就労継続支援A型について、厚生労働省が指導を強化する動きがありますが、それに反応する形で事業所を閉鎖する事業者が相次いでいます。倉敷市では220人の利用者がいた事業所グループが閉鎖され、名古屋でも69人の利用者が解雇を言い渡されました。
就労障害者69人解雇へ 名古屋の支援会社、資金難で:社会:中日新聞(CHUNICHI Web2017年8月23日 09時00分)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017082390090010.html
参考:山陽新聞、倉敷市の就継A事業所5カ所の閉鎖を報じる (当ブログの記事2017年7月24日 09時00分)
これらは間違いなく氷山の一角で、厚生労働省の調査が進めば今後も廃業したり問題を指摘される事業者が多く出てくるでしょう。不適切な運営を行う事業者を是正する必要は当然ありますが、同時に障がい者の社会参加を支援する政策として強く反省しなければならない面が大きいと思わざるを得ません。
そもそもの問題は、社会生活に不利なハンディキャップを抱える障がい者が必要な支援というのがどのようなものか、具体的なイメージが欠落していたことが問題の根底にあるのではないでしょうか。働くということは社会に参加するということと同じかと思いますが、原理原則に立ち返るならば、障がいのあるなしに関わらず働くことの意味を突き詰めて考えていたかどうかを、私たちは自問自答しなければならないのではないでしょうか。
働くことによって社会を動かし、給料をもらって生活することが経済を動かすことになります。どんな仕事に就きたいか、仕事の何に意義を感じるかは人それぞれですが、働くことによって社会経験を積むことは、人間として尊厳のある生き方をするために必要不可欠なことだと思います。
障がい者の職域開拓は、社会と障がい当事者自身とにとって重要なことです。障がい者が社会参加によって経済的自立を果たし、自らの生き方をセルフコントロールできることは、福祉サービスを提供する社会の負担軽減に大きく寄与します。国や自治体にとっても障がい者の自立を目標として政策を行ってきたとは思いますが、国・自治体と事業者で意識が乖離していたと言わざるを得ないかと思います。その点で、就労継続支援A型に限らず、就労支援事業全体において、原理原則の共有が必要不可欠です。
当事者にとっても、不適切な事業所と関わることは、厳しく言えば貴重な時間を奪われる損失でしかないのですが、当事者にはそれぞれの事情により社会経験が薄くて判断できないケースも考えられます。A型事業所に通ってお金を貰えるからOK、という考え方もありますが、これから事業所の廃止や閉鎖が相次ぐ可能性が高い中で、次に繋がらない支援を受けることは、繰り返しになりますが時間の浪費です。これを自己責任の範疇として片づけることは当事者にとって余りにも過酷です。当事者にとって、就労支援事業所の良し悪しを判断するのは容易ではないですし、ホームページを見たり作業場を見学したとしても、全容は見えません。
今後、多くの不適切な事業者に対して厚生労働省のメスが入るのは当然のことですが、我々支援者は原理原則に立ち返って、働きたい障がい者に本当の支援を提供できるように、考えなければならないでしょう。既存の枠組みにとらわれない多様性を実現するための、『障がい者にとっての全く新しい職域開拓』が必要とされています。
事務局長 山田 完