知財アラカルト

医薬、バイオ、食品、化粧品、一般化学、高分子などの化学系分野に関する知財判決(主として特許と商標)や知財報道を取り上げ、その要点をコンパクトにまとめると共に、その要点についてコメントを付し、皆様方のお役に立つような情報として提供していきたいと思います。


テーマ:
「特許へ異議申し立てやすく 新制度、迅速な書面手続き」
日本経済新聞 電子版 2013/8/10

(1)標記記事は、成立した特許に対して第三者異議を申し立てることができる新制度「付与後レビュー」を特許庁が来年の通常国会に提出し、2015年の導入を目指していることを伝えるものです。
 記事によると、当該新制度「付与後レビュー」に関して、申立期間が特許成立の公表から半年以内で、申し立てから結論までにかかる期間半年ほどだそうです。特許庁に支払う申立料は、1件あたり1~2万円程度になりそうだとのことです。
 かかる記事の出何処は分かりませんが、当該新制度は、今年2月の産構審知的財産政策部会特許制度小委員会で承認された報告書「強く安定した権利の早期設定及びユーザーの利便性向上に向けて」で明記されているものを言っていると思われます。
 「新制度」と言われていますが、上記報告書を見ますと、実質的には2003年以前にあった特許付与後の異議申立制度と大差ありません。このいわゆる付与後異議申立制度が廃止されてから10年経つか経たない内に、同じような制度が再び復活しようとしています。
 今回、特許庁が付与後異議制度を復活させようとしているのは、一つは産業界の要望とのことですが、米国が2011年の特許法改正「付与後レビュー」(post grant review)を新たに創設したことが多分に影響しているのではないかと思えてなりません。加えて、TPPを見据えた先回り的な改正の可能性もあります。

(2)付与後異議申立制度が2003年になぜ廃止されたか、またその副作用
付与後異議申立制度2003年に廃止されましたが、最も大きな理由は、現在でも存在する特許無効審判制度との併存は不要だろうということだったと思います。特許無効審判制度も特許成立後に第三者が不服を申し立てることができる制度ですから、それが2つも要らないだろうということです。
 その裏には、特許庁の負担軽減もあったかもしれません。当時は今以上に審査の迅速化が叫ばれていましたから、そちらに限られたマンパワーを割きたかったのかもしれません。
②そもそも付与後異議申立制度と無効審判制度とは、その存在意義が異なります。前者は、審査官による審査の適否を公衆が見直すという公益的なものであり、後者は当事者間の紛争を解決するための私益的なものでした。
 この制度趣旨の異なる2つを、いずれも特許成立後に第三者が異議を申し立てることができる制度だから、統合・一本化すればよいというのは、いささか乱暴であったように思います。
 当時、産業界の立場で活動していましたが、少し無理があるかなと感じていました。最も気になったのは、付与後異議が担っていた、公衆による審査の見直しという機能を無効審判制度に包摂させるべく、「何人も」無効審判を請求できることにしたことです。これにより、いわゆるダミーによる無効審判請求がいつでも可能となり、いつまでも特許の法的安定性が簡単に脅かされてしまう事態になりました。このことは、特許権者サイドにとっては、特許を活用する上で決して取るに足らないことではなく、明らかな不確定要因となっていました。
 なお、当時の新無効審判制度の制度設計において、一定期間は何人も無効審判を請求でき、それを過ぎれば利害関係人のみにするという案もありました。が、採用されませんでした。同じ無効審判制度の中で、請求人適格が一定期間で変わるのは理解し難かったからかもしれません?。また、異議申立制度がなくなる分、瑕疵ある特許を十分に事後排除すべく無効審判請求を増やしたい意図があったのかもしれません?。

(3)付与後異議申立制度(付与後レビュー)を復活させる理由
 付与後異議申立制度(付与後レビュー)を復活させる理由として、上記報告書にいくつか挙げられています。大きな理由としては、特許の質の低下瑕疵ある特許が従前より多く存在し続けていることだと思われます。その原因としては、無効審判請求が異議申立制度が廃止されても増えていないことが挙げられています。
 なぜ付与後異議が廃止されても無効審判請求か増えなかったかについては、無効審判は口頭審理を行うことが原則など無効審判請求人の負担が大きいことを挙げています。
 瑕疵ある特許の存在は、無効審判請求件数の少なさだけでなく、審査促進により、特許出願が公開される前に特許が成立する件数が増えていることも原因となっています。審査が早いから審査がいい加減になったとは思いませんが、第三者による情報提供の機会がないまま特許になってしまうため、その分瑕疵ある特許が増えることが想像されます。

(4)新制度「付与後レビュー」について
 新制度「付与後レビュー」とは、どのような制度か。前記報告書によれば、ざっくり言って、以前の付与後異議申立制度と大差ありません。
 申立「何人も」可能なようですし(匿名は不可)、申立期間は特許の内容が公表されてから「6月」以内のようですし、審判合議体が審理を行い、口頭審理は基本なく書面審理を原則とするようですから。これらは、従前の異議申立制度と同じです。また、審理方法も、従前と同様、直ちに特許権者に答弁の機会を与えるのではなく、審判合議体がまず申立理由を審理し、取消理由があった場合に特許権者に意見陳述の機会を与えることにするようです。無効審判請求との同時係属も可能なようです。この点、米国の付与後レビューとは異なります。
 従前と異なるところとしては、従前は申立人が審理手続に関与する機会が殆どなかったのですが、それを少し改善しようとしています。申立人が希望する場合であって、特許権者が訂正を行った場合には、申立人が意見書を提出できることを考えているようです。
 また、訂正の機会も少し異なります。増やそうとしています。審判合議体が特許取消との判断に至った場合でも、事前にその判断を示した上で、訂正の機会を与えることを考えているようです。但し、これは、現在の無効審判制度で採用されている仕組みと同じです。
 なお、申立は「何人も」可能とするに対して、無効審判の請求の方は、「利害関係人」のみに制限するようです。この辺りも従前と同じです。

(5)特許制度は、時代やニーズ等によって、ころころ変わります。新制度ができたり、時代に合わなくなった制度は廃止されたりと。国際的調和の観点から制度が創設ないし廃止されることもあります。また、今回のように、一旦、廃止になった制度が実質復活することもあります。
 特許の仕事をしていますと、その変化についていくのが結構大変です。個人的に、これまでの制度変遷の中で、変化が大きいなと思ったものとしては、補正要件があります。最近は、少し落ち着いていますが。

以上
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。