シナリオ【遥か彼方へ】 10 | Novel & Scenario (小説と脚本)

Novel & Scenario (小説と脚本)

お越しいただきありがとうございます。
このサイトはKATARAのオリジナル小説とシナリオを掲載してます。

このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●島・遠景(昼前)

 

 

 

 

●学校

 

サーナが子供たちと授業を受けている。

 

サーナの声「(たどたどしく文字を読む声で)3月28日午後、警察は山あいの町ロズノーの奥地で」

 

 

 

 

●セグーレの祖母の家・畑(午後)

 

サーナと祖母が畑仕事をしている。

 

サーナの声「(続き)元建築士、ラスカス・ボワルンを発見した。ボワルンは18年前に遠く離れた工業都市、ガルダナで資産家の子息を殺害し」

 

 

 

 

●離れ(夜)

 

サーナがひとりいる。ランプの明かりで例の記事を読んでいる。

 

サーナ「殺害――(ショックを受けた顔。続ける)その後行方不明になっていたが、警察の地道な捜査でロズノー奥地に潜伏しているのがわかった。しかし事情聴取のため任意同行を求めたところ」

 

 

 

 

●セグーレの祖母の家・表(朝)

 

サーナが洗濯物を干している。

 

サーナの声「(直結で)ボワルンは途中の山岳地帯で逃亡を図り、よろけて崖から転落。警察が救助に向かうも死亡が確認された」

 

 

 

 

●学校・教室

 

サーナが壁に貼られた地図を指で辿っている。地名を読もうとしている。

 

サーナの声「(直結で)被害者遺族の資産家は2年前に他界している。そして今回の容疑者死亡により」

 

 

 

 

●島・坂(昼前)

 

学校帰りのサーナが登る。

 

サーナの声「(直結で)動機をはじめとした詳細は不明のまま事件は幕を閉じる」

 

サーナが足をとめる。テイルの乗る船を見送った場所。海を見る。

 

 

 

 

●回想・材木船・船上

 

テイルがサーナから新聞を受け取って読む。驚く。

 

サーナ「父さんの昔のこと? 書いてある?」

 

テイル「――なぜそんなこと」

 

 

 

 

●現実・セグーレの祖母の家・内

 

サーナと祖母が夕食。無言。

 

テイルの声「サーナは何も悪くない」

 

 

 

 

●回想・橋の下

 

テイル「これから何があっても――それは忘れないで」

 

 

 

 

●現実・離れ(夜)

 

ランプの明かりでサーナが例の新聞を見ている。

 

雷鳴が轟き、

 

 

 

 

●アクノス・眺望(朝)

 

激しい風雨。空に稲妻が走る。

 

男の声「(先行して)この雨で順延だそうです」

 

 

 

 

●組織のアジト

 

イルグ「(部屋内を歩き)明日のスケジュールは。どう変更になる」

 

男「いま調べてます(と部屋を出ていく)」

 

イルグ「(イライラと)クソ」

 

ルージ「(やりとりをそばで見ていて)本当にやるんですか」

 

イルグ「(ルージを見て)今さら何を言ってる」

 

ルージ「いえ、彼のことです」

 

イルグ「どうしてる」

 

ルージ「問題ありません。部屋にいます」

 

 

 

 

●一室

 

ベッドにテイルが横になっている。ベッドの横に箱型の荷物。

 

ルージの声「4日前に手紙を出しましたが」

 

 

 

 

●組織のアジト

 

ルージ「計画を漏らすような内容はありませんでした」

 

イルグ「勿論やる。予定通りだ」

 

ルージ「しかし」

 

イルグ「親しくなってないだろうな、まさか。余計な話はするなと言ったはずだ」

 

ルージ「話なんて俺は――親しくなんか別に(首を振る)」

 

イルグ「情が移ればためらう。犠牲が必要なんだ。息子を殺るのとは違う」

 

ルージ「ええ――」

 

イルグ「覚悟はできてるよ、本人は。目的を果たせれば本望。あとは権力に消されるか、我々が手を下すか。違いはない。気に病むことない」

 

ルージ「――」

 

 

 

 

●一室

 

ベッドにテイルが横になっている。

 

イルグの声「あいつは俺たちと違う。ろくな思想はない。未来に興味もない。ただ恨みを晴らしたいだけ」

 

 

 

 

●組織のアジト

 

ルージ「そうでしょうか」

 

イルグ「しかしそんな怪物も役立つ。選挙で落とせず、司法で裁けず、報道も潰すような相手なら、暴力で排除するしかない」

 

ルージ「――」

 

イルグ「悪人が死んでからでないと、この国の人々は正しく批判さえできないんだ。早く手を打つのが未来のため。しかし俺たちはまだやることある。疑われないためには、ヤツの単独犯。実行後に拳銃自殺。それで同志が守れる。うまくやれ」

 

ルージ「――はい」

 

イルグ「目的は本隊が果たす。失敗に終わってもためらうな。そしておまえは絶対捕まるんじゃない。いいな」

 

ルージ「――わかりました」

 

 

 

 

●一室

 

ベッドでテイルが眠っている。F.O.

