ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


テーマ:

先日から動脈瘤の記事を続けています。

 

拙著、誰も教えてくれない脳と医療の話、などにも脳動脈瘤の話題は詳しくのっているので、興味のあるかたは紙の書籍か、Kindleで読んでみてください

 

さて、前回の記事は、

 

一般的な未破裂脳動脈瘤の治療は破裂させないようにすれば十分で、その治療のためになにかしらの合併症を出してしまうことは許されることではなく、

何か症状を出してしまうくらいならば、動脈瘤を完全に処理することにこだわる必要はないという記事でした。

 

多くの通常の動脈瘤、

つまりは破裂率が年間1%、2%というような、比較的低率の破裂率で語られるような動脈瘤については、この考え方でよいと思います。

 

しかしながら、

全ての動脈瘤がその通りではありません。

 

やはり、例外というものがあります。

 

そこで、今回は逆に、

非常に難しい判断を迫られる動脈瘤の治療について書きます。

 

言い換えれば、

ある程度高率の合併症を覚悟してでも、治療しなければならない動脈瘤についてです。

 

それはどういった動脈瘤かといいますと、

一つは、いますぐにでも破裂してもおかしくない動脈瘤があげられます。

 

これはたとえば、

破裂しやすい場所の非常に大きな動脈瘤や、

不整形で頭痛とともに最近形がかわったばかりの切迫破裂動脈瘤、

いつ詰まるかわからない血栓化巨大動脈瘤、

脳幹を圧迫し様々な神経症状を悪化させつつある動脈瘤、

 

などです。

 

これらの動脈瘤は破裂のリスクが高い、致死的な脳梗塞を起こすリスクが高い、もしくは、次第に神経症状を悪化させる、というような理由で、

多少のリスクには目をつぶって治療しなければならない動脈瘤、という部類に入ってきます。

 

ようは、そのまま放っておいたら、重篤な結果になることが強く予想される動脈瘤だからです。

 

しかし、こういうときに問題になるのは、

どの程度のリスクであれば、治療を行うにあたり、許されるのか、ということです。

 

ここで、治療を行う脳外科医も、患者さんも、その家族も、

非常に難しい決断をし、覚悟を決めなければなりません。

 

誰一人として神様ではないので、

100%成功する手術なんてものはなくて、

わたしたちはそれをできるだけ100%に近づけることしかできません。

 

しかしながら、難しい動脈瘤や、複雑な動脈瘤の場合となると、

99%はなんの合併症もなく無事治療が完遂できる、

というほどの自信をもって治療に臨めることは少なく、

 

むしろ、下手すると、

軽いにせよ、重いにせよ、なんらかの神経症状が出る確率が、

五分五分くらいというようなこともあります。

 

それでも、それが生活にそれほど大きな影響を及ぼさないと考えられる場合や、もしくは、しばらくのリハビリで改善するような症状と予想される場合には、

 

メリットの方が大きいと考えて、私たちは治療を勧めます。

 

無治療で様子をみた場合に、動脈瘤が破裂するか、もしくは致死的な脳梗塞を起こすなどして、不幸な結果となった患者さんを経験したことがあると尚更です。

 

では、どのような動脈瘤が該当するでしょうか?

 

一概に言えるのは、

大きな動脈瘤であるということです。

 

25mmを越えるようないわゆる巨大脳動脈瘤の場合、

その破裂リスクは高く、部位にもよりますが、年間10%~数十と見積もる報告もあります。

 

しかも、こういった大きな動脈瘤の場合、

物によると内部で一部血栓化をきたすことがあります。

大きな動脈瘤だと、内部の血流が下がり、よどみが出来るところが出てくるので、そういった部分で血が固まり、血栓化という状況を起こすのですね。

 

瘤の中の一部は血流が流れているけれども、一部は血栓化するというようなことになります。

 

これは実は危険な状況で、

破裂が起こることもあれば、なんらかのきっかけで血栓化がさらに進み、血管ごと詰まって閉塞するということも起こりえます。

 

破裂と、閉塞、どのどちらもがいつ起きるかもわからないのです。

 

幸運にもそのどちらも起きなければよいですが、

起きてしまうと致命的、という状況で、

その確率は必ずしも低くはなく、数年のうちには起こりうる、

という場合、普通は治療をしないと仕方がないと考えます。

 

ただ、治療を行う時点では特に症状はなく、普通に生活を行えていることがほとんどで、

治療を行えば五分五分くらいでなにかの後遺症が残るかもしれないとします。

 

ここで、治療に踏み切れるでしょうか?

 

なんらかの犠牲を伴ったとしても、

その後、5年、10年、数十年と生きるために、治療を選べるでしょうか?

 

もちろん、程度によると思います。

顔にちょっと痺れが残るくらいならまだよいでしょうか?

1-2か月リハビリすればよくなる程度の飲み込みの障害だったらどうでしょう?

2-3か月のリハビリで歩けるようにはなるけれども、走ることは当面難しいというのは中程度の後遺症ですね。

半々の可能性で一生車いす生活かもしれない、というくらい重い場合はどうでしょうか?

 

人によって程度は違いますが、上に書いたようなことは、

冗談ではなく、実際に巨大動脈瘤を持った患者さんが突き付けられうる治療の代償なのです。

 

治療を行う側も、

五分五分くらいかもととわかってはいても、

絶対にそんな合併症は出したくないです。

 

それを六分四分、七分三分、

できれば九分一分にまでもっていきたいのです。

 

五分五分とわかっていても、何か後遺症を患者さんに残してしまった場合、それをやったのは紛れもなく自分自身であると、

言い訳しようもなく、私たちもわかっているからです。

 

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