2022年8月10日に、ゲームインパクトの新番組「ハビットチャンネル ゲバゲバ約30分」がスタートしました。
私はその番組のオープニング曲を制作しました。
実際に番組で使用されるオープニングがこちらです。
作曲する時には8秒ほどのCG画像しか無かったので、こうして全ての画像と音楽が合わさったものを拝見する事が出来て、安心しました。
さて、このオープニング曲が、どのように作られたのか、ご紹介しましょう。
事前に、依頼者から曲のイメージの説明を受けまして、ジャンルとしてはRAPの曲でした。
これまでRAPの曲は作った事が無かったのですが、個人的にRAPで思い付く曲としては、ゲーム音楽ではSEGAの「QUARTET(カルテット)」と「Virtua Fighter(バーチャファイター)」があります。
邦楽では、TM Networkの「GET WILD '89」でしょうか。
これらの要素を取り入れて、ファンキーでカッコいい曲にしようと思いました。
そこで、「GAME IMPACT」のセリフが欲しくなり、依頼者にお願いしました。
さて、セリフをお願いしている間に、Nintendo Switch Lite+KORG Gadget2で作曲しました。
タイトル動画の時間は10秒ありまして、テンポ145で6小節ですと、ちょうど10秒くらいになりました。
この6小節をイントロにしました。
7小節以降は、16小節を2回繰り返して、エンドとなります。
約1分ちょっとの曲になりました。
短い曲なので、この機会に、あえて初めて使う機材をチョイスして、ちゃんと使えるのか?動作テスト&練習を兼ねて、FMシンセサイザーを使ったRAPの曲を作ってみる事にしました。
作曲し終わった頃に、依頼者から「GAME IMPACT」のセリフが届きました。
何とビックリ!!
ヒップホップグループ「KICK THE CAN CREW」のMCUさんから提供して頂けたとの事。
うわっ!
これって、MCUさんと間接コラボになりますかね(笑)
同じセリフで3パターンありましたので、良いところ取りで使う事にしました。
次は、ボイスの波形編集です。
YAMAHA TWEと言う波形編集ソフトを使いました。
TWEは、元々YAMAHAのサンプラー用波形編集ソフトとして、無償配布されておりました。
今でも入手可能です。
Windows10でも動作します。
まず、波形編集ソフトで3パターンある「GAME IMPACT」のセリフを、それぞれ「GAME」と「IMPACT」に分けてから、ノーマライズ処理しました。
これで6個の音声ファイルになります。
次に、AKAIサンプラーS6000V2に、6個の音声ファイルを取り込みます。
そして、各パターンの「GAME」と「IMPACT」を、鍵盤の中心から左側を「GAME」、右側を「IMPACT」にスプリット設定します。
それぞれ「GAME」と「IMPACT」は2オクターブの音域で鳴らせるようにしました。
あと、鍵盤を押している間だけ発音するように設定しました。
これを3パターンぶん作りました。
3パターンあるセリフの、どれを使うかは、実際に鍵盤で鳴らしながら決めました。
その為、「GAME IMPACT」のパターン1をMIDI 1ch、パターン2をMIDI 2ch、パターン3をMIDI 3chに設定しました。
この中から、良いところ取りで鳴らします。
シーケンサーに入力ずる時も、3トラック使ってます。
サンプラーS6000V2の設定が終わると、次は、各パートを作ります。
まず、ドラムから作りました。
ドラムは今回初めて使うRolandサンプラーS-50です。
サンプリングライブラリーの中に、CASIOリズムマシンRZ-1にゲートリバーブを加えた状態でサンプリングしたパッチがありまして、実はこれ、TAITOの「THE NINJA WARRIORS」でも使われているドラムなんです。
ニンジャウォーリアーズのドラムだったら、パソコンのVST版KORG Gadget2のEBINAでも使えるのですが、なるべく本物の実機で鳴らしたかったのです。
全て鍵盤でのリアルタイム入力ですけど、バスドラムとハイハットだけクオンタイズ処理して、スネアドラムとシンバルは、鍵盤で弾いたそのままのタイミングにしてます。
次に、ベースを作りました。
ベースはYAMAHA DX7を使いました。
DX7は初期に開発されたFMシンセサイザーなのもありまして、FM音源の内部処理が12bItな事もあって、他のFMシンセサイザーと比べて、少しローファイ感がある荒い音質なのです。
