皆さん、おはようございます。
スーパーのBGMが妙にノリノリのダンスミュージックだったせいで、レジ待ちの間にリズムを取りそうになった齋藤です。
 

さて。

最近、障害福祉の世界では「入所施設を廃止し、地域生活へ!」というスローガンが掲げられています。なんだか聞こえはいいですよね。自由で開かれた社会、障害があっても住み慣れた地域で暮らせる未来。

……しかし!

実際の現場では、「そんな簡単に言われても……」「地域の受け皿、本当にあるの?」といった声が飛び交っています。特に、重症心身障害児(以下、重心児)を支える家族にとっては、「施設がなくなる? じゃあ、私たちの生活はどうなるの?」という切実な問題です。

今日は、「入所施設の廃止と地域移行」について、現場のリアルな課題を踏まえてお話しします。

 


1. 入所施設の廃止──「理想は美しいが、現実は?」

日本の障害福祉政策は、国際的な流れに乗りながら「地域移行」を推進しています。つまり、これまでのような入所施設に頼るのではなく、地域の中で生活できるようにしましょう、という方針です。

「地域で暮らす? なんだか素敵!」と思ったそこのあなた。

たしかに、自分の好きな場所で暮らし、自由に外出し、好きな時に好きなものを食べる生活……理想的ですよね。しかし、問題はその「理想」と「現実」のギャップ。

例えば、こんな状況を想像してください。

  • 「施設がなくなるって? じゃあ、どこで暮らせばいいの?」
  • 「グループホームって言うけど、重心児は入れるの?」
  • 「訪問サービスで対応? でも、スタッフが足りないって聞いたけど……」

そうなんです。入所施設がなくなることで、家族の負担が一気に増える可能性があるのです。

2. 地域の受け皿、本当にあるの?

ここで問題になるのが、「地域の受け皿」です。政府の計画では、「入所施設を減らしても、地域で支えられる仕組みを作るから大丈夫!」ということになっています。

しかし!

現場の実情を見てみると……

🚨 グループホームが足りない → そもそも重心児が受け入れられるグループホームの数が少ない!

🚨 訪問支援が追いつかない → 介護スタッフや看護師が不足しており、重心児のケアに対応できる人材が限られている!

🚨 地域住民の理解も必要 → 「ここに障害者が住むのはちょっと……」という偏見がまだまだ根強い!

これでは、地域生活どころではありません。まるで、「飛行機のエンジンがないのに、今すぐ飛べ!」と言われているようなものです。

3. 家族への影響──「私たちの生活、どうなるの?」

一番影響を受けるのは、やはり家族です。

これまで入所施設に預けていた場合、日中は仕事をしたり、自分の時間を確保できていたかもしれません。しかし、施設がなくなり、地域生活に移行すると……

🔴 「夜間のケア、どうすればいいの?」 → 家族が夜中に吸引や体位変換をすることに?

🔴 「仕事は続けられるの?」 → 送迎や日中のケアの負担が増えて、フルタイム勤務が難しくなる?

🔴 「親亡き後は?」 → 地域生活の基盤が整っていないのに、安心して子どもを託せるの?

まるで、これまで使っていた橋が突然なくなり、目の前に川が広がっている状況。橋がないなら、泳ぐしかない。でも、泳げるかどうかは分からない……そんな不安を感じる家族は多いはずです。

4. では、どうすればいいのか?

ここで大事なのは、「施設をなくせば解決する」という短絡的な考えではなく、家族の負担を減らしながら、無理なく地域生活へ移行できる仕組みを作ることです。

短期入所(ショートステイ)を拡充 → いきなり地域生活を強いるのではなく、少しずつ慣れる仕組みを!

訪問サービスを強化 → 24時間対応の訪問支援を増やし、家族の負担を軽減!

親亡き後の支援を明確に → 「どうすればいいのか分からない」状態をなくし、安心して未来を考えられるように!

グループホームの専門化 → 重心児が安心して暮らせる場を増やし、地域生活の選択肢を広げる!

5. 事業者の運営への影響

入所施設が廃止・縮小されることで、運営事業者も大きな影響を受けます。主な問題点として以下が考えられます。

事業形態の転換が求められる

現在の入所施設の運営事業者は、グループホームや通所型のサービスへと転換を迫られる可能性があります。しかし、施設運営と地域支援では必要なノウハウやスタッフのスキルセットが異なり、単純に事業転換するのは容易ではありません。

収益モデルの変化による経営の不安定化

入所施設は一定の収入が見込める事業ですが、地域移行後は訪問支援やグループホームなどの形態に変わることで、収益モデルが変わります。特に訪問支援は単価が低く、事業の継続性に不安を感じる事業者も多いでしょう。

施設の名称変更による「実質的な存続」

入所施設を完全に廃止するのではなく、「地域生活支援センター」や「短期入所付きグループホーム」といった形に変え、実質的には入所施設とほぼ変わらない形で存続するケースも増えるかもしれません。

6. まとめ

障害福祉における入所施設の廃止と地域移行は、理念としては大切ですが、現実的な課題が多く、完全な移行は困難な状況です。そのため、今後の展開としては、

地域生活の受け皿整備が追いつかないうちは、入所施設の廃止を急がず、段階的に進める必要がある。

事業者が経営を維持できるように、入所施設の機能を変えながら継続する形が取られる可能性が高い。

実際には「入所の名称が変わるだけ」で存続するケースも出てくる。

このような流れが現実的な落としどころになるのではないでしょうか。

 

以上でーす。