福岡伸一『生物と無生物のあいだ』 | ぬめんちょ君、かく語りき

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分子生物学者・福岡伸一が著した、サントリー学芸賞の受賞作です。講談社現代新書のオシャレな装丁には帯が添えられており、茂木健一郎や内田樹などから推薦文が寄せられています。「サイエンスと詩的な感性の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す」という茂木健一郎の言葉と、タイトルの妙に惹かれて、僕はこの本を手に取りました。「生物と無生物のあいだ」というタイトルならば、生物・無生物のあいだに厳然とした境界線を引いてくれているに違いないという期待もありましたし、生あるものが死ぬ瞬間に訪れる変化について詳細な記述についても書かれているだろう、という長年のもやもやした疑問を解消してくれる期待もありました。

しかし、いざ読んでみると「生物と無生物のあいだ」については単純かつ簡潔に「生物は動的平衡である」と示すだけで、僕が想定していた内容や、無生物から生物が生まれる仕組みなどは書かれていませんでした。では、何が書かれているのかというと、分子生物学の歴史に多くのページが割かれています。科学の歴史の中でどんな自然の要請があって分子生物学という学問分野が生まれ、何という科学者がどのような研究を繰り広げてきたのか、そういった科学史的ドラマツルギーが詳細に書かれています。

確かにこのパートは大変面白く、著者の文章もとても巧みで飽きさせることなく、かつ分かりやすく分子生物学について書いてあります。ですが、「生物と無生物のあいだ」というタイトルから想起される疑問に対する回答としては、この作品は不十分であるような気もします。やや肩すかしをくらった印象があります。

その点には目をつむって、タイトルや帯の文章とは切り離してこの作品を読めば、ところどころに散りばめられた鋭い科学的洞察に満足してページを繰ることができるでしょう。

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