↑前回までのお話。
「それとも…僕にします?」
……え?
ドキンっ
なんてこったーomg!!!!!!!!!!
カーーーー//////
自分の顔から一気に火が噴き出すのを自覚する。
「…なんちゃって。ジョークです(笑)」
…や…やめてよ!
病み上がりにそのジョークは通用しない!!!
「……家政夫さんがいいです…(ボソッ)」
「…はい?」
大きな瞳をさらに見開いたイケメン家政夫さんに対して。
「ドギョンスさんがいいんですっっっ!!!!!(;´༎ຶД༎ຶ`)」
一世一代の衝動的な告白に。
「わかりました……では」
両手を広げて、わたしを待つイケメン。
「あ…あの…」
「パワーチャージ。今日から僕は、あなたの充電器になります」
…充電器?
「遠慮はいりません。これも家政夫の大事な仕事ですから」
……ですよね。
家政夫として…雇い主に対する…有償のサービスですよね。。。
…………それでもいい…。
ぽすん…
開かれた胸にカラダを預けたら。
ふわり
…ぽん…ぽん…ぽん…ぽん…
わたしを両腕で包みこみ、背中を優しくぽんぽんしてくれる。
イケメン家政夫さんのふんわりとした甘い匂いと…体温と…胸にあてた右耳からうっすらと感じ取れるゆっくりとした鼓動が見事にリンクして。
……それはそれは癒されるのでございます✨✨✨
どんなエステより。
どんなマッサージより。
極上のヒーリングがわたしを包み込み。
このままガチに天国へ逝けるんじゃないかとすら思えるほどの癒しに身を任せていると。
時が経つのも忘れて"無"の境地に達したわたしは。
グーーーーー………
あっ(汗汗汗)
完全に食欲が回復したことを空腹が盛大に知らせくれて。
「あはは(笑)さぁ、ご飯にしましょう」
「……は…はい…(恥)」
なんだか楽しそうなイケメン家政夫さんと一緒に、ダイニングへ向かった。
「まだ体調が完全ではないと思ったので胃に優しいタッカンマリを用意しました。…食べられます?」
「ありがとうございます!大好物です!!!」
「…もし迷惑でなければ…僕も一緒にいただいてもいいですか?」
「もちろん!」
「じゃあ、お言葉に甘えて(笑)」
…なんかすごく嬉しい。
この家で誰かとご飯を食べられることが…。
今朝のベクちゃんは…ほぼ仕事だったけど。
こうして…プライベートで…安心して誰かと一緒に居られるってことだけで…とてつもなく幸せを感じる。。。
「…どうぞ」
手際よく器にとりわけてくれる目の前の優男に涙がちょちょ切れそうになる。
「ありがとうございます…いただきます!!!」
「はい、召し上がれ(笑)」
…パクっ
「…お…おおお…美味しいですこれ!!!!!!!!!!(涙涙涙)」
長時間空腹に晒されていたわたしのカラダの隅々までドギョンスさんの温かい手料理が沁み渡る。
「それは良かったです(笑)」
わたしの喜ぶ姿を見てふふっと嬉しそうに笑い、イケメン家政夫さんもひと口食べると。
「ああ…ホントだ…すごく美味しく出来ました」
一瞬にして溢れ出たその笑顔が眩し過ぎて。
「ドギョンスさんの笑顔は素敵です…とても可愛いです」
何の躊躇いもなくわたしの口からそんな言葉がこぼれ出て。
慌てて、自分の発した言葉の意味を自覚した時にはもう手遅れで。
「可愛いより、かっこいいの方が嬉しいですけどね?」
そんな風に。
まんざらではない様子なイケメンさんに、ほっと胸を撫で下ろす。
この人の前で嘘を付いたり、取り繕ったり。
そんなことが出来なくなってしまうのはなぜだろう?