この12bItのローファイ感が、DX7の個性であり、実機のDX7でないと鳴らせないサウンドなのです。
なので、センターで鳴る中低音に使うと、他のFM音源パートに混ざっても、自然と奥行き感が出て効果的なのでは?と思いました。
音色は、SEGAのQUARTETで使われている、OPM系FM音源YM2151のベースの音色を、YAMAHA DX7のFM音源に移植して鳴らしてます。
ステップ入力で1小節だけ作ったフレーズを26回繰り返しているだけなんですけどね(笑)
次は、オーケストラヒットです。
初めて使うシンセサイザーで、YAMAHA SY77です。
前から使いたくてウズウズしてたんです(笑)
このオーケストラヒットは、元々YAMAHA TX16Wのライブラリーディスクに収録されていた波形データをSY77のボイスカード集に復刻されたものです。
ちなみにこのオーケストラヒットは、AKAIのリズムマシンXR-10にもプリセット音色で搭載されてます。
まあ大元は、フェアライトCMIのオーケストラヒット2のようです。
次に、エレクトリックピアノです。
YAMAHA MODX7を使いました。
先ほどのベースでは最古の12bitFM音源でしたので、ピアノは最新のFM-X音源で鳴らしました。
この音色も、SEGAのQUARTETで使われている、OPM系FM音源YM2151のベースの音色を、YAMAHA MODX7のFM-X音源に移植して鳴らしてます。
全て白玉音符なので、鍵盤でリアルタイム入力した後から、サスティンペダルのON/OFFを追加しました。
次は、メロディー(キーボードソロ)です。
RAPの曲なので、メロディーは要らないかと思ったけど、後半から盛り上げる感じでキーボードソロを入れる事にしました。
以前から試したかった、イギリスのFM音源モジュールEVOLUTION EVS-1を投入しました!
一応FM音源なんですけど、パラメーターにオペレーターの周波数比の設定が無いんです(笑)
その代わりオペレーターの出力波形が32種類もある、未体験のFM音源でして、アナログシンセっぽい音圧感あるサウンドに期待しました。
ただ、音色エディットがパソコンでしか出来ないのが難点でして、今回はプリセット音色のシンセブラスを2レイヤーに設定して鳴らしました。
2音をPAN設定で左右に振って、パートデチューンを使って、ステレオ感を出しました。
PAD系の音色はKORGのFMシンセサイザーopsixを使いました。
opsixは、PAD系やリード系の音色が素晴らしいです♪
これは、各オペレーターの出力波形がアナログシンセと同じ(サイン波・ノコギリ波・矩形波・三角波)な事と、アナログセンセで使われているフィルター(ローパス・MS20フィルター)によって、アナログシンセ風の音色がFM音源で作れるんです。
これがKORG opsixの個性なんですよ♪
これらの実機シンセサイザーとサンプラーからの音声を、CUBASEにレコーディングしました。
そして最後に、CUBASEでSE(効果音)を追加します。
先ほどまでの実機パートだけの状態ですと、SEが入る予定の箇所が無音になるので、とても気になっちゃいます(笑)
SE系のサウンドは、VST版KORG Gadget2を使いました。
作曲で使ったNintendo Switch Liteでも、KORG Gadget2を入れてまして、パソコンのVST版KORG Gadget2と同じ音色が使えます。
EDM系の効果音とか1ショットサウンドなど、今回の曲にピッタリな音ネタがありまして、Switch Liteで使った音色を、そのままVST版で使いました。
SEが入ると、やっと完成です♪
私は、FM音源が使えたら、ゲーム音楽に限らず、いろんなジャンルの音楽を作りたいと思ってます。
せっかく実機のFMシンセサイザーを使っているので、ゲーム音楽だけだと勿体ないですし、実機の真価を発揮するのは、SYNTHWAVEだと思ってます。
今回の動画配信向け音楽も、脱ゲーム音楽の一歩でもあります。
更に言うと、日本にとどまらず、海外に向けて音楽を配信したい目標もあります。
実機スタイルは、日本よりも海外のほうが反応が多いです。
なので私は、実機のFMシンセサイザーとリズムマシン&サンプラーを使って、SYNTHWAVEで海外に進出したいと考えてます。
FM音源でどこまで通用するか?挑戦したいです!