人によって様々です。ピロリ菌に感染していたり、甲状腺機能が低下していたり、自律神経系の乱れがあったりなど、様々な原因があります。
 
これら人によって異なる原因に対しては、テーラーメイドでアプローチしていく事が必要です。
 
これら原因を知るために、分子栄養学では専用の血液検査などを行って解析しています。消化能力が低下している背景には必ず原因がありますので、これら検査によって根本的な原因を特定・アプローチしていく事が、正しい分子栄養学の実践です。
 
 

5. まとめ:カゼインフリーとの正しい付き合い方

カゼインフリーというアプローチは、一部消化能力が低下している方にとっては、非常に強力で有効な「手段」です。

 

しかし、それが「目的」になってしまい、「あれもダメ、これもダメ」と食べるものを減らし続ける食生活は、本質的な健康とは言えません。

 

分子栄養学が目指すのは、「何を食べても(ある程度)大丈夫」という、しなやかで強い体、自分本来の健康状態を取り戻すことです。

 

そして、カゼインやグルテンでさえも、身体を作るための材料として使えるようになる事が最終的な目標になります。

 

カゼインフリー・グルテンフリーは、このステップの1つに過ぎません。

  1. 【STEP 1:鎮火】 今ある炎症がひどい場合は、一時的にカゼインを除去し、腸を休ませる。(手段)

  2. 【STEP 2:修復】 同時に、消化能力を高め、腸粘膜を修復するための栄養アプローチを行う。(本当の目的)

  3. 【GOAL:再構築】 消化器官が立て直ったら、良質な乳製品(発酵させたヨーグルトやチーズなど)から少しずつ試してみる。

 

これら全てのステップを、総合して行っていくことが正しい分子栄養学の実践です。

 

もし今、あなたが原因不明の不調に悩み、グルテンフリー・カゼインフリーを実践しようか迷っているなら、あるいは実践中であるなら、ぜひこの「本来の目的」を忘れないでください。

 

あなたの体は、悪者である「何か」を排除し続けることで健康になるのではなく、必要な「分子(栄養素)」で満たされ、本来の機能を取り戻すことで健康になれます。

 

健康を目標とするあまり、グルテンフリー・カゼインフリーが目的化してしまわないよう、くれぐれもご注意ください。

 

 

 

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はる かおる
 

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