ありのままの自分が許される気がして。
少しの我儘も許される気がして。
幸せそうに笑いながら
綺麗にご飯を食べるこの人と。
ずっと…一緒にいたい…。
そんな大それた望みすら受け入れてもらえそうな気もして。。。
「あ…あのっ…家政夫さん…」
「はい?」
「あのっ…わたし……(もじもじ)」
「どうしましたか?また具合が悪いとか?」
「いや…じゃなくて……あの……(もじもじもじもじ)」
「あ!しまった!!!もうこんな時間だ」
腕時計を確認し、忙しなく立ち上がり、食器をシンクに運ぶ家政夫さん。
壁の時計の針は19:45を指している。
「あの…大丈夫ですよ?それ…わたしが洗っておきますから」
「ダメです。僕の仕事です」
当然のようにわたしの提案を拒否して。
見事な手捌きで次から次へと食器を食洗機に入れて。
食卓の上の残り物をタッパに移して、冷蔵庫に詰めていく。
嗚呼…そうだ。
この人にとって…この家にいることはただの《仕事》なんだ。
……それ以上でもそれ以下でもないわけで。
「もう19:58…帰ります。次は月曜日に出勤します。週末はゆっくりして、お大事にしてください。ではこれで。」
帽子とマスクを装着し、ぺこりと一礼して、さっさと部屋を出て行ったイケメン。
彼にとっては《仕事》だから、お金のためにわたしに優しく接してくれているだけなんだ。。。
イケメン家政夫さんが去った空っぽの我が家に。
ひとりでいるという当たり前のことが。
今はなぜかとても残念に感じる。
一晩中そばにいてくれて。
美味しいご飯を一緒に食べた後の。
独りぼっちで浴びるシャワー。
寂しくて居た堪れない気持ち全てを…温かいお湯でゆっくりと洗い流した。
シャーー
シャーーシャーー……
・
ふーーーっ…
完全リセット!!!
シャワー浴びたらサッパリした!
危うく勘違いして暴走しそうになった。
これだから独り身は危険なんだよね(笑)
イケメン家政夫特製のタッカンマリのおかげか、充電器のおかげなのか。。。
シャワー浴びたらめっちゃ元気になってきたぞ…わたし。
久しぶりにビール飲もうっと。。。
冷蔵庫を開くと。
常備リストにチェックした缶ビールがしっかりと収められていて。
律儀で完璧主義なドギョンスさんの仕事ぷりが垣間見えて。
ちくんと胸の奥が痛むけど。
……大丈夫。
もう勘違いなんて…絶対にしない。
缶ビールに手を伸ばした時。
ピーーーン…ポーーーン…
インターホンが鳴った。
え?
ドギョンスさん…忘れ物?
…合鍵あるなら普通に入ってくればいいのに…
「はーい…どうしましたか?」
「こんばんは!ベクちゃん便でーす!!!」
画面に映し出された予想外の人物に思わず固まる。
…え?なんで???
なんでなんでなんでベクちゃんが?!?!
「ど…どどど…どうしたの!?こんな時間に」
思わず吃ったわたしに
「お見舞いに寄りました〜!あ〜、これ…ケーキ、エリさんと一緒に食べようと思ってw」
お見舞いにケーキって(汗汗汗)
どうしよう…。
「…迷惑でしたか?」
なかなかオートロック扉を開錠しようとしないわたしにさすがに空気を読んだのか真顔になる部下。
「ううん。今、そこ開けるね。上がってきて」
ガーーーーーー……
朝と夜。
日に二度も我が家を訪ねてくる部下の狙いは、果たしてなんだろう。
こんなことが会社に万が一バレたりでもしたら、わたしはコンプラ違反で処罰されるのだろうか。。。
仕事のことになると、一気に緊張感がわたしを襲う。。。
ピーーーン…ポーーーン
…ガチャリ
「ただいま〜!」
「お…おかえり…なさい(笑)」
そんな可愛い顔で元気にただいまと言われたら。
思わず笑顔でおかえりと言ってしまうのが人間のサガというもので。。。
「どうぞ…上がって」
「は〜い!」
…あれ…お酒の匂い…。
「キミ…呑んでる?」
この子…お酒あまり強くないからいつもゼロ・コーラなのに。。。
まさか…
「ねぇ…もしかして、あのイ会長に呑まされたの?」
「今日のベクちゃんは!ど〜〜〜うしてもエリさんのために契約取りたくてカラダ張って頑張っちゃいましたよ!アハハハハハ〜」
「いやいや笑い事じゃないでしょ!」
「でね?無事に!契約成立しましたので!!!お祝い…これ!このケーキ!エリさんに!どうぞ♡」
ベクちゃん…(涙)
「あ!ちゃんと、代行頼んで、俺、呑んだら運転してないっすよ!そこはダイジョウブっす👍」
そうじゃなくてさ。
「足、そんなにふらついてるのに、なんでわざわざうちに来たの?」
「だって…俺…エリさんに会いたかったから」
えっ……
「だから…ご…ごめんなさい…水…ください…俺…ちょっと…気持ち悪っ…うっ…うぇっ…」
えっ…えっえっえっ!!!
