知財アラカルト

医薬、バイオ、食品、化粧品、一般化学、高分子などの化学系分野に関する知財判決(主として特許と商標)や知財報道を取り上げ、その要点をコンパクトにまとめると共に、その要点についてコメントを付し、皆様方のお役に立つような情報として提供していきたいと思います。


テーマ:
平成27年(2015年)9月9日知財高裁1部判決
平成26年(ネ)10137号 商標権侵害差止請求控訴事件
(原審・東京地裁平成26年(ワ)767号)

控訴人(原告):興和
被控訴人(被告):小林化工

 本件は、原告が有する商標権の登録商標と類似する商標を被告が錠剤(後発品)刻印した行為が商標的使用でないと判断され、原告の請求が棄却された地裁の控訴事件であって、控訴審では当該刻印は有効成分の略称を普通に用いられる方法で表示する商標であるから、商標権の効力は及ばないと判断され、原告の控訴が棄却された
事件に関するものです。
最高裁HP:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=85310

(1)事件の概要
原告控訴人の商標権(第4942833号の2)
・登録商標:PITAVA(標準文字)
・商品・役務区分:第5類
・指定商品:ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤
②被告被控訴人
の商品
・錠剤に「1mg」「ピタバ」「MEEK」などを付した「ピタバスタチンCa錠1mg『MEEK』」という薬剤など。

(2)裁判所の判断
 裁判所は、『本件商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」の有効成分の略称であり,「…指定商品…の…品質,原材料を普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項2号)であると認められ,同条同項本文により,本件商標権の効力は,被控訴人各標章には及ばないから,控訴人の請求はいずれも理由がない』と判断しました。その理由は概ね次の通りです。
医療従事者を主たる構成員とする学会における研究発表や,医療用医薬品に係る特許公開公報等において,ピタバスタチンないしピタバスタチンカルシウムにつき,「スタチン」ないし「statin」以降を省略した「ピタバ」ないし「PITAVA」という
表現が使用されている
ことが認められる。そして,こうした研究発表や特許公開公報等において,字数やスペース等の制限などから,敢えてその場限りのものとして「スタチン」ないし「statin」以降を省略した表現を用いざるを得なかったと認めるに足りる事情はうかがわれない。また,HMG-CoA還元酵素阻害薬には,ピタバスタチンのほかアトルバスタチン,フルバスタチン,ロバスタチン等があり,これらはスタチン又はスタチン系薬剤と総称されているところ,ピタバスタチンないしピタバスタチンカルシウムについても当該総称部分よりも前の部分である「ピタバ」をその略称として用いることはごく自然であることに鑑みれば,「ピタバ」は医療従事者の間においてピタバスタチンないしピタバスタチンカルシウムの略称として一般的に使用されているものと認めるのが相当である。
②被控訴人各商品を含む医療用後発医薬品の販売名に係る実情や,被控訴人各商品の通常想定される取引態様,被控訴人各標章の表示の態様などに鑑み
れば,被控訴人各標章は,取引者・需要者の一部である患者がこれを被控訴人各商品の有効成分の略称であると認識する可能性がそれ程高くないとしても,被控訴人各商品が医師の処方箋に基づいて患者へ譲渡されるものであり,その処方箋取引において重要な役割を果たしている医師,薬剤師などの医療従事者において,これが本件商標の指定商品の薬剤の有効成分の略称として表示されていることが明確に認識されている以上,客観的にみればこれを本件商標の指定商品の品質,原材料を普通に用いられる方法で表示する商標と認めるのが相当である。上記のような取引の実情に鑑みれば,患者の一部において,被控訴人各標章が被控訴人各商品の有効成分の略称であることを認識していないことが,上記認定を妨げるものではない

(3)コメント
商標法26条1項2号の適用に際し、品質や原材料等そのままの記述商標(本件では「ピタバスタチン」ないし「ピタバスタチンカルシウム」)のみならず、その「略称」も含まれるのか否か、迷うところではないかと思います。これが、本判決では、略称であってもそれが取引者・需要者の間で品質等を表示するものと認識されるのであれば、当該規定の商標になり、商標権の効力は及ばないと判断されました。その点で興味深いと思います。
 なお、同26条1項柱書に「他の商標の一部となっているものを含む」と括弧書きされていますが、これは例えば、識別力のある商標とそうでない商標の結合商標であっても、識別力のない部分に同規定が適用されることを念のために規定されたものですから、本事件の略称とは特に関係するものではありません。
②ところで、判決文によると、控訴人・原告は、別途、カタカナの「ピタバ」商標(5類、指定商品:薬剤)の出願を行ったところ、商3条1項3号(記述的商標)と商4条1項16号(品質誤認)で拒絶査定が下され、拒絶査定不服審判で争っているようです(現在、審理中止)。
 商3条1項3号と本事件に係る商26条1項2号とは、お互い相関性がありますから、被控訴人・被告が錠剤(薬剤)に付した標章「ピタバ」が品質・原材料等を表すとの裁判所の今回の認定は、係属中の不服審判にも影響するように思われます。即ち、裁判所は出願中の原告商標は商3条1項3号違反等であると暗に示しているようにも思え、審判請求を否定する方向に働くかもしれません。
 裁判所がそれを意識して、原審地裁と同様に商標的使用か否かの判断ではなく、商標権の効力が及ぶか否か(商26条1項2号)を判断したのかは、分かりません。

以上、ご参考になれば幸いです。
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