頭部外傷、急性硬膜下血腫について 再編版 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

脳外科的な話題を記事にしたものの再編版です。




脳外科というと救命救急とやはり切っては切れない科の一つですが、




我々が救急外来でよく遭遇する、のっぴきならない症例のひとつとして頭部外傷や、


急性硬膜下血腫があります。




急性硬膜下血腫と言われても、なんだ?と思われるでしょうからどういう病気か簡単に書きます。




頭を打ったりしたり、鞭打ちみたいに頭がふられたりしたときに、


結構簡単に脳の表面の静脈とかが破れて、出血を起こします。




そうすると、頭蓋骨内に血があふれて脳を圧迫する病気が急性硬膜下血腫です。




血管が弱い高齢者が転んだときとかに多くて、


たいていは頭の怪我とセットだったりします。




たまに、何も外傷がなくても起きることはあるようですが。




あとはスポーツだとか、交通事故とかで若い人にも起こることがあります。




治療は、頭蓋骨を開けて、


脳を圧迫している血の塊をとって、止血するという単純な治療なのですが、


逆にこれしか方法はありません。




もちろん手術になるわけですが、


ここで微妙なのが手術適応です。




治療がそれしかないなら手術でしょう!と思われるかもしれませんが、


国のガイドラインでも手術の適応は決まっています。




まあ、このガイドラインですが、平たく言えば、


手術しないでも脳へのダメージが大丈夫そうな小さい血腫で状態もよいときと、


もはや手遅れで脳死は免れ得ない状態のとき、


の二つを除いては手術となるわけです。




もちろん、


今さっきまでよかったのに現在症状が悪化している!




といったような場合は緊急で手術をすることによって、


戻してあげられる可能性が高いので手術になります。




手術によって良くなる希望が強いのであれば、当然手術です。




ただ、現実には、救急外来に運ばれてくるような場合、


到着時からほぼ昏睡状態で限りなく手遅れに近い、というのが多いです。




つまり、どういった場合かというと、


治療は手術しかない。それも、なるべく早くやったほうがいい。




ただし、




手術してもほとんどの確率でよくて植物人間、


一方で手術をしないと数日以内に亡くなるであろう、というような場合です




無理すれば植物人間の状態で永らえさせることは可能という様に解釈していただいてもいいでしょう。




そういったケースでは、


社会生活ができるようになる可能性は0-3%とか、かなり厳しいデータが出ているのです。




歳別に考えると高齢者となればなるほど勝ち目がうすくなります。




実際の現場では、


こういう、悩ましいようなケースが多いのです。




急性硬膜下血腫は実はかなり予後の悪い病気で、


ちなみに深昏睡状態だと手術をしても死亡率90%以上となります。





深昏睡というのは、何をしても反応しないような状態です。




ただ、


良くなる可能性も0じゃない。


というのがこの話のkeyです。




一方で、手術をして救命に成功した場合、


多くの場合に待っているのは上に書いた様に、


完全な植物状態でなかったとしても、それに近かったり、何らかの障害が残った状態です。




つまり、


排泄や食事といった日常の基本的な事でさえ、


介護を必要とする状態になることが多いんです。




そうすると、家族の負担は多大です。




もし、介護を家族でやるとなれば、


それは24時間体制でとても大変なことですし、


施設にいれるとしても、毎月20万近い負担となります。




これらを含めた決断、


つまり手術をするかしないかという決断を家族は救急外来の場で決めなければいけません。




我々はそういったことを出来る限り分かりやすく説明しますが、


結局は家族に決めていただくしかないのです。




手術をやるとするなら早ければ早いほどいい、という切迫した状況下での決断になります。




しかし、はっきりいって、


まともに判断できるとは思いません。




大抵の場合、動揺してしまって、


あまりまともに考えることは出来ないのです。




急性硬膜下血腫は外傷が原因ですから、


いつ、誰の身にふりかかるとも分からない唐突な災厄なのです。




冷静に考えろという方が無理なんだろうとは思います。




我々もある程度、常識的に考えて、


良いと思われる方に少しは誘導するように説明をしますが、




やはり最後に決めるのは家族なのです。




まさに極限の選択かと思います。




現実には、よっぽどご高齢でないかぎり、


やれることをやるだけやってもらうしかない、という結論に至るご家族が多いような気がします。




親しい肉親のこととあれば、これは当然のこととは思います。




結果として、


我々はかなり分の悪い手術をすることも多いです。




時には、植物人間のようになることをほぼ、覚悟の上で手術することもあります。




絶望的な状態の手術でも、


植物人間となってでも命を延ばすことで家族がお別れに必要な時間を作ってあげられる、


という意味はあるかもしれませんが、




どうしても、


いろいろと考えさせられる事は多いんです。




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