「ちょっと待って!ベクちゃんとりあえずこっち!」
手を引いて慌ててトイレに連れて行くと。
「おぇぇぇーーーーー………」
便器とお友達になった部下の広い背中を。
ゆっくりと摩りながら、彼の仕事への頑張りが痛いほど伝わってきて。
申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
わたしがゆっくり休んでる時に…この子は…
「すごく頑張ってくれたんだね…ベクちゃん…ごめんね」
「エリさん…が…なんで謝るんすか…俺…エリさんのためなら…こ…これくらい…余裕おえぇぇ…ぇぇぇ……」
「ありがとう…でももう…絶対に無理しちゃダメだよ…わかった?」
「……はい(笑)」
あまりに可愛い顔で笑うから。
愛おしい部下の頭を思わず撫でてしまったら。
その驚くほど柔らかくふわふわの髪の毛に、自分の胸の高鳴りを感じて。
慌ててサッと手を引っ込めた。
……これ以上は…ダメだ。。。
上司としての危険回避機能がしっかり働いて。
「少し休んで。落ち着いたらお家に帰ってね」
「はい…。エリさんとケーキ食べたら…帰ります」
水を飲ませて、ソファに横にならせると。
彼はしんどそうな顔で目を閉じて。
しばらくすると…
そのまま寝てしまった。。。
この家は、どれだけ客人を(しかも男を)眠りに誘う力があるのかしら?!(汗汗汗)
心地よさそうに寝息を立てる部下の顔を見て。
プシュ…
缶ビールをグビビと勢いよく喉に流し込む。
……この子も…よく見ると…
とっても綺麗な顔をしてるんだなぁ……。
イケメン家政夫さんとは全く違う顔立ちの。
イケメン部下の顔をじっくりと観察しながら嗜むビールは、最高で。
イケメンをつまみに飲むビールがこんなに美味しいものとは…今まで知らなかったから。
ついつい、ビールが進み。あっという間に飲み干してしまい。
二本目を冷蔵庫に取りに行き、戻ってきて。
可愛いらしいベクちゃんの寝顔をまた見つめていたら。
「俺のこと…そんなに好きなんですか?」
…ドキン
寝ていたはずのベクちゃんの目が突然開いて。
まじまじと見つめていたことが全部バレていたことが恥ずかしくて固まっていると。
「あ…エリさんの顔…赤くなった…めちゃかわいい」
「や…やめっ…」
部下の綺麗な手がわたしの頬に優しく触れる。
「俺…エリさんのこと…上司として尊敬してます。でも…それだけじゃなくて…ひとりの女性として…好…」
ピピッ ガチャ……
…ガタン
え?
玄関の方から物音がして、二人でそっちの方向を見ると。
「…スマホを忘れてしまったらしく取りにきま…した」
えーーーーーーーーーー!!!!!!!!💦
まさかの家政夫ドギョンスさんの再登場で。
三つ巴の奇妙な夜は
今、まさに。
封を切ったのでございます。
続く。