知財アラカルト

医薬、バイオ、食品、化粧品、一般化学、高分子などの化学系分野に関する知財判決(主として特許と商標)や知財報道を取り上げ、その要点をコンパクトにまとめると共に、その要点についてコメントを付し、皆様方のお役に立つような情報として提供していきたいと思います。


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『「ゆるキャラ」が教える著作権管理のツボ(三淵啓自)』
日本経済新聞 電子版 2013/7/19

(1)標記記事は、地方自治体等の一般公募による、写真のような著作物の著作権管理について、「ゆるキャラ」の著作権管理の在り方と対比しながら、どのようになってきているかを伝えています。
 標記記事では、地方自治体が制作を依頼したり公募したりする「ゆるキャラ」においては、契約作者が地方自治体に著作権(おそらく翻案権等を含む)を譲渡すること、譲渡を受けた著作物の自治体の使用に関し、作者が著作者人格権(特に同一性保持権)を行使しないこと、を明確にしておく必要があると述べられています。即ち、「ゆるキャラ」の著作権地方自治体に帰属し、そもそも譲渡できない著作者人格権の行使は許さないことを契約で明確にしておくべきと指摘しています。こうした点をおろそかにすると「ひこにゃん」事件のように訴訟になると警告しています。
 一方、写真のような著作物の一般公募においては、著作権撮影者(著作者)に帰属させ、入賞作品については主催者が出版、展示、パンフレットなどに優先的に使用する権利広報活動などに使用する権利を、期限を設けて譲り受ける契約とするのが一般的になりつつあると述べられています。

(2)写真のような著作物に関しても、以前はゆるキャラと同様、自治体等の主催者に著作権を帰属させていたと思われます。そうすることで、主催者が雑誌などへ作品を掲載し、それが著作者のステータスでもあり、著作者の作品発表の場でもあったようです。
 しかし、最近は、ソーシャルメディアの普及でブログなどに簡単に個人でも配信することができるようになり、主催者に著作権を帰属させ、作品発表の場を限定されることに違和感を持つ人が増えてきたようです。
 そのため、著作権は、著作者に帰属させながら、期間を限定して優先的に著作物を活用できる権利主催者に譲渡する契約が一般的になってきたとのことです。
 標記記事では、日本写真著作権協会「コンテストの応募に関する手引」でも、そのよう契約が推奨されていることが紹介されています。

(3)著作権について
 「著作権」と一言で言っても、複数の権利に分かれています。代表的なものとしては、複製権(著作物をコピー等する権利)、上映権(機器を使って公に映写する権利)、頒布権(映画の著作物を売ったり貸したりする権利)、公衆送信権などがあります。これらを支分権といいます。これらの支分権は、財産権として譲渡することが可能であり、著作者から譲り受けることができます。前記のように、自治体等の主催者が譲り受けるのは、基本的にこちらの適当な支分権と、後述の著作隣接権です。
 また、著作権には、他に、著作者の人格的利益を保護する「著作者人格権」があります。これも3つの支分権に分かれ、「公表権」
未公表の著作物を公表するかどうか等を決定する権利)「氏名表示権」「同一性保持権」( 著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利)という支分権があります。これらは、著作者の人格的利益を保護するものであり、一身専属ですから、譲渡することはできません。「ひこにゃん」事件で問題となったのも、一つにはこの中の「同一性保持権」です。
 さらに、著作権には、著作物から派生した2次的著作物に認められる「著作隣接権」というものもあります。これもいくつかの支分権に分かれています。その一つに「翻案権」があり、「ひこにゃん」事件でも問題となりました。

(4)「ひこにゃん」事件について
「ひこにゃん」事件については、色々なところで解説されていますので、言うまでもありませんが、問題は、採用された下記3ポーズに係るひこにゃんイラストに関し、原作者等と彦根市(国宝・彦根城400年祭実行委員会)とが交わした契約の解釈にあったと思われます。その契約は、要するに下記3ポーズのイラストの所有に関する著作権等一切は彦根市らに帰属するというものです。

 
出典:彦根市HP、http://www.city.hikone.shiga.jp/kikakushinkobu/150ht/trademark01.html

 彦根市らは、ひこにゃんイラストについて、ちゃんと契約を結んで著作権等を原作者等から譲り受けています。それを受けてか、ひこにゃんは「お肉が好物」などの原作者が意図しない性格付けがなされ、またイラストにはないポーズ尻尾の付いたひこにゃんについて、彦根市らが業者に使用許諾を行いました。それに対し、原作者らは、自身の意に反するとして著作者人格権(同一性保持権)を盾に、2007年11月に彦根簡裁に民事調停を申し立てました。
 標記記事によれば、同一性保持権を行使しないことを契約に明記していれば、この点に関する争いは、起こらなかったかもしれません。熊本県のゆるキャラ「くまもん」に関しては、争いになっていないことから、著作権等の処理を上手くされているのでしょう。
民事調停の結果、両者の調停が成立し、一旦は争いは終結しましたが、その後の両者の行為を巡って裁判となりました。一つには、上記3ポーズのひこにゃんイラストの著作権等は、彦根市に帰属することで調停が成立したのですが、立体のぬいぐるみやそれに類似するグッズの販売まで彦根市に帰属しているのかが、問題となりました。即ち、基本の3ポーズイラストから派生した2次的著作物に係る著作隣接権(翻案権)まで彦根市に帰属しているのかどうかということです。
 これは、元々の契約が「著作権等一切」は彦根市に帰属するとされているのみで、2次的著作物に係る翻案権まで帰属していのるかどうか、明らかでなかったためです。なお、著作権法では、翻案権等の譲渡契約に特掲されていないと原作者側に留保されていると推定しています。
③結局、抗告審である大阪高裁は、2011年3月、翻案権の譲渡について、契約で特別に明記されていることが必要であるとしながら(本契約では特別に明記されていない)、契約全体の趣旨から、一定の翻案権については、彦根市に移っていると判断しました。 他の訴訟も和解となり、一連の「ひこにゃん」事件は、ほぼ終結しました。

(5)著作権は、特許権等と異なり、著作物の完成により自然に発生するという無方式主義であり、思わぬところで発生していることがあります。また、著作権の保護対象である著作物か否か、判断の難しい場合があります。さらには、支分権の束であり、その処理が難しい場合があること、一方、私的使用の複製などの免責事由が多岐に渡り、免責事由か否かの判断も難しい場合があります。
 このように、著作権は、特許権や商標権などの他の知的財産権と比べて、その取り扱いや判断が難しいものがあると思います。最近は、著作権にまつわる争いが多いように思われ、多くの判決が最高裁HPにアップされています。
 著作権ないし著作権法は、特許以上に国によって異なると思いますし、時代の流れを受けやすいものと思われます。紛争に発展する可能性も高く、十分に注意する必要がある分野・法域であると思います。

以上
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