知財アラカルト

医薬、バイオ、食品、化粧品、一般化学、高分子などの化学系分野に関する知財判決(主として特許と商標)や知財報道を取り上げ、その要点をコンパクトにまとめると共に、その要点についてコメントを付し、皆様方のお役に立つような情報として提供していきたいと思います。


テーマ:
平成28年(2016年)8月10日知財高裁4部判決
平成28年(ラ)10013号 移送決定に対する抗告事件
基本事件・さいたま地方裁判所川越支部平成26年(ワ)215号 損害賠償請求事件

抗告人(基本事件被告):日本エネルギー開発、X1、X2、X3
相手方(基本事件原告):Y

 本件は、さいたま地裁職権で下した「本件訴訟を東京地裁に移送する」との決定に対して、抗告裁判所である知財高裁がその決定を取り消した事件に関するものです

最高裁HP:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=86103

(1)原決定の概要
 原審のさいたま地裁は、「抗告人X1が新規開発したと述べていた消火剤の製造方法は,訴外会社の有する特許権を侵害するから,相手方を含む第三者が特許権者の許諾を受けずに実施することはできないのに,抗告人らが,これを秘して,相手方に対し,海外での販路拡張を目的とする消火器の商品サンプルを国内で作るために製造機械を売却したことは欺罔行為に当たる旨の相手方の主張を,抗告人らが争っているから,基本事件は,「特許権に関する訴え」(民事訴訟法6条1項)に当たり,東京地方裁判所の管轄に専属するというものである。」と判断し、基本事件を職権で東京地裁に移送することを決定しました。

 抗告人は、上記決定を不服として、知財高裁に抗告しました。それが本事件となります。

(2)知財高裁の判断
 知財高裁は、原審さいたま地裁の決定に対して、下記のように判示し、その決定を取り消しました。
民事訴訟法6条1項の「特許権に関する訴え」に当たるか否かについては,訴え提起の時点で管轄裁判所を定める必要があり(同法15条),明確性が要求されることなどから,抽象的な事件類型によって判断するのが相当である。そして,同法6条1項(の)・・・「特許権に関する訴え」は,特許権侵害を理由とする差止請求訴訟損害賠償請求訴訟職務発明の対価の支払を求める訴訟等に限られず,特許権の専用実施権や通常実施権の設定契約に関する訴訟特許を受ける権利や特許権の帰属の確認訴訟特許権の移転登録請求訴訟特許権を侵害する旨の虚偽の事実を告知したことを理由とする不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟等を含むと解するのが相当である。

②他方,基本事件は,抗告人らの共同不法行為(詐欺)又は会社法429条に基づく損害賠償請求訴訟であるから,抽象的な事件類型が特許権に関するものであるということはできない。そして,・・・相手方は,抗告人X1による消火器販売事業への勧誘に際し,抗告人X1の開発した消火剤が,同人は技術やノウハウを有していないのに,同人が特許を持っており,これまでの消火剤より性能がよいと述べたことや,他社メーカーの特許を侵害しないと述べたことが,詐欺に当たるなどと主張するものと解される。しかし,事業の対象製品が第三者の特許権を侵害するというだけで,当該事業への勧誘が詐欺に当たるとか,取締役の任務を懈怠したということはできないから,欺罔行為の内容として「特許」という用語が使用されているだけで,このことをもって,基本事件が専属管轄たる「特許権に関する訴え」(民事訴訟法6条1項)に当たるということはできない。

③また,知的財産高等裁判所設置法2条3号は,「前2号に掲げるもののほか,主要な争点の審理に知的財産に関する専門的な知見を要する事件」を知的財産高等裁判所の取り扱う事件の1つとしており,第三者の特許権の侵害の有無が争点の1つとなる場合には,専門的処理体制の整った東京地方裁判所又は大阪地方裁判所で審理判断することが望ましいとしても,それが全て専属管轄たる「特許権に関する訴え」に当たるということもできない。基本事件のように,審理の途中で間接事実の1つとして「特許」が登場したものが専属管轄に当たるとすると,これを看過した場合に絶対的上告理由となること(民事訴訟法312条2項3号)からしても,訴訟手続が著しく不安定になって相当でないというべきである。

(3)コメント
①本事件は、
裁判管轄の問題を取り扱った事件で、少し珍しいと思われましたので、取り上げてみました。
 特許権等の訴訟事件に関して、東京地裁大阪地裁を一審専属管轄とし、二審専属管轄知財高裁(東京高裁)とする民訴6条は、10数年ほど前の司法制度改革の一環として規定されました。特許権等の訴訟事件は、高度に専門性を要求することを考慮してのことでした。それ以前は、一般民事と同様に、各地裁でも判断され、その控訴審は各地裁の高裁でした。
 控訴裁判所について、司法制度改革の検討時期においては、産業界は、米国のCAFCのような知財特別裁判所の創設を目指していたと記憶しております。しかし、憲法上の問題等から、そのような特別裁判所の創設は認められず、今のような東京高裁の一機関としての知財高裁に落ち着きました。
②さて、本事件について、知財高裁は、さいたま地裁の移送決定を取り消しましたが、妥当ではないかと思いました。判決を読む限り、本事件の本筋は一般民事であり、特許の用語(問題)は若干登場するようですが、専門的知見を要するほどのものではないのではないかと思われたからです。
 なお、専属管轄の判断を看過すると、絶対的上告理由になるということは勉強になりました。

以上、ご参考になれば幸いです。
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