 

 

 

 

●海(午後)

 

雨天。時化気味の海上をセグーレの船が進む。

 

 

 

 

●セグーレの船・操舵室

 

セグーレが思いつめた顔で操船している。

 

 

 

 

●セグーレの祖母の家・内

 

祖母「(席を立っていて)どうしたこんな日に」

 

サーナ「(同じく立っていて)いらっしゃい」

 

セグーレ「(ドアを入って服にかかった雨を払いつつ)ああ、昨日今日と時化で休んだからね、漁」

 

祖母「そんな時あぶないだろ」

 

セグーレ「もうだいじょうぶ。畑は助かってるんじゃない、この雨で」

 

祖母「いやぁ、降りすぎだ。これはこれで安心できん(次にかかる)」

 

 

 

 

●セグーレの祖母の家・畑

 

祖母が石垣を点検している。水と共に土が流れてないか。

 

セグーレの声「なんだかんだで休まない」

 

 

 

 

●セグーレの祖母の家・内

 

セグーレ「(微笑で窓から畑を見ていて)落ちつかないよな、あれじゃ」

 

サーナ「(一緒に見ていて)ううん」

 

セグーレ「元気だった?」

 

サーナ「うん――何かあった?」

 

サーナ「何かって?」

 

セグーレ「こんな日に」

 

セグーレ「あぁ、元気かと思って。会いたくなって」

 

サーナ「そう――」

 

セグーレ「こっちだけか(苦笑)」

 

サーナ「テイルから何か? ない?」

 

セグーレ「――鋭いね」

 

サーナ「あった?」

 

セグーレ「手紙が来たよ」

 

サーナ「手紙?」

 

セグーレ「今日の昼前に(上着の内ポケットから出す)」

 

サーナ「見せて(と取る)」

 

セグーレ「読める?」

 

サーナ「(便箋を出して目を走らせる。みるみるうちに涙が溢れ、左手で口元を覆う)」

 

セグーレ「封はしてあったけど、宛先の字と便箋の字が違う」

 

サーナ「(セグーレを見る。よくわからない)」

 

セグーレ「何かヤバいことに関わってる気がする」

 

サーナ「どんな?」

 

セグーレ「――サーナには話してなかったけど」

 

サーナ「なに?」

 

セグーレ「彼と一緒に来た新聞記者の先輩」

 

サーナ「うん」

 

 

 

 

●セグーレの回想・セグーレの船・船上

 

テイル「死んだんだ」

 

セグーレ「え?」

 

テイル「あのあと――3週間前に」

 

 

 

 

●現実・セグーレの祖母の家・内

 

サーナ「(驚き)なぜ」

 

 

 

 

●セグーレの回想・セグーレの船・船上

 

セグーレ「あれを探ったせい?」

 

テイル「君は気にしなくていい。動いたのは僕らだ」

 

セグーレ「なにしたの、あんたは。なんで警察は」

 

テイル「知らない方がいい」

 

 

 

 

●現実・セグーレの祖母の家・内

 

サーナ「――」

 

セグーレの声「まさかと思うけど」

 

 

 

 

●セグーレの回想・セグーレの祖母の家・内

 

セグーレ「噂で聞いた。首相の息子の暗殺未遂が、飛行船であったと。犯人は逃げて、捕まってないと」

 

テイル「――」

 

セグーレ「その息子は海軍所属で――そんな記事が新聞にあったって」

 

テイル「――」

 

セグーレ「まさか関係してないよな?」

 

テイル「――」

 

セグーレ「してるのか?」

 

テイル「そんな事件は初耳だ。知らなかったよ」

 

 

 

 

●現実・セグーレの祖母の家・内

 

サーナ「――」

 

セグーレ「あの返事は、たぶん嘘。同じようなことを、またやる気でいるのかも」

 

 

 

 

●サーナの回想・離れ

 

テイル「それでも、やらなきゃいけないことある」

 

 

 

 

●現実・セグーレの祖母の家・内

 

