知財アラカルト

医薬、バイオ、食品、化粧品、一般化学、高分子などの化学系分野に関する知財判決(主として特許と商標)や知財報道を取り上げ、その要点をコンパクトにまとめると共に、その要点についてコメントを付し、皆様方のお役に立つような情報として提供していきたいと思います。


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平成27年(2015年)2月10日東京地裁判決
平成24年(ワ)35757号 特許権侵害差止等請求事件

原告:呉竹、保土谷化学工業
被告:サクラクレパス

 本件は、原告らが所有する墨汁組成物に係る特許(特許4426564号)に対して、侵害差止等を求めた事件であって、裁判所は原告の請求を認めました。その中の争点の一つに特許公報発行前の被告の実施行為について、特103条に規定される過失の推定
覆滅するか否かということがあり、裁判所は覆滅しないと判断しました。その他、積極的損害として、弁護士費用を認定損害賠償額の10%ほど認めました。
最高裁HP:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=84867

(1)事件の概要
①本件特許は、水で洗い流せる、即ち洗濯で落ちる水消去性書画用墨汁組成物に関するものです。
 被告のイ号製品は、基本的に本件特許発明の構成要件を充足することもあって、被告はある時期にイ号製品の構成を変更し、本件特許発明の技術的範囲に属しないものとしました。
 従って、差止請求は認められず、実質的には損害賠償請求の是非とその額が問題となりました。
争点としましては、若干の侵害充足論はありましたが、主として本件特許の無効理由の有無(無効主張の是非)と損害額でした。
 損害論において、被告は、過失の不存在
特102条2項による損害額の推定に対し覆滅理由の存在を主張しました。

(2)裁判所の判断
①過失の不存在
 被告は、本件特許の特許公報の公開までの間は、特103条に基づく過失の推定は覆滅されると主張しました。これに対して裁判所は、
「特許権の発生時(登録時)から過失による不法行為責任を負うことを原則としており、特許公報の発行を過失の推定の要件と定めてはいない。また、同条が過失の推定を定めたのは、発明を奨励しもって産業の発達に寄与するという法目的(同法1条)に鑑み、特許権者の権利行使を容易にしてその保護を図るためであることは明らかである。以上の特許法の諸規定に照らせば、特許公報の発行前であることのみから過失の推定が覆されると解することは相当ではない。」と判示し、被告の主張に係る過失の不存在を否定しました。
損害額の推定に対する覆滅理由の存在
 被告は、①被告製品が被告の意匠権の実施品であること、②被告が従前から被告製品と同一の商品名の墨液を販売してきたこと、③本件各発明は容易に回避可能であって技術的価値が低いことから、被告の利益のうち90%について特許法102条2項の推定が覆滅されると主張しました。これに対して裁判所は、
『被告製品は、「洗濯で落ちる墨液」という商品名を付し、その広告に洗濯試験の比較写真を掲載し、「誤って付いた衣服の汚れが落とせ」ることを第1の特徴として販売されており、本件各発明と同様の作用効果を奏することが主たる購入動機になっていると認められる一方、被告の意匠権その他外観上の特徴又は被告による従前の販売活動が被告製品の購入動機の形成に具体的に寄与していたことを認めるに足りる証拠はない。そして、被告製品は本件発明1及び2の構成を備えることにより上記第1の特徴を有する墨液として販売されていたのであるから、侵害後に構成の変更をしたことをもって本件発明1及び2の寄与度が低いと解することはできない。』と判示し、やはり被告の主張を排斥しました。

(3)コメント
 過失の不存在について、裁判所が特許公報の発行前であることのみを理由として覆滅しないと判断したことは、従前の考えと同様と思われ、それが改めて確認されたと思います。
 損害論では、特102条2項による損害額が争われました。特102条1項では原告の利益額が問題となるのに対し、2項では被告の利益額が問題となりますが、自身(原告)の利益額を立証する方が容易と思われるところ、本事件のように2項の利益額で原告が争うことが、ままあるように思われます。その原因として、例えば、自身(原告)の利益額を原告が明らかにしたくない場合、また2項の利益が純利益でなく、1項と同様に限界利益と解釈されるようになったことが挙げられと思います。
 また、本事件では被告の不法行為と相当因果関係がある損害額として、弁護士費用(積極的損害額)が330万円ほど認められましたが、これは102条2項の逸失利益(消極的損害額)として認められた額の約10%です。従前から弁護士費用は、認定された逸失利益額の10%が認められることが多いように思われ、本事件もその傾向に沿ったものであると思います。
 なお、本件も民法利率5分の遅延損害金が認められていますが、民法改正案においては、民法利率が3%(変動制)とされています。5分は、今の時代では高すぎますので、妥当ではないでしょうか。
 以上、ご参考になれば幸いです。
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