知財アラカルト

医薬、バイオ、食品、化粧品、一般化学、高分子などの化学系分野に関する知財判決(主として特許と商標)や知財報道を取り上げ、その要点をコンパクトにまとめると共に、その要点についてコメントを付し、皆様方のお役に立つような情報として提供していきたいと思います。


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平成28年(2016年)1月28日知財高裁3部判決
平成27年(行ケ)10058号 審決取消請求事件

原告:エノテカ
被告:Y、エノテカイタリアーノ エス.アール.エル.

 本件は、いわゆる結合商標無効審判(無効2014-890023号)について、分離分断して看取されるよりも、全体をもって一連一体として認識把握されるものであるから、引用商標と類似しないとして請求棄却された審決が、知財高裁においては、逆に分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず、引用商標と類似すると判断され、当該審決が取り消された
事件に関するものです。
最高裁HP:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=85640

(1)事件の概要
本件商標(第5614496号)
・商標の構成:縁取りしてやや図案化された、ワインレッド色の「Enoteca Italiana」
・商品・役務区分と指定役務:第35類「指定役務:飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、など」
②主な引用商標
1)引用商標1(第5136985号)
・商標の構成:ENOTECA
・商品・役務区分と指定役務:第35類「
飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、など」
2)引用商標3(第1860159号)

・商標の構成:Enoteca
・商品・役務区分と指定商品:第32類「ビール」、第33類「日本酒、など」

③特許庁の判断
 特許庁審判官は、概ね下記のように判断
(引用商標と類似しない)、原告の無効審判請求を棄却しました。
1)認定された事実関係から、本件商標については,たとえ,引用商標1及び3の周知性を考慮したとしても,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とに分離分断して看取されるよりも,むしろ全体をもって一連一体の店舗名を表したものとして認識し把握されるものと判断するのが相当であり,「Enoteca」の文字部分のみが独立して自他役務・商品の識別標識としての機能を果たす要部となるものではない
 本件商標は,全体をもって,ワインを販売する店ないしはワインを提供する飲食店のエノテカという形態をとる「Enoteca Italiana」という店舗名を表したものとして認識し把握され,「Enoteca」の文字部分のみが独立して観念されることはないのに対し,引用商標は,「ワインを販売する店」ないしは「ワインを提供する飲食店」という観念を生じるものであるから,両者は観念においても異なるものである。
 したがって,本件商標と引用商標とは,称呼,外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
2)原告が使用する使用標章の周知性や使用標章に係る役務と本件商標の指定
役務との関連性等を考慮したとしても,本件商標をその指定役務について使用した場合,これに接する取引者,需要者が「Enoteca」の文字部分のみに注目して使用標章ないしは原告を連想,想起するようなことはないというべきであり,当該役務が原告又は原告と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く,その出所について混同を生ずるおそれはない

