昨日は2か月ぶりのコンプレックス読書会(@品川プリンスホテルのラウンジもみじ)でした。


アフタヌーンティーをいただきながら、超・贅沢なひととき……!
まさに『細雪』の贅沢な世界だねぇ……と言いながらひたすら食べて飲んでしゃべりました。
お腹が爆発するかと思いました。体調がすぐれなくて残してしまった(T_T)

谷崎純一郎『細雪』は大阪・船場の名門・蒔岡(まきおか)家に生まれた4姉妹の物語。
裕福な家ですくすく育ち、美貌も兼ね備えた彼女たちは、派手な着物でお出かけをして四季を楽しむ優雅な日々を送っています。

彼女たちの悩みはもっぱら”未婚の妹たちを立派なところに嫁がせること”。
長女の鶴子と次女の幸子はすでに結婚して子どももいるが、三女の雪子の縁談がまとまらず、そのため四女の妙子の結婚もままならない状態が続いています。

雪子はこれまで何度もお見合いをしてきたのですが、引っ込み思案な性格もあり、何かと理由をつけて断ってしまっていました。
30代にさしかかり縁談の声がぐっと減るなか、雪子の顔にシミのようなものがあらわれはじめ……お見合いを取り持つ幸子は気が気でないのですが、雪子は全く気にとめません。

四女の妙子は雪子とは対照的で明るく社交的ですが、家に縛られるのを嫌い、恋人の奥畑と駆け落ちをして新聞沙汰になったり、人形製作の仕事で自活しようとしたりして、奔放な行動を起こして幸子を困らせることが多々ありました。

次女の幸子は結婚を機に蘆屋(兵庫県の芦屋市)で分家を構えて暮らしていますが、雪子と妙子は大阪の本家に寄らず、蘆屋にばかり入り浸るようになります。

妙子は分家の気軽さを好み、雪子は長女・鶴子の夫(義兄)と折り合いが悪く、どちらも分家の方が居心地良く過ごせるのだそう。
幸子は本家と妹たちの間で板挟みになりヒリヒリとした気持ちを抱えつつもお見合いを取り持ったりトラブルの仲裁に入ったりするのでした……。

この物語は第二次世界大戦中の1943年から連載が始められ、作中にも戦局を不安視する様子がたびたび語られています。
蒔岡家は裕福だったとは言え、両親が亡くなり戦争が始まってからは昔の勢いを失い、少しずつ暮らしぶりが厳しくなっていきます。

鶴子や幸子はなるべく早く雪子と妙子の縁談をまとめたいと画策するのですが、雪子のお見合い相手の条件は段々悪くなり、雪子の気も進まずどうにももたついてしまいます。

その間に鶴子の夫の転勤で本家が東京に移ったり、蘆屋で豪雨災害があり妙子が九死に一生の事態に遭ったりとさまざまな騒動が起こります。
ドタバタしながらも戦局は少しずつ悪化し蒔岡家の経済状況も厳しくなっていくなかで、美しい四姉妹の悲喜こもごもはえも言われぬ色気と哀愁を持って語られます……。

この物語を読みながら、貴重で壊れやすい骨董品を触っているような、なんとも言えない感覚に襲われました。

四姉妹のドタバタはおさまることなく、最後まで「この四姉妹はどうなってしまうのだろう」「全員幸せになって欲しい」と祈りながら読み終わりました。

結末は「ええ!? ここで終わるの!?」と叫んでしまうほどもどかしかったのですが笑、わたしたちはその後日本がどうなるかを知っているので、そういう意味では蒔岡家が美しさを残したまま物語を終えた方が良いのかもしれないと思わせられたのでした……。

『細雪』は上・中・下の3巻構成の大作ですが長さを感じさせません。
鶴子の昔気質なところ、雪子の引っ込み思案なところ、妙子の奔放なところ、幸子のどっちつかずなところに読み手はやきもきさせられますが、四姉妹それぞれの長所や短所がバランス良く描かれ、結果として全員が憎めないキャラクターとして描かれています。

さらに作中の劇的な場面(妙子の水害など)とそうでない場面(雪子の縁談のグダグダしたところなど)の緩急のつなぎ目が自然で、読み始めると止まらず、物語世界に没入させる筆力に圧倒されました。

美しい骨董品はじっと眺めているだけでも楽しくてうっとりしてしまいますが、『細雪』の世界はまさにそんな感じでした。
大阪弁のやわらくてひたすら婉曲な言い回しも、“歌うような語り”好きなわたしには心地よく響いたのでした。実生活にいたらやきもきさせられっぱなしでたまらないだろうけれど、見るぶんにはちょうど良いです。笑

という感じで、今回のコンプレックス読書会では、『細雪』の世界に浸り、はかなくて美しくて贅沢なひとときを味わうことができました。
大作でしたが読んで良かった!

《コンプレックス読書会バックナンバー》

次は……『細雪』よりも大作に挑戦!!
どんどんハードルが上がってゆく!!!!笑
乞うご期待(?)!