里帰り出産にするか否か

これは少し迷ったところだった


胎児の染色体異常が確定したあと

遺伝科や検診時の医師

助産師さんといった全ての病院関係者からは

里帰りを考えた方が‥

と言われた


そもそも産後は健常児であろうが障害児であろうが大変だろうし

現にまだ出生前検査をする前

母子手帳をもらいにいった際

保健師さんとの面談時にはすでに里帰りを勧められていた


ただ

高齢かつ不妊治療のハイリスク妊婦である以上

『産む』ことだけを考えた場合

設備が整ったでかい病院を選ぶ必要があると

まずそれが重要だと思った

とりあえず生きて産まなければその後はないのだから


地方にある実家の近隣には

そこそこ大きめの市立病院でもNICUなし車で30分

もしNICU等の設備がある病院となると

車で1時間弱の大学病院

おそらく父の運転に頼ることになる

うーん‥

距離的にも手間的にもちょっとなあ‥


それに加えて

わたしは高校卒業と同時に家を出て

以来

短期間の帰郷以外に親と一緒に生活を共にしたことはないし

さらにここ1年以上は 一人暮らし


うーん‥


親と言えども 共同生活できるんかわたし

たまに帰郷しても3日もいればお腹いっぱいだしなあ

まあとりあえずは産まれてから里帰りすればいいか

どうせ夫もいないし

単身赴任期間が終わるまでみっちり帰ったろ

子が一緒なら父母というよりじじばばとの生活

って感じでなんとでもなるのでは


ということで

当初から里帰りは選ばなかったのだが

障害発覚となってまた話が変わってきた

何せ未知に輪をかけて未知である

わたしの心身への負担も考えると

と病院のひとたちは口を揃えて里帰りを勧める 

するとわたしもなんだかそんな気にもなってきて

父母に少し相談したところ以下のような反応だった


父:車の運転は構いませんよ

母:いいけど‥いろんなひとに会うことになると思うよ


うーん‥


父はまあいいとして

母もてっきり両手を上げて

「いいね!そうしたら!」

みたいなウェルカム反応かと思い込んでいたら

違った


孫ができたこと

でも障害児が確定していること

これらを同時に告げたとき


父:孫は孫だ

母:あんたらが決めたことなら応援するよ


こんな感じだったけれど

やはり『外からの目』は気になるのだろうな

高齢の娘が障害児の孫を産んだ

事前の検査で排除できるこの時代に

これはなかなかのインパクトだろう

田舎では特に


まだどうなるかわからないからと

実家の周囲には妊娠していること自体を明かしていない

それはわたしが望んだことではあるのだけど

でもわたしが産前に帰ってしまったら

バレることになるよと

母は暗に言っているのだ


ああ そんな感じかやっぱり

わたしへの心配より そっちか

わたしは『秘事』になっちゃったか 


一生隠しておくことなんてできないのに


こうして時々思わぬ形で

刹那の痛みに遭遇する

まるで静電気に触れるかのような


もし里帰りをするなら30〜34週辺りには帰らなければならない

予定日までの期間

自分以外の人間との生活

またいつ静電気が発生するかわからない日々

ああやっぱり帰れないな

と思った


せめて産まれるまでは

できるだけ穏やかに過ごしたい


毎朝毎朝飽きもせず 夢か現かと目が覚める

すっかり膨らんだ腹に手を当てて

ああそうだった

と思う

そうだったわたしは妊娠しているのだった

しかも胎児は障害児で

わたしのためだけに作られて

わたしのためだけに苦労していくであろう子を

わたしは

これで本当によかったのか正しかったのか

だって胎児は生きていて

生きようとしていて

こうして


葛藤しない日はない

何も考えない日なんてない

ならば

できるだけ最小限に留めたい

誰かの感情に触れるのはそれこそ負担にしかならない


だから

里帰りはせずひとりでいることを選んだ

わたしを守るために