サーナ「――なぜ話してくれなかった?」

 

セグーレ「うん――」

 

サーナ「なぜ? 今まで」

 

セグーレ「サーナに心配を――いや」

 

サーナ「彼をとめる。とめよう。どうしたらできる?」

 

セグーレ「(首を振り)居場所は書いてない」

 

サーナ「(封筒の消印を見る)アクノス。ここにいる?」

 

セグーレ「わからない」

 

サーナ「行ってみる」

 

セグーレ「行ってどうするの。広いんだ。手がかりなく探せっこない」

 

サーナ「行きたい」

 

セグーレ「こうなると思った(窓辺を離れる)」

 

サーナ「ここにいたらとめられない」

 

セグーレ「(椅子に座る。サーナと目を合わせない)」

 

サーナ「ひとりでも行く(とドアへ)」

 

セグーレ「海はどうやって渡るの」

 

サーナ「(足をとめる。セグーレを振り向く。凝視)」

 

セグーレ「――わかったよ。準備しよう」

 

 

 

 

●海

 

セグーレの船が走る。

 

 

 

 

●セグーレの船・操舵室

 

セグーレが操船し、横には着替えたサーナ、前方の海を見ている。サーナの荷物が入ったバッグがそばにある。

 

セグーレ「ひとりなんて無茶だ。一緒に行く」

 

サーナ「いいの」

 

セグーレ「ひとりで行ける? 行ってどこをどう探す」

 

サーナ「テイルとの関係疑われてるんでしょ? 警察に聞かれたら? どうする?」

 

セグーレ「――だけど」

 

サーナ「もう関わらない方がいい。ここにいて。彼のためにもここにいて」

 

セグーレ「――」

 

サーナ「私はだいじょうぶ」

 

 

 

 

●オルドン・駅(夕方)

 

汽車が来る。

 

 

 

 

●駅のホーム

 

サーナの荷物を持ったセグーレが急いで来る。サーナも。汽車がブレーキ音を鳴らして停まる。

 

ドアをあける駅員たち。乗降する人々。

 

セグーレ「(荷物を渡し)4つめの駅で夜行に乗り換えれば、朝には着く」

 

サーナ「ありがとう(乗車する)」

 

セグーレ「もし見つからなくても、何もできなくても、戻ってきて。いつでも。待ってる」

 

サーナ「(ドアのそばで)ありがとう」

 

駅員が笛を鳴らし、出発のためのドア閉めが始まる。

 

セグーレ「気をつけて」

 

サーナ「(うなずき)元気で。お婆さんとお母さんによろしく。ごめんなさいって。ありがとうって」

 

ドアが駅員に閉められる。

 

セグーレ「――」

 

サーナ「(ガラス越しに小さく手を振る)」

 

セグーレ「(動き出した汽車を少し追う)」

 

サーナ「(窓の姿が遠くなる)」

 

 

 

 

●アクノス・夜景

 

雨はやんでいる。

 

 

 

 

●組織のアジト・一室

 

テーブルにテイルの希望した料理がある。テイルがひとり食べている。斜め前にルージが座っている。

 

ルージ「延期で明日はもっと混むだろう。こっちには好都合とも言えるが、早めに出た方がいいかもしれない。聞いてる?」

 

テイル「ああ、うまいよ」

 

ルージ「味なんか聞いてない」

 

テイル「誘導は君に任せる。俺は従うだけだ」

 

ルージ「――」

 

テイル「一口食わないか?」

 

ルージ「いい、これだけで(酒のグラスを指さす)」

 

テイル「(自分のグラスをあげ)明日の成功に」

 

ルージ「(自分のグラスをあげ)成功に」

 

テイル「(飲む)」

 

ルージ「(飲む)」

 

 

 

 

●線路

 

闇のなか汽車が走ってくる。通過。

 

 

 

 

●走る汽車内

 

サーナがポツンと座っている。テイルの手紙を読んでいる。

 

テイルの声「このあいだはありがとう。いろいろ迷惑かけました。あれから彼女はどうですか。元気ですか。君だけが頼りです。これからも頼みます。僕は君たちの前には、二度と現われません。安心して下さい。これでよかったんだと思います。こうするしかなかったと思います。君と彼女には、いくら感謝してもしきれません。どうか健康で、幸せに」

 

サーナと共にいたテイルの回想がいくつか挟まり、

 

手紙を見ながらサーナがまた涙をこぼす。

 

 

 

 


このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


▼クリック感謝! 
にほんブログ村 
人気ブログランキング