為替シリーズも4回目になるが、なぜだか「円高」の議論をしていると、どんどん現実の世界でも円高が進行していく。昨夜は1ユーロ95円台にまで円がユーロに対して買われたらしい。

 昨晩はちょうどアメリカの雇用統計の発表があり、思いのほか数字が悪化したネガティブサプライズだった。おかげでQE3への期待から、短期売り筋のショートカバーを巻き込んで、NY金は60ドルを超す大暴騰で1600ドルまで楽々と回復していった。


 前回は通貨自体の信用と希薄化に関して言及したが、そもそもの前提として現在各国の中央銀行が発行している紙幣(いわゆるお金)は兌換紙幣ではない。

 1970年代のニクソン・ショック以来、ドルも金(GOLD)の裏付けのない紙幣になっている。

 それでいて、現在までじゃんじゃんと紙幣を発行しまくるから、紙幣(お金)そのものの価値はどんどん低下していく。そしてリーマンショック後の金融不安により、米国債は膨張し続ける中、この流れはさらに加速していった。

 1年ほど前の新宿区議会の決算委員会だかの総括質疑の中で、「現在、米国債を一番多く保有しているところはどこでしょう?」との質問をした。財政課長だかが、「確かではありませんが、かつての日本を越して中国あたりでしょうか。」と答弁した。しかし、この回答は不正解だ。一番大量に米国債を有しているのは、日本でも中国でもない、他ならぬアメリカのFRB(中央銀行)なのだ。ダントツの一位である。驚異的に増大した財政赤字を支えるために、中央銀行は金融緩和の名のもとに紙幣を発行し続けている。

 これはアメリカだけでなく、ヨーロッパの国々でも同じこと。どこの国でもじゃんじゃんと紙幣を発行して、お金を供給しまくっている。確かに日本でも最近はインフレターゲットとかいって、同様の傾向がみられるが、他の国々に比較すると、まだまだ甘い状況である。

 となると、相対的に紙幣の価値が棄損していない「円」に信用が集まり、「円高」となるわけである。希薄化しつつある世界の紙幣(お金)の中でも、まだ日本の円はましな方ということだ。


 そして、世の中で「お金」を体現するものは、何も紙幣だけでない。究極的には「金」(GOLD)が歴史的に見ても「お金」を体現するナンバー1だ。金はモノであるが、その前にお金である。だって「お金」という言葉、その文字をみれば明白だろう。

 各国銀行の発行するお金の価値が低下していく中、人知れず静かに、そして確実にGOLDの値段は上昇していく。まだまだ上昇の序盤戦だろう。

 これは、何もファンドの投機とか、インドや中国のGOLD好みとかではなく、もっと本質的な理由のもとでの、GOLD価格の上昇を説明している。