脳動静脈奇形の話 5 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


テーマ:

AVMの治療の話を続けております。

今回はガンマナイフ治療と、あとは血管内治療の最近のトピックについて書きたいと思います。

 

ガンマナイフ治療に関しては、

以前にも書きましたが、AVMのナイダス部分に対して強い放射線をあてることによって、

長期的に組織の変性を起こし、ナイダスを塞栓させる治療法です。

 

この治療法のメリットは、開頭やカテーテルなどの侵襲的な要素が低いことです。

ガンマナイフ治療の際の唯一の侵襲は、レクセルフレームという金属器具を金属ピンで頭部に差し込むことです。

これは通常局所麻酔で行います。

 

ガンマナイフ治療では頭蓋骨の内側に直接人の手技が届くわけではないので、

侵襲は頭皮もしくは頭蓋骨に及ぶのみです。

 

頭の中を直接いじることなく、

ピン固定以外に関しては、放射線自体は痛くもかゆくもない、というのが

この治療法の最大のメリットでしょう。

 

デメリットはナイダス閉塞までにかなり時間がかかることです。

数週間とか、数か月ではなくて、年の単位で時間がかかります。

 

報告によってことなりますが、治療後のナイダスの閉塞と時間の関係は、

3年で約7割、5年で8-9割、といったところです。

 

多くの人は3-4年はかかるものと思った方がよいのです。

 

即効性がないというのがガンマナイフ治療の最大の弱みと言えるかもしれません。

何故ならば、出血後のAVMは年間破裂率がおおよそ6-30%と比較的高いと言われておりますので、

閉塞までに数年かかってしまうと、その間に再出血がおきる可能性も少なからずあるのです。

 

他にも、ガンマナイフで閉塞しにくいと考えられているAVMの要素がいくつかあります。

その最たるものとして、fistulous feederと呼ばれる流量の非常に多いfeederが挙げられます。

要は、流れの多く勢いのあるフィーダーはガンマナイフでは閉塞しにくいのです。

 

他には、dural feederといって、硬膜からAVMにフィーダーが入っていた場合、それは閉塞しにくいと言われています。

これらのフィーダーからのナイダスへの血流はガンマナイフだけではなかなか閉塞しないため、

血管内治療によって閉塞させることが有効と考えられています。

 

さらに、AVMの中やその周囲に動脈瘤がある場合も、これらは血管内治療での塞栓が有効です。

あとは、ガンマナイフというのはどうしても、ターゲットに放射線を集中させるとはいえ、

周囲の被爆をゼロにはできません。そのため、ターゲットとなる病変が大きいと、周囲の被爆も大きくなることから、

全体の線量を下げなければなりません。

この影響と、あとは大型のAVMがそもそもガンマナイフで閉塞しにくいということもあって、

大型のAVMに関しても血管内治療による塞栓で体積を減らしておくことが有効とされています。

 

ガンマナイフ治療が一番向いているのは、

未破裂の小型の、血流量の少ないAVMということになります。

逆にそうでない場合には、ガンマナイフだけでの根治が難しいので、血管内治療による塞栓との組み合わせが有効なのです。

 

ガンマナイフだけで閉塞するようであれば、それが一番患者さんにとっても負担が少なくて良いのだろうとは思うのですが。

 

最近、このAVM治療に関して、

血管内治療だけでAVMを根治させるための新たな手法が世界的にトピックスになっています。

 

従来、前回の記事に書いたように、AVM治療ではフィーダー側から、

液体塞栓物質を流し込んでナイダスを塞栓するのがスタンダードです。

現在もAVMに対する血管内治療といえば、ほぼこの、動脈側からの塞栓、

つまりtranscatheter arterial embolization (TAE)のことを指します。

 

しかし、近年注目されているのは、ドレーナー側からの塞栓、

transcatheter venous embolization (TVE)なのです。

 

従来、ドレーナー側から塞栓してしまうと、血流は出どころを失い、

ナイダスを破裂させることになりますので、非常に危険とされ、AVMの治療方法としてはNGとされていました。

 

しかしながら、十分にフィーダーからの血流を落とし、ナイダスやドレーナー側の血圧を十分にコントロールした状態であれば、

最後にドレーナー側からもナイダスに液体塞栓物質を押し込むことで、AVMを完全に塞栓できる確率を上げることができるという発表が増えてきているのです。

 

この、動脈側からの血流を十分に落とすということがなによりも肝心で、

これが十分でないままにドレーナー側を止めてしまうと、それは当然、出血を引き起こす原因となります。

 

従来のTAEを十分に行い、さらには一時的に脳の主幹動脈をバルーンカテーテルで止めて圧力をコントロールした状態で、

TVEを行うようです。場合によっては、一時的に心臓を人為的に不整脈状態として心臓という大元からの血流も止めてしまうのだとか。

 

海外ではこういった、アグレッシブなAVMに対する血管内治療の方法が現在進められています。

 

ただ、これは静脈側、つまりドレーナー側からカテーテルがナイダスのそばにうまく進められた場合にのみ可能であって、

なおかつTAEによって十分にartery側からの血流が落とされていなければいけません。

ただ、条件が整えば確かに有効な治療法なのだろうと思います。

 

これから日本でも、十分に安全に同様の治療が行えると判断された場合のみ、

このTVEがおこなわれるようになってくるだろうと思います。

 

さて、幾度かにわたりAVMについて書いてきました。

一旦このあたりで区切りとしようと思います。

 

またAVMに関してリクエストなどあれば、教えてください。

 

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