(2)裁判所の判断
 裁判所は、概ね下記のように判断し(引用商標と類似)、本件商標は商標法4条1項11号に該当しないとした本件審決の判断は誤りであると判断しました。
①複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,その構成部分全体によって他人の商標と識別されるから,その構成部分の一部を抽出し,この部分だ
けを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されない
が,取引の実際においては,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,必ずしも常に構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念されることがあることに鑑みると,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部を要部として取り出し,これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されると解するのが相当である(いくつかの最高裁判例)。
②原告が,ワインの輸入販売,直営のワインショップ及びインターネット販売による小売,卸売,ワイン文化と知識の普及などの事業活動において,「ENOTECA」及び「エノテカ」の各標章を継続して使用した結果,本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者の間に,広く認識され,周知となっていたことが認められる。
 以上によれば,本件商標の「Enoteca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じるものと認められる。また,需要者のうち,ワイン愛好者や,イタリア料理,イタリア事情,イタリアへの旅行等に関心のある者においては,「Enoteca」の文字部分から,「試飲のできるワインの販売所」,「ワイン屋」(ワイン店)などの観念が生じるとともに,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念も生じるものと認められる。
 本件商標の「Italiana」の文字部分から,「イタリアの」という観念を生じるものと認められる。
 以上のとおり,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とから構成される結合商標であるが,その外観上,それぞれの文字部分を明瞭に区別して認識することができること,それぞれの文字部分から別異の観念が生じることに鑑みると,本件商標の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部
分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないというべきである。
③以上を総合すると,本件商標が「ワインの小売又は卸売の業務について行われる顧客に対する便益の提供」の役務及びワインに関連する役務に使用された場合には,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記各役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ,独立して役務の出所識別標識として機能し得るものといえる。
 そうすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
④本件商標は,その構成全体から「エノテカイタリア-ナ」の称呼が生じるが,一方で,本件商標は,その構成中の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分との間に空白があること,それぞれの文字部分の冒頭の文字が大文字で,冒頭以外の文字が小文字であることからすると,本件商標の外観上,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができるから,本件商標の外観が不可分一体であるということはできない
 また,本件商標の構成全体から「エノテカイタリア-ナ」の称呼が自然に生じることからといって直ちに本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出することができないとはいえない。
⑤本件商標の登録査定当時,日本国内において,ワイン愛好者や,イタリア料理,イタリア事情,イタリアへの旅行等に関心のある者の間で「Enoteca」又は「ENOTECA」の語が「試飲のできるワインの販売所」,「ワイン屋」(ワイン店)などの意味を有するイタリア語であることが相当程度認識されていたことが認められるとしても,一般消費者を含む需要者の間で「エノテカ」,「Enoteca」又は「ENOTECA」の語がワインを販売・提供する店舗等を示す一般的な名称として認識されていたとまで認めることはできない
⑥被告らが本件商標が被告会社又はその店舗名を表すものとして日本国内において著名又は周知であることの根拠として挙げる事情は,主として,イタリアにおける被告会社の事業,本件商標の使用状況等に関する事情であり,それらの事情は,日本国内において,本件商標が被告会社又はその店舗名を表すものとして著名又は周知であったことを基礎付けるものとはいえない。
⑦本件商標の要部である「Enoteca」の文字部分と引用商標(引用商標1ないし3)は,外観が類似し,称呼及び観念が同一であることからすると,本件商標及び引用商標が本件商標の指定役務に使用された場合には,その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,本件商標と引用商標はそれぞれ全体として類似しているものと認められる。

(3)コメント
結合商標各構成部分に分離して引用商標との類似性を判断できるか否かについては、ケースバイケースによるところが大きく、難しいところがあります。原則としては、結合商標と思われるものでも
(譬え、文字と文字の間に空白や中点等の区切りのようなものがあるとしても、またいわゆる二段併記であっても)各構成部分を分離判断することは許されないところ、本件事件の結合商標のように、分離して考えるべきと判断される場合があります。非常に微妙なところがあるように思われます。そこには抽象的ですが、取引実情が加味され、本判決でも述べられているように、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、その構成部分の一部だけによって称呼、観念されることがあります。
 上記のような判断は、特許庁よりも裁判所の方がより認定されやすいように思われます。本件商標においても、特許庁では原則通り、一連一体で考えるべきと判断されましたが、知財高裁では分離分断されるべきと判断され、真逆の結論となりました。
②各構成部分が一般的な用語で成り立っていれば不可分性が認められ、分離して観察されないと思われますが、ある構成部分の用語が、例えば本件引用商標のように周知に至っていれば不可分性は崩れ、分離して観察される可能性が高くなるように思われます。
 本件では、「エノテカ」という用語の一般性と周知性のどちらに重点を置くかで判断が分かれたのではないかと思います。特許庁は、エノテカという用語について、
ワイン愛好者らが「試飲のできるワインの販売所」等と認識するという一般性を重視し、裁判所は、原告の長年の使用による周知性を重視したと思います。
③なお、エノテカという用語について、裁判所
「試飲のできるワインの販売所」の観点のみならず、原告の長年の使用による周知性の獲得から、原告の営業表示という観念まで生じると認定したことは注目に値すると思います。一方、本件商標(Enoteca Italiana)については、日本における周知性が認められなかったことも結論を左右したのではないかと思われます。

以上、ご参考になれば幸いです。
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